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魏延が行く  作者: あひるさん
第十章 激震
86/120

宦官

ご覧頂きまして有難うございます。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

「丞相、真実を語って頂きたい。」


魏延は諸葛亮に詰め寄った。傍らに居た楊儀は魏延を敢えて止めなかった。状況から考えて諸葛亮が今回の混乱を招いた原因だと考えていたからである。


「最初に言っておきますが、荊州軍の方々は私が劉封様を陥れようとしていると思っておられるようですが事実ではありません。」


「…。」


魏延と楊儀は無言だった。この期に及んで何を言っているのだと諸葛亮に怒りを覚えていた。


「高祖が大元帥を退いた韓信を再度補任する為に芝居を打った事はご存知ですか?」


「蕭何と張良が楚に降伏すると軍の配置まで手を加えて蟄居していた韓信を引っ張りだした件ですね。」


「その通りです。」


楊儀が諸葛亮に答えた内容を聞いて魏延は諸葛亮の思惑を察した。二人が態度を軟化させたので諸葛亮はようやく安堵して大きく息を吐いた。二人は隙あらば諸葛亮を拘束して事の次第を明らかにさせようと殺気を纏っており諸葛亮もそれを察していたからである。


荊州に不穏な動きがあるという噂が成都に拡がっていると太守の関平から報告を受けた劉備と諸葛亮は出鱈目だから打ち消すように指示を出した。しかし噂は鎮まるどころか政庁内部や後宮にまで拡がり動揺する者まで現れ始めた。幸いな事に劉備夫人の孫尚香は噂はあくまで噂であり真実ではないと相手にしていないので劉備は政務に専念出来る環境にあった。


また孫尚香から噂が呉に伝われば呂蒙のようにおかしな動きをする多輩が出て来る可能性もあるので何らか手を打つべきではと指摘された。劉備と諸葛亮は噂を打ち消すより出処を断つべきだとして動く事にした。

孫尚香は二人の動きに合せて阿斗の事を案じる発言を繰り返すようになり噂が噂でなくなり真実味を帯びるようになった。


「分かりました。今は丞相を信用するしかありません。」


「そう言って頂けると助かります。」


諸葛亮は魏延と楊儀に頭を下げた。今はこの男を信用するしかないと二人は顔を見合わせて頷いた。


◇◇◇◇◇


翌日、楊儀は帰朝報告を行ったが劉封召喚に失敗した事を諸葛亮に詰られた事が原因で諸葛亮と言い争いになった。楊儀は売り言葉に買い言葉で劉封を召喚したければ劉備や諸葛亮が自ら出向けば良いとか魏の内乱に乗じて北伐をさっさと行わないから諸将から不満の声が上がるのだとか言いたい事を洗いざらいぶちまけた。


劉備と諸葛亮は楊儀に無期限の謹慎処分を下して政庁から追い出した。楊儀は政庁から出ていくまでの間にも劉備と諸葛亮に対して不平不満をぶちまけていたので周囲の者から楊儀は荊州で気が触れておかしくなったと言われた。


「丞相の指示とはいえやり過ぎました。」


「やり過ぎが丁度良いと思う。後は黒幕が喰い付いてくれたら良いのだが。」


「ただ待つしかありませんね。」


「本当にやり過ぎになるかもしれないが外で不平不満を言うのも一つの手だと思う。」


「分かりました。明日から早速やってみましょう。」


楊儀は魏延の提案に乗って毎日酒家に出向いては劉備や諸葛亮に対する不平不満を言うようになった。魏延は楊儀の従者として聞き役になっていた。


◇◇◇◇◇


「お客様がお見えになられました。」


「誰かな?」


「黄皓と名乗られています。」


「客間に案内してくれ。」


家人が立ち去った後、楊儀は嫌そうな顔をしていたので魏延は興味を持った。


「楊儀殿、黄皓とは?」


「宦官ですよ。人に取り入るのが上手い奴です。私からすれば付き合いたくない部類に入りますね。」


「楊儀殿が嫌がるとは余程の者だな。」


「国の為ではなく己の為に働いているように思えますので嫌なのです。」


「それなら私も毛嫌いするな。」


話が途切れたのを合図に二人は立ち上がって客間に向かった。


前世における黄皓は後宮で務める宦官だったが劉禅の後ろ盾を得て表舞台に現れた。費禕や菫允が存命の頃は低位に置かれて単なる一官吏に過ぎなかったが二人の死後

は権力を掌中に収め蜀を疲弊させたあげく魏の侵攻に対しても無関心を貫き成都陥落に追い込んだ戦犯である。陥落後は蜀を滅亡に追い込んだ重罪人とされたが鄧艾の配下に賄賂を贈り死罪を免れている。


前世の魏延は諸葛亮の死後直ぐに亡くなっているので黄皓の所業を目の当たりにしていない。楊儀も宦官を相手にする機会が少ない為、判断材料が乏しく突っ込んだ情報を魏延にもたらす事が出来なかった。魏延は黄皓がどのような男なのかを見極めてからどうするか考える事に決めた。

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