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魏延が行く  作者: あひるさん
第九章 荊北攻防戦
75/120

第75話 睨み合い

ご覧頂きまして有難うございます。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

新野南方に陣を構えた魏延は城を守る夏侯楙等と睨み合いを続けていた。龐統から魏軍殲滅後の指示を受けていなかったので無理をせず攻撃拠点を築くだけで留めていた。新野には夏侯楙の後詰めとして曹仁が待ち構えていたので結果的には賢明な判断だった。それから暫くして龐統と関羽率いる荊州軍本隊が到着した。


「魏延将軍、大手柄だね。」


「いえ、諸将が策に沿って一糸乱れず動いた結果ですので某の手柄ではありません。」


「魏延、君は欲がなさ過ぎるのではないか?」


「欲で動けば味方の動向を軽んじ、敵を侮る事にも繋がります。それがどのような結果を生むか明白ではないでしょうか。」


「君の言う事に一理ある。済まなかった。」


魏延は龐統や関羽から功績を褒め称えられたが将兵が命令に沿って動いた結果だとして自身は何もしていないと頑なに否定した。魏延は転生してからこの姿勢を崩していない。そのお陰で劉備以下蜀漢の関係者からは清廉潔白の武人として一目置かれている。


「新野は守りが固そうだね。」


「総大将は曹仁が務めているようです。破れたとはいえ援軍の将を務めていた夏侯楙と夏候覇も健在ですので慎重に動く必要があります。」


「新野が落ちれば中原も危なくなる。魏軍も此処が正念場だと必死になるに違いない。」


「そうだね。様子を見ながら策を考えようかね。」


龐統は攻め急ぐ事なく時間を掛ける構えを見せた。普段と変わらず焦る様子も無いので関羽や魏延は何か考えがあるのだろうと思っていた。


◇◇◇◇◇


両軍は小競り合いすら起こさず睨み合いだけが続いている。長期間に及んだので厭戦気分が蔓延しないように兵に適宜休息を取らせたり入れ替えを行っていたが魏延も疑問に思う事があった。


「軍師殿、このまま睨み合いを続けるのですか?」


「そのつもりだよ。どうかしたのかい?」


「普段なら短期間で攻略する策を出されるので疑問に思いまして。」


「お前さんも関羽将軍と同じ事を言うね。正直に言うけど新野を落とす策は持っているよ。」


龐統は笑いながら地図を机の上に拡げた。


「敢えて動かないのは理由があるのですね?」


「その通りだよ。荊州軍が突出すればそれだけ集中攻撃を受けるからね。あっしらが動くには敵さんの注意を逸らせる必要があるんだよ。」


「それでは?」


「そういう事だよ。」


龐統は新野と長安を指し示した。法正率いる益州軍が漢中と西涼から長安を攻める準備を進めており荊州軍に先立って動く手筈になっていた。魏延もそれを察したので疑問が解消した。


「これを忘れちゃいけないね。」


「…。」


龐統が地図のある一点を指し示した。それを見た魏延は驚き無言のまま龐統を見た。龐統は何も言わず大きく頷いた。龐統が指し示した場所は呉が領有する徐州だった。


「いつでも動けるように頼むよ。」


「承知致しました。」


魏延は龐統に一礼すると幕舎を離れて自陣に戻り兵の士気を維持しつつ出撃命令に備えた。


◇◇◇◇◇


呉は呂蒙ら孫劉同盟反対派による反乱及び荊州侵攻が荊州軍によって鎮圧された後、陸遜と徐盛が中心になって再興に努めていた。孫権が先の一件で劉備に事実上臣従したので対魏に専念出来る環境下にあった。


その後外征出来る目処が立ったのに合わせて劉備の使者が呉を訪れて青州侵攻を要請した。その際に劉備は孫権に対して攻め取った土地は全て呉の取り分にして構わないと切り取り自由の言質を与えた。


孫権は陸遜に対して青州への攻撃を命令した。陸遜は甘寧・韓当等の主力軍を率いて小沛を出撃、譙を目指した。また徐盛率いる別働隊が下邳を出撃して琅邪に向かった。

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