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魏延が行く  作者: あひるさん
第七章 漢中王
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第49話 大役を辞退する

ご覧頂きまして有難うございます。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

曹操率いる魏主力軍を壊滅状態にした益州軍は魏の残存部隊の掃討を終えてから南鄭まで引き揚げた。魏延は胡車児ら近衛軍の将兵を集めてささやかだが労いの宴を開いていた。その最中に劉備から至急の用があると呼び出しを受けた。


「魏文長、我が君に拝謁いたします。」


「夜分呼び出して済まなかった。」


劉備の居室には劉備の他に法正が居た。卓上に酒や料理が置かれていたので二人で祝っていた様に見えた。


「将軍を呼んだのは他でも無い。将軍に南鄭を任せようと考えているのだ。それを予め知らせる為に来て貰ったのだ。」


「申し訳ございませんが辞退させて頂きます。」


魏延は前世と同じように南鄭太守就任を示唆された。前世では居並ぶ諸将を前にして、『曹操が天下の兵を挙げて攻め寄せるならば、大王のためにこれを防ぎましょう。曹操配下の将軍が10万の兵で来るならば、これを併吞する所存でございます。』という決意を述べて劉備から賞賛されている。しかし今の魏延にとって南鄭太守は意味を為さないものになっていた。


「辞退する?その理由を聞かせてくれ。」


劉備は魏延の辞退発言を聞いて驚いた。南鄭太守は今回の漢中遠征における最大の報償にあたる。それを辞退した魏延の心中が理解出来なかった。


「南鄭は漢中の要衝であり、来たる北伐において前線基地になるでしょう。魏が曹操の仇討ちを画策して大軍を以て攻め込む可能性があります。それを防ぐには上将を配して魏に睨みを効かせるのが最善の手立てだと考えております。」


前世では張飛が南鄭太守になるという大方の予想を覆す結果になったが今回はその通りに進めようとしていた。


「魏に睨みを効かせて戦意を挫くか。戦が続けば将兵だけでなく民にも疲弊を強いる事になるからな。」


劉備は人の意見を聞き入れる度量があるので魏延の言い分にも理解を示した。また度重なる戦火に巻き込まれた漢中の民にこれ以上の負担を強いれば統治の支障になると考えた。


「我が君、将軍の意見は的を得ております。それに警戒しなければならない勢力が。」


「分かっている。尚香が我が妻であってもお構いなしとは・・・。」


孫夫人は呉の強硬派による度重なる暴挙に激怒して実家の孫家と絶縁状態になっている為、孫劉同盟破棄を目論む強硬派にとって理想的な状況下にある。魏は漢中を失ったとはいえ強大な力を有しており、それに対抗する為にも同盟堅持が最も効果的である。現状を考慮せず柵みに囚われている呉の強硬派に劉備は呆れていた。


「二人の意見は現状を把握していると思う。南鄭は張飛に任せよう。補佐役を付ければ無難に務めてくれるだろう。」


「梓潼は黄忠将軍を入れて張飛将軍の後詰めと益州の防衛線構築を任せては如何でしょうか。」


「黄忠には第一線で働いて貰わなければならないが年齢的にも適宜休息を入れるのが一番のやり方であろう。張飛とも馬が合うようなので適任とも言えるな。」


張飛の後任も黄忠に決まり、益州北部から漢中の布陣は固まった。


「魏延、何か希望は無いのか?一番手柄の君に対して何の恩賞も無いなら諸将が疑問に思うぞ。」


「図々しい願いかと思いますが上庸をお任せ頂ければ幸いです。」


「上庸?魏軍大敗を聞いて降伏した所だな。」


上庸は魏主力軍大敗の一報を聞いた直後、城下に攻め込んだ厳顔に降伏している。前世では劉封と孟達で陥落させた後は共同で統治していた。しかし荊州失陥の際に援軍を拒否した事で劉備の逆鱗に触れた二人の境遇が一変する切っ掛けになった因縁の場所である。


「上庸は南鄭と襄陽を結ぶ街道沿いに位置しております。この地に精強な兵を置いて漢中と荊州に変事が起きた場合には素早い対処が可能になります。襄陽側が隘路という欠点はありますが人員を投入して早急に整備すれば移動に際しての影響も最小限に抑えられます。」


「魏が恥も外聞も捨てて呉と結べば厄介な事になります。魏延将軍に上庸をお任せして漢中と荊州の変事に備えて貰うべきです。」


「分かった。魏延には上庸を任せよう。街道の整備については諸葛亮を通じて人員の確保を行えばよい。」


「有難うございます。」


魏延は希望通りに上庸を任される事になった。魏呉が動くまでに懸案事項である街道整備を行い、魏呉の荊州侵攻に備える事が魏延に課せられた。前世では南鄭において見ているだけだった荊州失陥をこの手で潰す機会が訪れようとしていた。

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