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魏延が行く  作者: あひるさん
第六章 漢中攻略
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馬謖幼常

ご覧頂きまして有難うございます。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

魏延は日課である成都郊外の巡回を終えて屯所に戻り執務室に入ると龐統が酒を飲みながら魏延の帰りを待っていた。


「軍師殿、どうされましたか?」


「お前さんの新しい役目が決まってね。知らせに来たんだよ。」


龐統は訪問の目的を伝えつつ酒瓶に手を伸ばそうとしたが魏延の視線を感じて引っ込めた。


「知らせに来たと言うより酒をたかりに来たように見えますが。」


魏延は呆れながら新しい酒瓶を差し出した。


「気のせいだよ。気のせい。」


龐統は苦笑いしつつ酒瓶を受け取り杯に注いだ。


「分かりました。それで新しい役目とは?」


「成都太守だよ。」


「ご冗談を。その役目には張飛将軍か黄忠将軍が就く筈では?」


成都太守は劉備の護衛役も兼ねているので重鎮格の文武官が就任するのが常識である。魏延の地位はさほど高くないので大抜擢と言われても不思議ではなかった。


「お前さんも野暮なことを言うね。これは劉備様の希望だよ。ちなみに張飛将軍は梓潼太守、黄忠将軍は江州太守に決まったよ。」


「その布陣は漢中を攻めるつもりですか?」


「それは無いよ。漢中の張魯は西涼の馬一族と組んで曹魏と争っているからね。劉備様にも協力的な態度を見せてるよ。言い方は悪いけど盾代わりだね。」


張魯は馬超と手を結んで曹魏の西進を防いでいたが馬超率いる西涼軍に比べて将兵の質で劣る漢中軍は瓦解する危険性と常に背中合わせだった。


「荊州に戻る軍師殿の後任は決まったのですか?」


「法正になるだろうね。諸葛亮は内政全般を見る事になるよ。」


「法正殿なら間違いはありません。ただ身体が弱いところがあるように見えますが。」


「あっしもそれは感じたよ。当面は軍を動かす事も無いから養生するように伝えたよ。何かあれば諸葛亮に任せれば当面は何とかなるよ。」


「某も出来る限りお手伝い致します。」


前世の魏延は漢中侵攻が本格化するまで成都に据え置かれて特定の役目に就かなかった。諸葛亮に警戒されていた事と益州侵攻時の度重なる独断専行が原因だった。現世では着実に功績を重ねて成都太守という枢要な役目を与えられた。


*****


程なく趙雲が大将を務める一軍に守られた孫夫人と諸葛亮が成都に到着した。劉備や龐統と共に一行を出迎えた魏延は孫夫人や諸葛亮に挨拶をして趙雲ら馴染みの将兵と話をしていた。その時に馬良から声を掛けられた。


「魏延将軍、お願いしたいことがありまして。」


「私に出来る事であれば何なりとお任せください。」


「幼常、此方へ。」


馬良が声を掛けると見覚えのある青年が馬良に近寄って来た。


「これは私の末弟で謖と申します。将軍の下で鍛えて頂きたいのです。」


「馬謖、渾名は幼常と申します。魏延将軍にはご迷惑をお掛けしないよう頑張りますので宜しくお願い致します。」


前世の魏延は諸葛亮と同じく馬謖の才能を買っており時折酒を酌み交わすなど公私に渡って付き合いがあった。街亭における敗戦の責任を負い斬首される際も諸葛亮の許可を得ずに末期の酒を飲ませて刑場に送り出した。馬謖の姿を見て魏延は胸が熱くなった。


「私は言うなれば武官です。馬謖殿なら諸葛尚書や法軍師にお願いする方が良いのでは?」


「私もそう思いましたが幼常が武で身を立てたいと申しましたので。」


馬良は馬謖が出仕したいと申し出た際、文武どちらで身を立てたいかと尋ねると武で

立てたいと返答した。関羽に師事させるのが最善だと申し入れたところ本人と韓玄から戦闘経験が群を抜いている魏延に師事させるべきだと助言され、劉備宛の推薦状を渡された。


「因みに我が君や諸葛尚書は何と仰せですか?」


「軍の何たるかを教えるなら将軍が最適だろうと仰せでした。」


馬良は成都で劉備と諸葛亮に関羽と韓玄からの推薦状を見せて事情を説明したところ諸葛亮から手元に置いて師事させたいと要望された。劉備は本人が武で身を立てたいと言っているので推薦状通り魏延に預けるのが筋だとして諸葛亮の要望を却下した。劉備は諸葛亮に対して武で挫折した時に初めて文で身を立てれるように手をまわしてやれば良いのではないかと諭した。


「分かりました。微力ですが馬謖殿の力になるよう頑張りましょう。」


「有難うございます。」


魏延はいつになく厳しい表情を浮かべつつ深々と頭を下げる馬謖の肩を軽く叩いた。前世において劉備は馬謖を見た後であの男は自身の才能に溺れて国の根本を揺るがすような大きな失敗をするので重用するなと諸葛亮に言っていた。現世ではそうならない為にも本人から恨まれようが厳しい態度を持って接する事も必要だと思っていた。

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