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魏延が行く  作者: あひるさん
第十一章 北伐
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劉備の決断

ご覧頂きまして有難うございます。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

成都に向かった龐統は現地に到着すると丞相府を訪れた。諸葛亮は先に来ていた法正と話をしている最中だったが龐統を出迎えた。途中から諸葛亮の屋敷に場所を移して夜遅くまで話し合った。


翌朝、龐統は法正を伴い政庁に入り劉備に対面した。


「軍師よ久しく顔を見ていなかったが元気そうでなによりだ。」


「我が君に大願成就の為に決断して頂きたく参上致しました。」


普段と異なる態度を取る龐統を見た劉備は来るべき時が来たと実感した。


「北伐か?」


「その通りです。気は熟したかと思われます。」


「晋は大敗したとはいえ強大な勢力を保っていると聞いているが?」


「確かにその通りですが先日の大敗が影響して司馬一族内部でも勢力が二分化されつつあります。つけ入る隙は十分にあります。」


「風向きは変わりつつある訳だな。」


龐統は大きく頷いた。そして後ろに控えていた法正に続きを任せた。


「必勝を期す為、我が君に承認して頂きたい事があります。河北については遼東の公孫淵に切り取り自由を認めて頂きたく。」


「公孫淵か。良い噂は聞こえてこない人物だな。」


「己の置かれた状況で二転三転しております。」


「大丈夫なのか?」


「正直申し上げますと大丈夫ではありません。しかし毒をもって毒を制すという言葉もあります。」


「毒をもって毒を制すか。」


「それに加えて…。」


法正は龐統に目配せすると劉備に近づいて耳元で何かを呟いた。劉備は目を閉じて暫く考えていたが意を決して目を開いた。


「龐統、全てを任せるので準備を始めてくれ。」


「承知致しました。」


「漢室復興の為、北伐軍を興す。三州にその旨を通知せよ。」


劉備の言葉を聞いてその場に居た文武百官は一斉に拱手した。


◇◇◇◇◇


劉備との対面を終えた龐統は法正と共に再び諸葛亮の屋敷を訪ねていた。


「士元、大丈夫なのか?」 


諸葛亮は劉備以上に公孫淵を信用していないので龐統と法正の策には懐疑的な考えを持っていた。


「公孫淵に切り取り自由を認めるけどあくまで奴さん自身が奪った所だけだよ。」


「それに魏の旧臣が公孫淵の動きを牽制する筈。晋陽北部にいる連中は奴に対して恨み千万です。」


「連中を使うのか?」


諸葛亮は話し合いの席で劉備が納得した理由を漸く知った。諸葛亮は軍事に関しては龐統が最高責任者なので必要以上に首を突っ込む事をしない事がその理由である。


「使う以前に晋と公孫淵に対して牙を剥くのは時間の問題です。我々の動きに呼応して動き始めるでしょう。」


「潰し合いにならないのか?」


「大丈夫です。晋が滅びる迄は共闘するでしょう。」


「その後は壮絶な潰し合いになる…。」


張郃は献帝を逃がす為に一芝居を打って献帝は無事に西蜀へ逃れる事が出来た。献帝もその事を常に気に掛けており、劉備に対して張郃を何とか助け出して欲しいと頼んでいた。その場面を直に見ている諸葛亮からすれば潰し合いによって張郃が命を落とす事は献帝や劉備に対して申し訳が立たなくなる。


「孔明、心配しなさんな。晋陽には元直が居る。あの男なら公孫淵程度に遅れは取らないよ。」


「元直が生きているのか?」


「あぁ、張郃軍の軍師を務めているよ。」


「確かにあの男なら大丈夫だ。」


諸葛亮の表情がここに来て漸く和らいだ。


◇◇◇◇◇


三人で酒を酌み交わしつつ今後の動きについて話し合っていると来客が現れた。


「公休殿、待っていたぞ。」


「遅くなって申し訳ない。」


来客は中常侍を務める諸葛誕だった。劉備陣営に加入後、中常侍という重職に抜擢され期待に違わぬはたらきを見せて能力を疑問視していた者達を瞬く間に黙らせた稀有な存在である。


「晋は前回以上に形振り構わず仕掛けてくるよ。お前さんと孔明には成都にいる連中の手綱を握ってもらう事になるよ。」


「お任せ下さい。黄皓のような国を乱す愚者を出さない事を約束致します。」


「孔明からお前さんの剛腕ぶりは聞いているよ。大船に乗らせてもらおうかね。」


諸葛誕は後宮に居た宦官を全員くまなく調べ上げ、少しでも不審な所があれば劉備や孫尚香の側仕えであっても容赦せず免職や異動処分を下して綱紀粛正を行い風通しを良くした。


「両軍師が北伐に専念出来るよう孔明殿の補佐を務めてみせましょう。」 


「頼んだよ。」


龐統はこのような男をみすみす手放すとは司馬一族も人を見る目が無いと感じると共に北伐も長期戦にならないような気がした。法正もまた龐統と同じ思いをしていた。

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