第十二話 演習開始
あれから一週間が過ぎた。
この一週間は修行に明け暮れていた。
準決勝で戦ったラカンさんはかなりの手練れだった。恐らくお互い本気の勝負をしたら、確実に勝てるとは言い切れない気がしている。
まだまだこのままではダメだと思い今まで以上に魔物と戦ったりしていた。
紋章レベルは相変わらず上がらなかったけど。
とりあえず明日に向けて早めに寝るか。
「レンー明日も朝起こしてくれよー」
レンにそう言いながら部屋へと戻る。
背後から「もー!」と可愛く怒っている声が聞こえてきたけど気にしない。
男のロマンはそれぐらいでは覆すことは出来ぬのだ!
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翌日になり集合場所の兵舎に着く。
俺達が到着した時にはかなりの人数が揃っていた。
「コウがご飯を何杯もおかわりするから遅くなったじゃないか!」
「そんな事言われても、当分レンのご飯を食べれないんだから、食い溜めしとかねーと!」
言い合いをしながら列へと加わる。
少し時間が経つとオズ隊長が前に出てくる。
「よし!お前ら!逃げ出さずによく来たな!本日から一ヶ月の演習をする!二列に並び街の大通りの門から出発するから隊列を乱すなよ!」
毎年恒例行事だ。
これを見に沢山の人達が大通りに集まってくる。
大分恥ずかしいんだよなー。
整列が終わり、マキナ山へと出発する。
城下町の大通りを通ると、街の人達から声を掛けられる。
「頑張ってねー!」
「しっかりやれよー!」
人々から激励の言葉が飛び交う。
その中でも大きな声が二人の耳へと届く。
「コウーー!ラークーー!頑張ってねー!」
レンだ。手を振りながら大きな声で俺達の名前を呼ぶ。
ラークはなんとか苦笑いしながら小さく手を振り返しているが、俺は全力で他人のフリを決め込むのだった。
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マキナ山の山中に開けた場所がある。
そこが演習拠点となる。
「一同整列!」
オズ隊長からの号令で全員が並ぶ。
「ここに野営地を作る!二人一組で各自作業に入れ!」
その一言で全員が天幕を作って行く。
「はぁ。この演習はご飯だけが嫌で嫌で堪らないぜ」
「コウ、気持ちは痛いほどわかるけど、そんなこと言っても仕方ないだろ?さっさと骨組みしよう」
「りょーかい」
二人で天幕を作る。
俺達はじっちゃんによく外で修行する時に一通りの事を教えてもらっていた。
天幕作りは勿論、料理や家事系全般も出来たりする。
天幕を作り荷物を置く。
「天幕が出来た奴から狩りに出ろ!食事が美味しくなるか、不味くなるかはお前たち次第だぞ!」
お!軍用レーション的な物ではないのか!
それはかなり嬉しい!
「よし!ラーク!早く狩りに行こう!」
「はぁ、現金だなぁ。さっきまではあんなに嫌がっていたのに」
「細かいことは気にしない!
意気揚々と狩りへと出かける。
今いる現在地は山の中間地点。東へ行けば、少し降った所が森になっている。
南に行けばガルド王国へと道が続いている。
西に行けば同盟連合国との国境へとぶつかる。
北に行けばマキナ山の山頂へと行く道だ。
俺達は東の森へと行く。
「なにか食べれる魔獣とかいないかなぁー」
先ほどの憂鬱とした気分から一転して、意気揚々と森へと向かって行くのであった。