第八話 僕は…
〜〜 ラークサイド 〜〜
コウとレンに送り出されて、会場へ向かう。
会場に着いたが、ケイン選手はまだ着いていないようだ。
コウは先に決勝で待っている。
僕もコウに追いつくために決勝へと行くんだ。
空を見上げて、物思いにふける。
思えば僕は、ずっとコウに憧れを抱いていた。
幼き頃、心が弱かった僕はよく他の子供にいじめられてたっけ…。
そんな時、いつもコウとレンが助けてくれた。
そんな二人に負けないように、必死に鍛えたっけ。
僕も誰にも負けられない。コウとレンを守る為に…。
「やあ、待たせちゃったかい?」
その声に我に返り前を向く。そこにはケイン選手がいた。
長身にすらっとした体型で、どこか上品な雰囲気を出している。
「いえ、決意を固める良い機会でしたので、大丈夫です」
「そーいってくれると助かるよ」
そー言ってケインさんは微笑む。
「改めて自己紹介しようか、私はケイン・クラネルだ。一応貴族って感じだね」
「そうですか、僕はラークです」
「君とラカンと戦った少年は兄弟かな?」
「血の繋がりはありませんが、家族です」
「そうか…。勝っても負けても恨みっこなしで」
そう言ってケインさんが剣を構える。
「はい!」
僕も長剣を構える。
「それでは準決勝第二試合…始め!」
開始の合図と共にケインが剣を地面に刺す。
「それじゃあ先ずは小手調べ」
そう言ってケインの右腕が輝き出す。
「出てこいゴーレム!」
掛け声と共に二体のゴーレムが出現する。
あれは…土系の紋章術なのか?
これまでの戦いでは使っていなかったのに…。
「これで終わってくれるなよ。行け!ゴーレム達!」
ケインの一言により二体のゴーレムがラークに襲いかかる。
速速度なら今までのトーナメント戦ってきた人たちより速い。
あっという間に距離を縮めてラークに向かって拳を振り下ろす。
「くっ!」
ラークは後方に跳躍して回避する。
「ドゴン!」
先程ラークが立っていた場所が陥没している。
なるほど、あの速度でこの威力。生半可な紋章ではなさそうだね。
「流石に避けてくるか」
「いえ、なかなか厳しい攻撃でした」
「ありがとう。では次はもうちょっと強くするよ。ゴーレム達!融合しろ!」
その言葉通りに二体のゴーレムが重なり合う。
先程のゴーレムより一回り大きくなっている。これは速度も威力も大幅に強化されてそうだ。
ゴーレムが踏み込み距離を詰めてくる。
「速い!?」
さっきよりも速度が上がっている。
先程コウが戦っていた、ラカンさんの動きを彷彿とさせる程の速度だ。
だが…威圧感も圧迫感もないなら対処は簡単だ。
「キィン」
澄んだ音と共にゴーレムの体が半分に分かれた。
「ほう!凄いな!今の動きはラカンさんと同程度だった筈なんだが」
ケインさんが楽しそうに笑っている。
「私の負けだ。降参する」
「試合終了!勝者ラーク!」
会場が歓声に包まれる。
「何故ですか?貴方はまだまだ本気を出していない筈…」
「ラカンさんに感化されたわけでも無いんだけどね。私も君達とは本気で戦いたいって思ってしまったんだよ」
「そうですか…」
「君達とは近いうちにまた会う事になると思うよ…続きはその時にしようか」
「どういう事ですか?」
「さてね…」
そう言ってケインさんは肩を竦めて会場を去って行く。
「僕は…そこまで戦うのが好きではないんだけどな…」
僕の呟きは会場の歓声に消えていった…。