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目覚めのとき
はっと目が覚める。
薄暗さの中で逆光になって人が立っているのが見えた。
ステンドグラスから溢れる光に目がちかちかする。
思わず目をそばめると、その人影がこちらへかがみ込んできた。
低くて甘さのあるテノールが語りかけてくる。聴き慣れた、私の大好きな声。性格は悪いし無神経だし、顔と頭はいいけどそれらが台無しなくらい中身が悪い。
でも、その声だけは嫌いじゃなかった。いつもこの場所で、どんな所から帰ってきても、優しく響く声。絶対に、このひとには言わないけど。
「おかえりなさい。今回の旅はいかがでした?」
ついさっき「死んだ」人間にかける言葉じゃないだろっていつも思うのだけど、このひとは私がここに来る度にこう言ってくる。デリカシーのなさはどれだけ経っても変わらないのね。
どこからか鐘の音が聞こえてくる。荘厳な雰囲気。道中送られてきた変な手紙とか、同封されてた呪いなんじゃないかっていうくらい禍々しい呪具とかお札とか、その他諸々言いたいことはあったけど、とりあえず飲み込んでおく。
そして、私がこうしてここに戻ってくる度に言い返す、いつもの言葉。
「今回も、お陰様で最高でしたよ」
貴方のお陰で、最高でした、と。




