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魏延が行く  作者: あひるさん
第七章 漢中王
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第53話 献帝を保護する

ご覧頂きまして有難うございます。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

傅士仁は小隊(50人程度)を率いて上庸北部の偵察に出ていた。前世では職務怠慢に端を発する裏切り行為で哀れな最期を迎えたが、現世では堅実に役目を全うするので魏延の信頼も厚く太守代理という役目を任されている。


「傅士仁様、北の方で怪しげな集団を見かけました。城に向かっているようです。」


「魏の偵察隊か先遣隊だろう。済まんが魏延将軍にこの事を伝えてくれ。」


傅士仁は報告を上げた兵士に指示を出した。


「承知致しました。」


兵士は指示を受けると直ぐに小隊から離れて上庸に向かった。


「我々は迂回するように近づいて正体を確認するが戦闘も予想される。気を抜かないようにしてくれ。」


傅士仁は小隊に檄を飛ばすと怪しげな集団を目指して出発した。その後小隊は大きく迂回しながら集団の北側に出て距離を置きながら追走を始めた。


*****


「人数は知れているな。我々だけで対処可能だろう。」


「それでは警告を行います。」


集団の規模が小隊の半分程度だったのを確認した傅士仁は単独での接触が可能と判断した。それを受けて小隊の兵士数名が集団に近づき、警告を行って制止させた。


「私は上庸の副官を任されている傅士仁という者だ。貴殿らは何処に向かうつもりだ?」


「我々は魏の張郃将軍麾下の者だ。ある事情で軍を抜けて上庸に向かう最中である。」


集団の長が魏軍だと名乗った為、小隊の兵士に緊張が走った。


「傅士仁様!」


「落ち着け、彼らに敵意はない。武器を下せ!」


傅士仁は剣や槍を構える兵士を押し留めた。得物の槍を近くに居た兵士に預けると馬から降りて長に近づいた。


「配下の兵士が失礼な事をした。」


「敵軍の兵士が目の前に居れば警戒するのが当然。気にしておりません。」


長は傅士仁の謝罪を受け入れた。長が言ったように敵兵同士が鉢合わせした時に警戒しないようなら命が幾つあっても足りない。小隊の兵士は長から見ても至極当然の対応だった。


「ある事情で上庸に向かっていると聞いたが。」


「張郃将軍から上庸太守にこれを渡すよう命じられておりました。」


長から書き付けを受け取り表裏を確認した傅士仁はこの場で開封せず魏延に渡すべきだと判断した。書き付けには『荊州軍魏延将軍宛 魏軍張儁乂』と書かれていた。


「魏延将軍には必ず渡すので安心して欲しい。ところで馬車に居るのは高貴な方とお見受けしたが。」


「先帝の劉協様です。」


「何だって?」


長から馬車に乗っている者の素性を聞いた傅士仁は驚きのあまり大声を上げてしまった。


*****


傅士仁はもう一度上庸に使いを走らせて魏延に状況を知らせると共に劉協らを護衛しつつ上庸へ向かった。知らせを聞いた魏延は劉備に知らせを送ると共に自らも小隊を率いて傅士仁に合流して護衛にあたった。


当初は南鄭経由で成都まで送り届ける予定にしていたが劉協夫妻共に心身の衰弱が酷いため上庸から動かせなくなった。劉備は自ら近衛軍を率いて諸葛亮と法正を伴い上庸に向かった。魏延は荊州にも知らせを送っていたので劉封と龐統、それに情報交換の為に江陵を訪れていた劉巴も加わり上庸に向かった。


*****


劉備は劉協と久々の対面を果たして互いの無事を喜び合った。劉協から退位の経緯を聞いて涙を流しながら魏に対して討伐の軍を興すと約束した。


その最中、諸葛亮は上庸に集まった面々を別室に集めていた。


「劉協様が退位させられた事で漢は事実上滅亡しました。しかし我々が保護した事で劉協様が引き続き帝位に就かれる事になります。」


「諸葛亮殿、その事で我々に何か影響があるのでしょうか?」


諸葛亮が何かを含んだ言い方をしたので劉封が真意を訊ねた。


「我が君が帝を保護した事で簒奪者を討伐するという大義名分が得れました。」


「大義名分は得たけど北伐の軍を興すのは時期尚早だよ。」


龐統が北伐で盛り上がりそうになった雰囲気を鎮めた。


「集まった皆さんにお聞きしたい。帝を保護する我が君が益州牧のままでは魏帝曹丕や呉公孫権に比べて格落ちではありませんか?」


諸葛亮が本題を切り出した。強制的とはいえ手順を踏んで帝位を得た曹丕と自ら公を名乗った孫権とは異なり劉備は漢の臣としての立場を崩さずに居た。


「確かに諸葛亮殿の言う通りだな。」


「何か考えがあるようですね。」


諸葛亮の問い掛けに対して全員が肯定的な考えだった。帝を推戴するからにはそれ相応の地位に就いて貰いたいという希望を持っていた。


「我が君には王公の地位に就いて頂こうと考えております。」


諸葛亮の意見に一同は大きく頷いた。

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