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魏延が行く  作者: あひるさん
第五章 益州遠征
33/120

張任を追う

ご覧頂きまして有難うございます。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

荊州軍は江州を離れて梓潼へ向かった。本隊から先行して梓潼に着いた張飛は単独で攻撃を開始したが益州軍は抵抗する事無く簡単に降伏した。降将の呉蘭と雷同は張松と懇意にしており荊州軍が来る事があれば従うよう事前に説得されていたのがその理由である。


臨江から逃げてきた張任は荊州軍が攻め寄せる直前までこの梓潼に身を寄せていた。張任は呉蘭と雷同の説得を試みたが張松の提案を受け入れる事を決めていた二人は応じず交渉は不調に終わった。逆に張任の身柄を降伏の手土産にしようと企んだ二人から追手を差し向けられたため城から脱出して成都方面に逃れていった。


*****


「魏延、再度先鋒を任せる。」


「承知致しました。」


梓潼に入城後、劉備から先鋒隊大将の再任を命じられた。


「軍師、あれで良かったのか?張任を前にすると気負うのではないだろうか。」


「劉備様、魏延が同じ過ちを犯す事など有り得ないよ。」


劉備の問い掛けに対して龐統は笑いながら答えを返した。


張飛と黄忠から魏延を先鋒に戻せないかと相談された龐統は二人に対して歯応えの無い益州軍と戦うのは面白くないと劉備に言えば後の事は何とかすると伝えた。劉備から命令を受けた張飛と黄忠は教えられた通りに答えたので劉備は困り果てた。そこで龐統が助け船を出して魏延にもう一度任せる案を出して認められた。このやり取りについて魏延は一切知らされていない。


*****


魏延は自軍の幕舎に戻り将兵を集めた。


「理由は聞かされなかったが再び先鋒を任される事になった。準備が整い次第、綿竹関へ向かうよう指示を受けている。直ぐに準備を始めてくれ。」


「承知致しました。」


幕舎に一人残った魏延は机に置かれた地図を見た。


「雒城なら確実に捕らえる事が出来る。綿竹関に居るなら時間を掛けて攻め落とす方法を考えるだけだ。臨江と同じ轍は踏まん。」


魏延は地図に拳を叩き付けた。


*****


綿竹関をどのように攻めるかを考えていた魏延だったがそれも徒労に終わってしまった。綿竹関から使者が訪れ荊州軍に降伏したいと申し出たからである。魏延の復帰戦は先送りになってしまった。


「私は荊州軍先鋒隊大将の魏文長だ。」


「某は綿竹太守の法孝直《法正》、横に控えるのは守備隊を任せている孟子度《孟達》です。」


法正と孟達は前世においていち早く劉備に降伏して勢力内における地位を確立した。法正は定軍山の戦いにて黄忠の軍師を務め夏候淵を葬った。劉備が漢中王に就いて直ぐに病死したため活躍した期間は短かったがその智略を認めていた諸葛亮は法正が健在なら夷陵での敗戦は無かったと断言している。孟達も法正と同じく漢中攻略で活躍した功績で上庸を任された。しかし呉の荊州侵攻の際に関羽からの援軍要請を断った事で立場が悪くなり上庸を献上する形で魏に降伏した。同僚の劉封が蜀に留まった事で敗戦の責を負わされ殺されたのとは対照的だった。その後諸葛亮による北伐に呼応して益州に再び寝返ろうとしたがそれを察した司馬懿に阻止された挙句、魏の粛清を恐れた一族の者に殺された。


「降伏すると聞いているが事実なのか?」


「事実です。劉璋に従っていてはじり貧になり身を滅ぼすだけです。」


魏延の問いに対して法正は淡々と答えた。


「貴殿等の降伏は受け入れる。但し降伏する以上、劉備様へ忠誠を誓って貰う。」


「当然の事です。我々を存分に使って頂いて大いに結構です。」


「頼もしい言葉だが貴殿は身体が弱い。無理せず劉備様に策を献上してほしい。」


魏延は何気なしに法正を労る言葉を掛けたが前世で知り得た事を忘れていた。


「ごく近い者しか知らない私の身体が弱いという話を誰に聞かれましたか?」


「張松殿が劉備様に話していた時に小耳に挟んだ。」


魏延はしくじったと気がついたが顔には一切出さず出鱈目を言ってその場を切り抜けようとした。


「そうでしたか。子喬なら仕方ありません。」


法正は納得した様子でそれ以上追求してくる事は無かった。


「二~三日後には劉備様も此方に到着する。その際に正式に降伏の挨拶をされると良い。」


魏延は立ち上がると法正と孟達の手を握り役目を労った。

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