n度目のはじまり
今日はいい天気だ。はじまりの街にふさわしい青空である。
昨日はあれからちょっと面倒だった。
いつものことではあるのだが、どうして死んだのかとか、どのあたりから「飛んだ」のかとか、色々と煩いのだ、あの神父は。
名前をユーノというかの神父は、この街の教会で神父をやっている。私が冒険者になるちょっと前からだから、もう6年になるのか。
時の流れは早いなあとどこか他人事に思ってしまう。
私が初めてこの街を出たのが6年前の春。そして出発して10日でまた戻って来ることになった。何故かといえば、私は死んでしまったからである。
この国におはす神様は、魔物や悪魔と闘う者たちのために、あるギフトを授けた。「死なない」呪い(まじない)である。
厳密には、一度死んでも再びこの世界に戻って来られる標をお与えになった。それを与えられた者たちが「冒険者」と呼ばれる存在である。
もし何処かで魔物に襲われでもして死んだら、「はじまりの街」にリスポーンする。そして街の教会で目覚め、また支度を整えては冒険へと向かうのだ。
「はじまりの街」はそのひとにとってのはじまりの地で、私の場合はここ、スフェーンの街と呼ばれる場所がそうだ。
彼らは死と隣り合わせではあるが、本当に死にはしない。でもあまりなりたがる者もいないだけあって高給取りだ。
でも、やはり何度も死んでは生き返ってを繰り返すと心を壊してしまう者も多いようで、始めこそこぞって冒険者になりたがった国民も、次第にその気持ちは薄らいでいった。
今でこそ冒険者を目指すのは、一発逆転で金持ちになりたいやつか、危険も顧みない物好きか、それ以外の道がない者くらいだ。
実は、私の理由は3番目だったりする。正しくはその道が一番いいと思ったからであって、それ以外も考えはした。でも、結局のところ冒険者になるのがいいと思い至ったわけだ。
ユーノに冒険者になることを告げた日のことは今でも覚えている。しばらく固まったあとに消えそうな声で、どうして…?って言ったのだ。
普段飄々としているのが常だったものだから、ちょっとびっくりした。確かに世捨て人みたいに思われてることもあるけど、立派な職業だ。
それを言うならユーノの方がどうして神父になったのか聞いてみたい。あんなに頭が切れて見目も外面も良いし、みんなにも王都の学校にでも行けばいいと言われていたのに。
私もユーノも孤児に近い出自だけど、好きな生き方を選べるくらいには恵まれていた。だから本人は王都行きを嫌がっていたとはいえ、まさかこの街に残るなんて思わなかった。つくづく奇特なひとだと思う。




