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魏延が行く  作者: あひるさん
第十章 激震
82/120

成都に向かう

ご覧頂きまして有難うございます。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

卒倒した楊儀が別室に運ばれた後、そのまま話し合いが続けられた。


「内容はどうであれ我が君の命令に逆う事は出来ない。州牧から退任しようと思う。」


「劉封様それは駄目だよ。」


「軍師殿の言う通りだ。それこそ蜀が内輪もめを始めたと流布されてしまう。」


劉封は意を決して口に出したが龐統と関羽に止められた。何の落ち度もない劉封が荊州牧から降ろされたという情報が広まれば国内では劉備や諸葛亮による追い落としだとして内部に動揺が走る事が容易に推測出来た。劉封の事を良く知る関羽や張飛は劉備に対して不信感を抱く事もまた然りである。


「丞相が一枚噛んでいれば拙い事になるぞ。」


魏延は誰に聞こえるでもなく小声で呟いた。前世において劉封は上庸失陥の責を負わされて斬首されたが諸葛亮にその原因があると噂されていた。劉封は知勇兼備の良将で劉備の後継者として相応しい実力を備えていたがそれを危惧した諸葛亮が劉備を言い包めて謹慎で済むところを死罪に変えたというものである。劉封が居れば劉備の暴走(関羽の仇討)や劉禅の失態(佞臣の言葉に釣られて北伐を中止させた)を防げたという意見もあった。魏延もその意見に同意しており諸葛亮に対して利己的だと不満を抱いていた。


「魏延、お前さんはどう思ってるんだい?」


「某も同意見です。誰の差し金かは分かりませんが蜀を混乱に陥れようとしているのは明白です。誰かを成都に差し向けて本国の考えを問い質す必要があるでしょう。その上で劉封様が無実である事を知らしめるべきです。」


「それが上策だろうね。」


魏延の意見が最もだと龐統が認めると関羽以下諸将も同意した。そのまま誰を成都に向かわせるかについて議論が始まった。劉備から信頼されている、諸葛亮に物が言える、それなりに弁が立つの三つの条件で適任者は誰だという事になった。


「魏延、お前さんに行って貰うしかないね。」


「お待ちください。最終的には和解しましたが諸葛丞相に含むところがある事を軍師もご存じの筈。加えてこの時期に新野を離れるのは拙いのではありませんか?」


「それも承知の上だよ。だからこそ厳しい物言いが出来ると思ってるよ。」


「新野は私が責任を持って預かるから心配しないでくれ。」


魏延は諸葛亮と関わりたくないので辞退しようと理由を並べ立てたが龐統と関羽によって論破されて成都行きが決まった。二人は最初から魏延を成都に向かわせようと考えていたので図らずしも手を組んで魏延の逃げ道を塞ぐ形になった。


「承知致しました。」


魏延は自分が拒否して話を長引かせればその分劉封が不利な状況になると考えて承諾せざるを得なかった。結果次第では蜀本国と荊交両州が不穏な状態に陥る事もあるので魏延は戦場とは異なる緊張感に襲われた。


◇◇◇◇◇


魏延は準備を整えると新野に戻らず直接成都に向かった。龐統から成都の状況を知っておく必要があると楊儀を同行させるよう命じられた。魏延はかつて攻め上った道で知らない訳ではないと渋ったが成都を離れて数年が経っているので変わっている事もあるので道中でそれらを頭の中に叩き込まなければならないと龐統から説明された。


魏延は道中で楊儀から成都と蜀本国の状況について説明を受けた。前世とは異なり鼻持ちならない人を見下した態度を見せず、役目を忠実にやり遂げる生真面目さが目に止まった。魏延は前世の楊儀が尊大な態度を取る原因になったのは破格の出世ではないかと考えていた。地位が人を作ると言うが楊儀の場合は地位が人を貶めたのだと。加えて前世の自分によく似ているとも思っていた。


「私は役目を果たしていない罪で処罰されるのでしょうか?」


「君は劉封様に書簡を渡した事で役目は果たしている。心配しなくて良いだろう。」


「丞相から直接頼まれた事で有頂天になってしまい本来の職責を忘れるとは役人に有るまじき失態を犯しました。」


楊儀は書簡の中身を確認しなかった事を悔いておりしきりに役人失格だと自己嫌悪に陥っていた。前世ではあり得ない態度に魏延も面食らっていた。


「あまり考え過ぎない方が良い。君が任務を果たした事は私が証明する。何かあれば私が君の身柄を引き取らせてもらう。」


憐れに思った魏延は助け舟を出した。楊儀の才気は前世で既に証明されている。魏延は前世の事はを一旦横に置いてこの男を手助けしてやろうと思った。

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