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魏延が行く  作者: あひるさん
第十一章 北伐
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異動

ご覧頂きまして有難うございます。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

成都での話し合いを終えた龐統は江陵へ戻ると荊州軍に属する将軍を召集した。


「北伐の命令が下されたよ。」


「いよいよですな。」


「我が君の悲願を果たす為にも頑張らねば。」


「その通り。」


龐統の発言を聞いた諸将は意気盛んになり、広間は熱気で包まれた。魏延は無言だったが劉備の宿願が手に届きつつある事を実感していた。


「軍師殿、陣立ては決めておられるのか?」


「法正と話し合って既に決めているよ。」


劉封の問いに答えた龐統は手に持っていた木簡を広げた。


「呉も主力を動かす事になっているから今回は必要最小限の守りだけを置くつもりだよ。」


大将・関羽、軍師・龐統、先鋒・関興、左翼・陳到、右翼・趙雲、殿軍・張苞…。次々と名前が呼ばれて配属が決められ、晋の降将である夏侯楙と夏侯覇の二人もそれぞれ左翼と右翼に配属され司馬一族への雪辱を期する事になった。


「軍師殿、魏延殿の名前が有りませんが。」


「荊州に留めるつもりなのか?」


「将軍は最前線の新野を任されております。今回も先鋒をお任せするべきです。」


魏延の名前が呼ばれなかったので不思議に思った陳到が龐統に質問したのを切っ掛けに方々からどういう事だと声が上がり、関興に至っては魏延が先鋒隊大将を務めるべきだと言い出した。魏延は少々悔しい思いを抱いたものの呉を警戒する為に自分が残り、劉封や韓玄を支えるのも一つの考えだと気持ちを切り替えていた。


「某は荊州に留まり呉を警戒する役目を全う致しますので…。」


魏延は騒がしくなった場を収める為に発言した。


「当の本人も含めてみんな誤解しているね。」


「はぁ?」


「どういう意味ですか?」


諸将は納得していない表情で龐統を見た。


「魏延には漢中軍の応援に入って貰うよ。」


「お待ち下さい。漢中軍は張飛将軍、黄忠将軍、馬超将軍を始めとして荊州軍以上に陣容が揃っている筈です。」


蒋琬が疑問の声を上げた。確かに漢中軍は蜀軍に加えて馬超率いる西涼軍が居るので荊州軍以上の陣容である。また龐統以上に切れると評判の法正が率いているので魏延が応援に行ったところで余剰戦力になるだけだと思われた。


「理由はあるんだよ。」


龐統は疑問に答える為に語り始めた。河北に居る魏の旧臣が晋に対して蜂起する際、暴走を防ぐ為に魏延を抑え役として対応させる為である。河北に橋頭堡を築いて北進してから接触する事になるので時期的には不明だが旧臣を率いているのが張郃で魏延は戦場で戦っているので面識はある。張郃は事ある毎に魏延の名を出しているので本人が出向けば交渉も良い方向に転がると判断しての事である。


「お前さん次第なんだか。どうだい?」


「承知致しました。」


「分かっていると思うけど魏の旧臣をどうするかはお前さんに一任する事になっている。」


「我が君に仕えるよう説得を行います。拒否された場合でも共闘関係を築けるよう妥協点を見出します。」


「お前さんに頼んで正解だよ。状況に応じた判断をしてくれたら良い。」


龐統は魏延に頭を下げた後、表情を緩めて笑顔を見せた。


◇◇◇◇◇


新野に戻った魏延は楊儀を執務室に呼んだ。


「北伐が決定したのだが、私は荊州軍から外れる事になった。」


「納得出来ません。その理由は?」


江陵での一件と同じく楊儀も納得行かないと魏延に食い下がった。


「理由なのだが、漢中軍に配属されて…。」


「それなら納得出来ますが突然過ぎますね。」 


正当な理由だったので楊儀も納得するしかなかったが魏延に下話が無かった事に対して愚痴をこぼした。


「因みに後任の太守はどなたになるのでしょうか?」


「君だ。」


「お待ち下さい。某には務まりません。」


楊儀は魏延に従い漢中に向かうつもりになっていたので驚いた。政務については魏延から一任されていたので存分に力を奮い成果を上げていたが軍務については馬忠が担っていたので楊儀は殆ど関与していなかった。馬忠からはある程度手解きを受けていたが素人に毛が生えた程度である。


「普段と同じように政務をこなせば良い。軍務については関索を残すので彼に任せれば大丈夫だ。」

 

「しかし…。」


「君は将来重責を担う人材だと私は思っている。これが良い機会だと考えたのだ。」


魏延の言葉を聞いた楊儀は返す言葉が無くしばし無言になっていた。しかし楊儀は狼狽えておらず熟考していると魏延の目に映っていた。


「微力ではありますが新野太守の任をお受け致します。」


「宜しくお願いする。」


魏延は太守の印綬を楊儀に手渡した。

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