第十七話 コウVSラカン 決着
■ラカン■
「来れ!魔剣ティルヴィング!聖剣フラガラッハ!」
目の前の少年の左腕が光る。
恐らく紋章魔法を使ったのだろう。
程なくして何もない空間から二振りの剣が現れる。
(なんだ、あの強大な畏怖を放つ剣は)
どちらも強大な魔力を帯びている。
その二振りの剣をコウは手に持つ。
とても、まだ16歳の少年がしていい威圧ではない。
「ラカンさん、最終幕…行きますよ」
コウが剣を回しラークに突きつけてそう言う。
(馬鹿な、10年前の戦争で武功を上げ、この国の師団長まで登り詰めたこの俺が圧されているだと!?)
ラカンは驚愕した。
今まで、見た事も聞いた事もないその紋章に…。
■コウ■
二振りの剣を構えて踏み込む。
両手の剣を巧みに操り斬撃を加える。だが、ラカンも負けじと応戦する。
先程はコウが防戦一方だったが、次はラカンが防戦一方になる。
(流石はラカンさん。魔剣と聖剣を前に一歩も引かずに打ち合うなんて…だが!)
とうとうコウの剣が浅くだが、ラカンの鎧に傷を付ける。
「ぬ!」
ラカンは堪らず後ろに飛び退く。
ラカンは表面上は平静を保っているが、内心焦っていた。
剣に帯びている魔力が凄まじく、一撃一撃が重いからだ。
まさか剣の斬り合いで自分が一方的に圧されているなんて。
「少年!見事!だが、団長たる俺とて、負ける訳にはいかんのだ!」
ラカンさんのその声と共に火が燃え上がる。
「行くぞ!少年!焔の鉄槌!」
ラカンさんの右手が光る。
そして上空に巨大な炎の金槌が現れ、振り下ろされる。
凄まじい熱量。当たれば一たまりもないだろう。
「凄まじい魔法ですね…ですが!魔剣ティルヴィング!」
魔剣ティルヴィングで炎の金槌を斬り裂く。
「馬鹿な!?」
魔剣ティルヴィングに斬られた炎の金槌は音を立て消え去る。
「我魔法が…何をした!少年!」
目の前に起こった事が信じられないラカンは唖然としている。
「自分の持つ魔剣ティルヴィングは如何なる魔法も消し去ることが出来ます」
「そ…そんな剣を召喚する魔法など聞いた事がない!」
「ラカンさん、もうこの戦いに意味はありません。引いてください」
「俺とて、負けられない理由があるのだよ!少年!」
ラカンさんが踏み込む。
「そうですか…残念です」
俺は聖剣フラガラッハをラカンさん目掛けて投げつける。
剣を投げると言う行為にラカンはビックリしたが、持っている剣で横に弾く。
「貰った!少年!」
ラカンが飛び上がり剣を振り下ろそうとした瞬間。
「がはっ!」
ラカンが血を吐き地面に倒れる。
「一体…なにが…」
突然後ろから斬られた事に理解が追いつかない。
そんな彼の横を剣が通り抜ける。
先程自分が弾いた剣だ。
「この剣は聖剣フラガラッハ。自分の思い通りに操れる剣です。自分が持っていなくても自由自在に操れます」
そう言って剣を空中で回転させている。
「はっはっはー」
ラカンさんがキョトンとした後に笑い出す。
「少年!完敗だ!」
「いえ、自分の方こそギリギリでした」
コウはそう言って剣を虚空に戻す。
「いや、まだまだ君は力を隠しているようだ。その一端でここまでやられたのだ、完敗以外のなにものでもない」
コウはなにも答えれずにただ、ラカンを見た。
「少年よ、この作戦には凡そ一万の兵が動員されている。東西南北全て封鎖されている。逃げるのは容易ではないぞ」
「それでも自分達はあの日々に戻る為に逃げ切ります」
「っふ。そうか…。生き残れよ」
「はい…。必ず!」
そう言ってコウはラークの元へと向かう。
「あの少年ならいつかきっと…あの方を止めてくれるやもしれんな…」
ラカンの呟きは、誰もいない空間を彷徨うのであった。