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魏延が行く  作者: あひるさん
第一章 転生
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長沙の一騎打ち

ご覧頂きまして有難うございます。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

評定を行った翌日、関羽率いる劉備軍が長沙城近くに現れた。守備兵から報告を聞いた韓玄は黄忠や魏延等を引き連れ城外に出撃して城門前を固めた。


「長沙太守韓玄殿とお見受けした。某は劉備軍大将の関雲長と申す。」


「その通り、私が韓為馥である。関将軍は何用でこの地を訪れたのだ?」


関羽からの呼び掛けに韓玄は平然とした態度で応えた。


「我が主、劉玄徳からの言葉を伝える為。」


「劉備殿は何と仰せなのだ?」


「我が陣営への降伏を求める。しかし無理強いはしたくない。韓玄殿は聡明な方と聞き及んでいるので賢明な判断をお願いする。」


関羽は劉備からの口上を伝えると馬上から一礼した。


「劉備殿の配慮には感謝致す。しかし我々にも意地が有る。配下の一人が関将軍と手合わせしたい者が居るので希望を叶えてもらいたい。」


韓玄も口上を述べた後で関羽に一礼した。


「承知した。手合わせの後に降服すると受け取って宜しいか?」


「その通りだ。」


関羽は韓玄との話し合いを終えると自軍の兵を制して退かせた後、単騎で城に近付いた。


「黄忠、思う存分戦ってこい。」


「承知致しました。関羽に一泡吹かせてやりましょう。」


「よかろう、だが無理は禁物だぞ。」


韓玄に激励された黄忠も単騎で関羽に近付いた。


「関雲長参る!」


「黄漢升参るぞ!」


二人は一騎打ちを始めた。関羽の偃月刀と黄忠の長刀がぶつかり合い火花を散らした。


「魏延、どうだ?」


「両者の技量は遜色有りませぬ。おそらく隙を見せた方が負けでしょう。」


「長い戦いになりそうだな。」


黄忠と関羽の一騎打ちは韓玄の言葉通り長期戦の様相を呈し始めた。しかし二人は全力で刃を交えて両軍ともその光景を見守っていた。


「黄忠に勢いが無くなってきたように見える。」


「黄忠将軍に疲れが出始めたようです。このままでは拙い展開になるやもしれません。」


懸念した通り老齢である黄忠の勢いに衰えが見え始めた。一騎打ちとはいえども長時間になれば黄忠にとって不利である。


「あっ!」


「これは拙い。」


黄忠の馬が何かに躓いて転倒した。その弾みで黄忠は投げ出されてしまい、長刀を手放してしまった。


「魏延、直ぐに加勢を。」


「韓玄様、あれをご覧下さい。」


馬から投げ出されてた黄忠に近付いた関羽だったが偃月刀を向ける事なく黄忠に声を掛けただけで自陣に引き上げた。


「関羽は何故黄忠を斬らなかったのだ?」


「敵の不利に乗じる事を良しとしなかったのでしょう。」


「武人の礼儀と云うわけだな。よく出来た御仁ではないか。」


韓玄は関羽の正々堂々とした態度に感心した。それを見て胸をなで下ろした。黄忠は立ち上がると馬を一見して険しい表情のまま歩いて此方へ戻ってきた。黄忠の馬は躓いた際に痛めたようで前脚を引き摺っていた。


「黄忠、無事で何よりだ。」


「韓玄様、申し訳ございません。馬が怪我をしたので関羽に一矢報いる事が叶いませんでした。」


「黄忠、納得していないようだな。もう一度行って来い。馬は儂の愛馬を使えば良い。」


「はっ、有難き幸せ。」


韓玄は馬から降りると手綱を黄忠に預けた。黄忠は韓玄に頭を下げると馬に跨がり関羽の陣に向かった。二人は再び一騎打ちを始めた。そして日が暮れるまで散々打ち合ったが決着は付かず双方共銅鑼を合図に引き上げた。


「黄忠、天晴れであった。」


「有難う御座います。しかし韓玄様にお詫びしなければならない事が。」


「馬の事なら気にしなくて良い。戦に不慮の事故は付き物だ。」


「某、弓を使いませんでした。」


「関羽への義理立てであろう。気にする事ではないぞ。」


韓玄は戻ってきた黄忠を労った後、将兵を促して城内へ引き上げた。


*****


韓玄は昨日と同じ面々を政庁に呼び寄せた。


「黄忠も関羽と互角に戦い無事に戻ってきた。評定で決めたように長沙は劉備軍に降服する。皆もそれで良いな?」


『御意。』


その場に集まった者は誰一人反対する事なく韓玄の指示に同意した。


「使者は魏延に務めて貰う。」


「お待ち下さい。某は武人、使者など到底務まりません。」


韓玄の提案に驚いた魏延は自分には分不相応だとして拒んだ。


「降服論を言い出したのはお主だ。責任を持って話を纏めてくれ。」


「確かに言い出したのは某ですが。」


「他の者では関羽を前にすれば萎縮して何も言えなくなってしまう。武人で弁が立つのはお主しか居らんのだ。」


「微力ながら最善を尽くして交渉致します。」


魏延は成り行きで降服の使者を任された。韓玄曰く文官では関羽相手に萎縮してしまい真面に話し合いが出来ない。かと言って黄忠は根っからの武人で交渉事は不得手である。それなりに弁が立ち関羽に臆しないと言えるのは魏延しか居ないと云う理由で白羽の矢が立てられた。

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