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魏延が行く  作者: あひるさん
第十章 激震
89/120

暗躍

ご覧頂きまして有難うございます。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

集合場所に着くと一足先に着いていた黄皓が既に待っていたので楊儀は魏延を伴って近付いた。魏延の存在を黄皓に疑われないように楊儀は先に手を打った。


「この男は私の従者で延喜といいます。少人数での行動になるので護衛役に連れて参りました。」


「…。」


魏延は無言で黄皓に頭を下げた。


「延喜は生来から無口で主人の私にも余り口を開かないのです。」


「生粋の武人という感じが致しますね。」


黄皓の言葉に魏延は一瞬ハッとしたが頭を下げたままだったので顔色を黄皓に見られる事は無かった。


◇◇◇◇◇


一行は成都の北門にさしかかった。早朝だった事もあり人通りが少ない。三人は兵士に止められて事情を訊ねらる事になった。黄皓は許可証を差し出したが不審な点があると別室に連行されてしまった。後宮に務める宦官が使者や連絡役が持たされる許可証を持っている事がおかしいと見られたからである。


「楊儀様、何か良い手立てはありませんか?」


黄皓は予想外の事態に気が動転していて何をすれば良いのかが分からなくなっていた。


「大丈夫です。」


楊儀は魏延を手招きすると黄皓に聞こえないように耳元で囁いた。魏延は用を足したいと兵士に言うと部屋の外へ連れ出された。


「延喜には袖の下を渡せと伝えましたのでしばらく待てば外へ出れる筈です。」


楊儀は焦る黄皓に笑みを浮かべながら声を掛けた。


◇◇◇◇◇ 


「職務に励んでいる様だな。」


部屋から連れ出された魏延は厠の近くまで来ると髪を整えて同行していた兵士を呼び止めた。


「ぎ、!?」


魏延は咄嗟に兵士の口を塞いだ。魏延の名前が黄皓に伝われば間違いなく警戒されてしまう。待ち合わせ場所で会った際に武人の様だと言われていたのでこれ以上詮索される事を防ぐ必要があった。


「此処で何をしているのですか?」


「悪巧みを企む奴を監視しているのだ。」


「ならば拘束致しましょう。」


「事情があって今は故意に泳がせている。それより頼みが二点あるのだ。一つは丞相府に使いを頼まれて欲しい。もう一つは我々が動けるような通行証を段取りして欲しい。」


「我々成都の兵士は将軍に多大な恩義があります。何でも引き受けます。」


兵士は胸を叩いて魏延に一礼した。成都の各門を警護している兵士は魏延が成都太守や近衛軍大将を務めていた頃から従っている者が大半を占めているのでこの兵士に限らず魏延と面識がある者ばかりである。


「感謝する。今からは私は只の従者に戻るから相応の対応をしてくれ。」


「心得ました。」


◇◇◇◇◇


楊儀の言葉通り魏延が部屋に戻って程なく三人は不審な点は無かったとして城外に出られた。魏延は何気ない振りをして新しい許可証を楊儀に手渡した。


「延喜、良くやってくれた。」


「楊儀様、それは?」


「新しい許可証ですよ。私の名義になってしまうので申し訳ないのですが。」


楊儀は黄皓に許可証を見せた。楊儀宛に発行された物で南鄭を経て上庸まで通行出来ると記されていた。


「上庸まで行けるならそれでも結構です。楊儀様には感謝の言葉しかありません。」


黄皓は安堵した様子で楊儀に何度も頭を下げていた。それを見た魏延はこの計画は穴があり過ぎると思うようになっていた。


新しい通行証のお陰で綿竹関や雒城を始めとする各関所では疑われる事なく通過出来た。関所の兵士達が一行を見て恭しく頭を下げているのを見た黄皓は楊儀の影響によるものだと思っていたが実際は魏延が影響している事を知る由もなかった。


◇◇◇◇◇


一行は順調に進んで無事に上庸へ辿り着いた。城内に入ると楊儀は魏延を手招きして再び耳元で何かを囁いた。魏延は一礼すると二人から離れて町中に入って姿を消した。


「延喜殿はどちらへ?」


「上庸に居る知人に先触れを頼みました。」


「宿で他人に話を聞かれては拙いでしょう。知人宅には離れがあるので利用させて貰います。」


「楊儀様の深慮には某足元にも及びません。」


黄皓は楊儀に感謝しつつ、この男は私の事を何も疑わずまんまと騙されていると心の中で笑っていた。実際は黄皓自身が罠に嵌められている事を気付いていないだけだった。

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