おでんは関東煮《かんとだき》が正義(オネエさんとお姉さん)
「関西風おでんの名前が、関東煮って言うの何か因果よねぇ」
「そう?」
くつくつくつくつ。
土鍋の中から、甘い匂いがただよって来る。
蓋を開ければ、ぶわっと湯気が立ち上り、湯気の向こう側には、煮っ転がしと同じ色合いのおでんが見えた。
ひらべったい練り物に、三食団子風の練り物。ちくわぶと、モノホンのちくわ。牛筋に、よくしゅんでる(染みてる)おだいこんとじゃがいもさん。餅巾着も、暢気に煮汁に浸かっている。煮卵もあめ色に染まっていた。
初詣の帰りは、映子の家に寄って晩ごはん。
寒さが堪える大人には、ほかほかごはんがとっても大事。
今年はジョセフィーヌのリクエストで関東煮のおでんだ。
一度、映子から聞いて食べてみたかったもの。
「日本酒の用意は?」
「ばっちり」
お銚子におちょこが、そっと用意される。
綺麗な切子硝子のそれらは、ジョセフィーヌから誕生日プレゼントで貰ったもの。
「ほーんと、綺麗な切子だこと。アタシったらセンスいいわー」
「はいはい、どうもね」
お皿を配りながら、映子が笑う。
いつものやりとり。
「じゃ、今年もよろしくってことで」
「かんぱーい!」
甘いお出汁が染みた具に、二人の舌は喜び、胃は温められ安堵した。
「あー。いい。この瞬間が永遠に続いたらいいのに」
無邪気な、子どもみたいな笑顔でジョセフィーヌが言う。
映子も、「ホントホント」と、つるんとした丸い笑顔で答えた。
まるで、小学生同士みたいに。
幼稚園生同士みたいに。
二人は、ニコニコといつまでも笑い合っていた。
END.
この二人(『いつも好きな男が自分以外とくっつくオネェさんの話』https://ncode.syosetu.com/n1607ha/)です。昨日(https://ncode.syosetu.com/n2331hk/)のその後。