第二十話 夢
〜10年前〜
俺達は同盟国側にあるメルダと言う街の教会で育った。
親の顔もなにも覚えていないが、シスターや神父、ラークやレン、他にも子供達が7人位いたので寂しくはなかった。
俺とラークとレンの三人はよく街の外の森で遊んでいた。森の奥にある洞窟を秘密基地としているのだ。
三人でよくそこに行き捨てられた家具などを設置して、拡張していくんだ。
「コウ、ラーク今日も秘密基地に行くわよね?」
「「当然!」」
その日もお昼ご飯を食べた後に三人で洞窟に向かった。
森の中は比較的安全で、大型の魔物もいない。
比較的に安全だが、偶に小さな魔物が出たりする。
一応護身用にナイフを持っているが、戦わないに越したことはない。
「一番乗り!」
俺は秘密基地の中に入り声高々に言う。
その後に二人も続いて中に入る。
「ズルイ!走りでコウに敵うわけないじゃない!」
「そうだよ!急に走り出すのはずるいよ!」
二人はコウに抗議する。
二人の文句を無視して、秘密基地の中にあるランタンに火を灯すと洞窟内が明るくなる。
周りを見渡せば、色々と生活品が揃っている。
三人は同年代や年上も顔負けなほどの知識と技術力で、壊れて捨てられていた家具を修復したり、木などを加工して家具を作ったりして、秘密基地をよりよい環境にしている。
「今日はどーする?」
コウが二人に尋ねる。
「椅子を作りましょう!」
レンが楽しそうに提案する。
確かに椅子は一つしかないので、かなり不便だ。
ラークも「異議なし」なんて言っているから今日は椅子作りに決まりだな。
コウも頷き作業を開始する。
予め加工していた木の板を取り出し、三人は椅子を作成する。
三時間位かけて椅子を二つ作り上げる。
「「「出来た!」」」
三人は嬉しそうに言う。
なかなか凝ったデザインで、普通に店でも売っていそうな出来である。
「結構時間かかっちゃったね」
「そうね、そろそろ帰らないと、シスターや神父様に怒らちゃう」
ラークとレンが時間を気にしている。
「よし!今日はこの辺にして、街に帰ろう!」
コウの一言により三人は洞窟を出る。
「コウ…なんだか変な匂いがしないかい?」
ルカはなにやら嫌そうな顔をしている。
「コウ…私も変な匂いがするよ」
確かに先程からなにか焦げ臭いような匂いが漂ってきている。しかも街の方から。
三人は急いで街に戻る。
■■■
「なんだよこれ」
街が燃えている。
自分達がいなかったこの数時間になにが起こったのだろう。
「ラーク!レン!とにかくここを離れよう!」
正気を取り戻したコウが二人に言う。
コウ自身も恐怖や疑問で頭が一杯ではあるが、ここにこれ以上いるのは不味いと感じたからだ。
「でも、街が!」
「シスターや神父様、他の皆を助けないと」
二人はフラフラと街の方に歩き出そうとする。
「ダメだ二人共!この火の中に入っても俺たちでは何もできない!今は隠れて火が治ったらもう一度来よう」
コウの言葉により二人は渋々納得する。
三人はまた秘密基地の方へと向かっていく。
■■■
秘密基地に着き、きのみなどを食べ、三人は時間が過ぎるのを待つ。
「なんで街が燃えていたんだろう」
ラークがポツリと呟いた。
確かにそうだ、あの燃え方は恐らく事故とかではない。
家が一軒だけではなく、そこら辺で燃えていた。
益々街に戻るのが危険に感じた。
「ラーク、レン…今日はここで過ごして、明日の朝早くに街に行こう」
二人も街に行くのは危険だと感じているので頷いている。
明日の朝に備えて今日はもう寝よう。
何があっても二人を守る。
そう思いながら眠りにつくのだった。