第十四話 逃走
二人で山を登る。
今日はずっと走ってばっかりだ。
「ラーク少し休憩をしよう」
「…そうだね」
襲撃が起きてから敵に見つからないように警戒していた疲労が溜まっている。
二人で地面に座り込む。
「こんな事になるなんて…」
俺が思っていた事をラークが言う。
「元々こうなる予定だったからな」
二人が声の発する方向を見る。
「オズ…隊長…」
そこにはオズと50人位の兵士の姿があった。
「コウ、ラーク、お前達は優秀だったからな、必ず生きていると思っていたよ」
「なぜ…なぜ!こんな事を!」
ラークがオズに問う。
「この国にも色々と事情があるんだよ。お前達はには悪いが、ここで死んでもらわねばならない」
あまりにも身勝手言い分を言い放つ。
「そんなにも戦争を起こしたいのか!貴方達は!」
「戦争をしなければこの国にこれ以上の繁栄は訪れない。これ以上の問答は意味がないな。お前達…やれ!」
こうして戦いは始まるのだった。
■■■
弓兵の矢が飛んでくる。
「ホーリーサークル!」
俺とラークを中心に光の壁が出来る。
矢は光の壁に当たると弾かれたようにして地面に落ちる。
「な…なんだその魔法は…」
オズは目の前に起きた現象に理解が出来ない。
鑑定士でも見たことがない紋章魔法だから一般の人が知っている訳がない。
「お前ら!矢は聞かない!接近戦で攻めるんだ!」
オズが周りの兵士に指示を出す。
うーん。このホーリーサークルは接近戦でも無駄なんだけどなー。
そんな事を思いつつも、ここで時間を無駄にしているべきではないと思い、解除する。
「やるぞ!ラーク!」
「そうだね…やるしかないね」
優しい性格のラークにはキツいと思うが、もう戦うしかない。
「死ねーー!」
三人の兵士が一斉に切りかかってくる。
「っふ!」
俺は来る剣を弾き喉元を切っていく。
初めて人を殺した感覚に吐き気が出るが、今はそれどころではないので、無理矢理それを飲み込む。
こんな所で戸惑っていると、自分やラークの命が危険になる。
そんな事になってしまっては意味がない。
横を見るとラークも二人を殺している。
顔を見ても、そこまで気に病んでいる様子は無さそうだ。
この世界では人の生き死には日常で起こり得るから慣れているんだろう。
「お前ら!相手は二人だ!周りを囲んで全方位から攻撃しろ!」
そうこう考えながら戦っている内にオズから兵士に指示が飛ぶ。
それを聞き、兵士達は俺達を包囲しようと左右に広がって行く。
「ラーク!」
「わかってる!」
俺はラークの名前を呼ぶと、直ぐに返事が返ってくる。
そのまま俺は左右ご広がっているのもお構い無しに正面に突っ込んで行き、何人かを切り倒していく。
それを見て左右の兵士が慌てて横から俺を攻撃を仕掛けてくるが、ラークが向かってくる者を切っていく。
お互いの動きを理解している二人には死角がない。
訓練を受けてきた兵士であっても、二人の連携には敵わない。
あっという間に50人の兵士は返り討ちにあっていた。
「オズ隊長…まだやりますか?」
俺はオズに向けて挑発をする。
「ぐ…貴様ら待っていろよ!」
負け犬の遠吠えとはこの事か…オズはその場から去って行く。
「ラーク、増援を呼ばれる前に急ごう!」
「そうだね」
二人は再び山頂を目指す。