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少年  作者: 考えたい
仮面
2/18

其のニ

 或るところに武人の心を追い求めたる少年在り。文月の頃、或る怪事に巻き込まれつつ在り。

 少年は他組の連中から「学校一のノータリンのキチガイ」と罵られた。まあ此れはいつものことだ。然し奴らは知らぬ、少年は学校一頭が切れる事を。実際彼は卒業時に学校総代となる。

 放課後、少年は教室に残って生徒会資料を纏めるのに頭を抱えていた。少年の苦労を知るには先ず、学校の構造についての話をせねばなるまい。資料の内容は生徒会の機構構造の改革についてだ。改革の理由は昔から大蔵省と兵部省の折り合いが如何せんどうも悪いからだ。何しろ兵部省は金を喰う。実際生徒会予算の編成は6割程兵部省に廻される。そして兵部省は予算の増額を求めていて、通常以上に関係が悪い。然し学校内で生徒会が校長の権限を事実上掌握できているのは、兵部省の武力に頼る部分が大きい。なので、この二つの省は面従腹背であり、その影響が他省庁に大きく及んでいるという訳だ。

 これらを解決する画期的アイデアを少年はその小さな頭から雑巾から水を絞り出すように出さなければならなかった。埋まっていないノートパソコンのWordの画面との格闘は続く。その最中に、意外な人の訪問を受けた。神祇官官房付の同じ組の不知火野々だ。不知火は言ふなれば天然美少女といふ部類に入る。世間一般の所謂スクールカーストのぶっちぎり最上位に君臨する不知火は其の天賦のアイドル性で分け隔てなく接してくれる為、学校内での人気は爆発的だ。一学年下の内務省公安調査庁所属の友人によれば卸売市場(調査庁内部での隠語。場所は不定。卸売市場では人気のある生徒の写真や音声データ、動画等を売買する違法スレスレの商売が行われている。起源は戦後間もなくの闇市をその当時のこの学校の学生が受け継いだものらしい。寅の刻から卯の刻にかけて開催されるため、その様な名が付いた。因みに少年の写真や釘、わら人形、ロウソク、白い鉢巻をセットにした呪いキットなるものが五百円で卸売市場で販売されているらしい。by公安調査庁の友人)で写真は一枚千円、音声データや動画に至っては五千円以上の値段で取引される程だ。同じ組と言っても、話をすることは事務的なこと以外あまりない。「お願いがあります。」と天然の人にしては珍しい敬語で不知火は言ふ。「勉強を教えてください。」少年は呆気にとられた。事実上別次元の生命体と思っていた不知火が陰キャヲタクの少年に勉強を教えてくれと頭を下げたのだ。思はず「は?」と言い返した。「ダメですか?」不知火は仔犬の様に聞き返した。「ダメって訳やないけど、どないしたんや?あとタメでええで」そう言うと不知火はニッコリ笑った。それを見てファンが多い訳に納得した。ここまで美しい笑顔を見たことは無かった。「じゃあ早速だけど此の鶴亀算を教えて。」算数の参考書の問題を指して言ふ。「これか。鶴の数をx,亀の数をyとおいて、方程式を立てて、連立して」、そこまで言ふと不知火は、「先ず、方程式の立て方を教えて」と遮った。「先ず2x+4y=56を立てて…」ひとつひとつ丁寧に教えていった。

「また教えてもらってもいい?」少年は此の時が楽しかったので、「勿論」と応えた。

 然し此れはその後の更なる災難の引き金となった。

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