漢水の戦い
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定軍山に攻め込んだ張飛は守りに徹していた夏候淵に苦戦したが法正の策略で引き摺り出す事に成功、一騎打ちに持ち込み圧倒的な強さで夏候淵を葬った。副将を務めていた韓浩は夏候淵に説得され定軍山陥落前に長安に落ち延びていた。
定軍山奪取の一報を受けた劉備は黄忠に陽平関攻撃を命じた。陽平関は漢中北部にある関所で益州から見れば中原の入口にあたる。魏軍にとって不幸だったのが定軍山と南鄭に兵力を集中させていた影響で上将が陽平関に居なかった。
黄忠は難なく陽平関を攻略したので漢水方面に兵を進めようとした。そこにようやく徐晃率いる魏軍先発隊が現れた。黄忠は無理をせず陽平関まで兵を退いて劉備の到着を待った。
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「黄忠、よくやってくれた。」
「陽平関には上将が居なかったのであっさりとしたものです。」
「魏の援軍に出くわしたようだな。」
「はい、徐晃と曹彰が率いているようです。」
「法正よ、どうすればよいだろうか?」
劉備は陽平関に着くと出迎えた黄忠を労った。黄忠から魏軍の話を聞くと法正に尋ねた。
「物見によると曹操率いる主力は来ていないようです。魏軍の出鼻を挫く意味で打って出るべきでしょう。」
「ならば黄忠に任せるか。」
「お待ち下さい。徐晃だけなら老将軍に任せるべきですが曹彰も相手にするとなれば話は変わってきます。」
「軍師殿、どういう意味か?」
法正の話を聞いた黄忠が口を挟んだ。
「曹彰は曹操の次男でありながら武勇に秀でており、その実力は徐晃や許緒を凌ぐとも言われております。二人同時に相手するとなれば苦戦は必至でしょう。」
「確かにそれは否定出来ん。呉蘭には後方を任せているからおいそれと動かすわけにはいかん。」
「それならば尚のこと補佐役を同行させる事が条件になります。」
「儂も納得した。人選は軍師殿にお任せする。」
黄忠は法正に軽んじられたと思ったが事情を聞いてそれが間違いだと気付き法正の指示に従う事にした。
「張飛将軍にお願いしたいところですが定軍山で失った兵士の補充が終わっていないので此度は守りに専念して頂きます。」
「仕方ねえな。次に備えて我慢するか。」
張飛は法正に上手く丸め込まれて手を挙げる事すら出来なかった。
「今回は関平将軍にお願いします。」
「承知致しました。」
「関平将軍の補佐役に近衛軍から向寵将軍をお借りしたい。魏延将軍、宜しいでしょうか?」
「承知致しました。向寵には某から伝えます。」
法正は曹彰の相手に関平を指名した。魏延は本来の役目である劉備の護衛を担うことになった。
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黄忠と関平は漢水手前に設けた砦で魏軍を迎え撃った。黄忠は徐晃と関平は曹彰と激しい打ち合いを行い魏軍を返り討ちにした。その際に関平は曹彰から愛蔵の武器である直槍を奪い取るなど目覚ましい功績を挙げた。
黄忠は魏軍からの降将を伴い陽平関に帰還した。降将は先発隊の副将を務めていた王平だった。王平は漢水を背にして背水の陣を構えた徐晃と曹彰に対して漢水を盾にして慎重に攻めるべきだと諫言して二人から煙たがられたので漢水北岸に自陣を設けて万が一に備えていた。
黄忠と関平に敗れ北岸に退却してきた二人から救援の兵を送らなかった事を詰られた。王平にしてみれば徐晃と曹彰が敗走して黄忠に攻められた時のことを考えて兵を留めていたが二人には信用されず怠慢を理由にして厳罰が下るよう曹操に上奏すると脅された事で逆上、自陣に火を付けた後で漢中を渡河して黄忠に降伏した。
劉備は王平を偏将軍に任命して張飛の配下に付けた。王平は中原の地理に明るいので道案内役としても期待されての事である。
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曹操は司馬懿に魏呉連携交渉を一任すると大軍を率いて許昌を出発、洛陽・長安を経て漢中に入り漢水近くに陣を構えた。夏候淵が張飛に討たれた事を洛陽で知った曹操は珍しく激昂して冷静さを欠いていた。曹操は夏候淵を討った張飛と曹休に恥を掻かせた魏延の二人を斬らねば気が収まらないという状況だった。
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