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魏延が行く  作者: あひるさん
第六章 漢中攻略
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作戦発動

ご覧頂きまして有難うございます。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

魏軍の間者による情報漏れを危惧した法正は各軍の幕舎を回って作戦の説明を行い出撃前の軍議は中止とされた。各軍は日の出と共に各々指定された場所へ進軍を始めた。近衛軍は二手に分かれて魏延と胡車児が大将となり、それぞれ指定の場所へ向かった。


*****


胡車児は向寵と馬謖を伴い、指定された場所に到着した。昨日魏延と許褚が一騎打ちを繰り広げた場所である。


「許褚は俺が対応するが他は二人に任せるぞ。」


「心得ました。」


「お任せ下さい。」


「そろそろ奴を誘き寄せるか。」


胡車児は二人に指示を与えると前方の魏軍に見えるように『胡』と記された旗印を掲げた。


「俺は益州の胡車児である!我こそはと思う奴が居れば遠慮なく掛かって来い!」


胡車児の声だけが周囲に響くだけで魏軍は静まり返っていたが急に騒がしくなり、一人の男が馬に跨がり猛然と駆けてきた。


「許褚か。久しぶりだな。」


「胡車児!ようやく見つけたぞ。曹操様を裏切った報いを受けさせてやる!」


胡車児の目の前に現れたのは許褚だった。曹操は許褚を止めようとしたが典韋の仇を討ちたいと懇願された事で迷いが生じた。そして一度は許したものの劉備に降って魏に牙をむいた胡車児に対して曹操も感情的になってしまい周囲の静止を聞かず出撃を許した。


「帝を蔑ろにする悪党の片棒を担ぐ奴がほざくな。」


「黙れ!」


許褚は怒り心頭で胡車児に襲い掛かった。胡車児は許褚の一撃を受け止めると笑みを浮かべた。


「向寵、馬謖!」


「お任せを!」


許褚へ加勢する為に魏軍兵士は自陣から次々に飛び出し、益州軍はそれを食い止める為に魏軍へ殺到した。劉備と曹操の雌雄を決する戦いの火蓋が切って落とされた。


*****


劉備と法正は本陣で戦闘開始の一報を受けた。法正は一報を聞いて小さく肯いた。作戦の肝である曹操と許褚の分断に成功したからだ。


「初手は上手く行きました。順調に進んでおります。」


「このまま進めば曹操は万事休すだな。」


劉備は何時もとは異なり険しい表情のまま地図を見ている。数多く辛酸を舐めさせられた曹操を討ち取る絶好の機会を得たとはいえ、不安や恐怖心に押し潰されそうになっている内なる自分と必死に戦っていた。


「曹操もあらゆる手段を講じてくるでしょうが全て考慮した上で策を立てております。」


「私は軍師の言う通りになると信じている。」


劉備は椅子に腰を下ろすと目を閉じた。法正の言葉を聞いて吹っ切れた心境になり気分も落ち着いた。人事を尽くして天命を待つのが今の劉備に唯一出来る事だった。


*****


魏延は傅士仁を伴い指定された場所に到着した。その時には胡車児と許褚によって戦の火蓋は切られており遠くの方から微かに声が聞こえていた。


「将軍、一通り見回りましたが敵兵の姿はありません。」


「抜け道は見当たらなかったか?」


「軍師殿の言われた通り出入り可能なのは南北二箇所だけのようです。」


「そこを塞げば袋の鼠だな。」


「二箇所とも付近に茂みがあるので兵を伏せておく事は可能です。」


傅士仁の報告を聞いて魏延はしばらく考え込んでいたが納得したようで数回頷いた。


「傅士仁、南側を任せる。魏軍が通り過ぎたのを確認してから道を塞いでくれ。」


「承知致しました。」


「私は北側の道を塞いで魏軍を待つ。今回は一兵たりとも見逃すな。全員斬り捨てる覚悟で対応してくれ。」


「心得ました。」


普段の魏延は降伏する敵兵に対して寛容な態度を取っていた。今回だけは厳しい態度で臨まざるを得ない事を自覚しており、傅士仁にも強い口調で指示を出した。傅士仁もその事を承知していたが魏延の言葉を聞いて改めて気を引き締めた。

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