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魏延が行く  作者: あひるさん
第十一章 北伐
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空城の計

ご覧頂きまして有難うございます。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

張郃と別れて中山に向かった魏延は数日で城が見える地点に到達した。

張郃が手傷を負わせているので遠くまで逃げる事が難しいと考えていた魏延は姜維と話し合い、城を攻める前に偵察隊を送り込んだ。


「申し上げます。門は開け放たれており、旗印が一つも見当たりませんでした。」


「内部は確認したのか?」


「申し訳ございません。不気味だったので中に入る事は出来ませんでした。」


偵察隊の長は城に近づいたところ、門が開け放たれていた。

門の近くから遠目で覗いたが中に人が見えなかった事で不気味に感じた。

魏延から無理をするなと命じられていた事もあり安全策を取って本隊まで引き返した。


「よくやってくれた。姜維、この状況をどう考える?」


「空城の計を画策しているかもしれません。」


「空城の計?」


「あえて自分の陣地に敵を招き入れることで敵の警戒心を誘う計略です。伏兵を周囲に配置しているのでは?」


魏延は前世で趙雲や諸葛亮が同じ手を使い魏軍を退却に追い込んだ事を思い出した。

その時は城内に居た味方は少なく、攻撃を受けると瓦解する可能性が高かったが、魏軍は警戒するあまり攻撃する事が出来なかったと魏延は関係者から聞いていた。


「姜維、君ならどのように動く?」


「城内に入ります。敵が居れば掃討致します。」


姜維の考えは魏延が思うところと同じだったので城内に突入する事を決めた。

仮に姜維が魏延と異なる考えであってもそれに従うつもりだった。

姜維の智略は魏延が及ばないところにあるからだ。


「分かった。君に先鋒を任せるから思うようにやってくれ。」


「承知致しました。」


「全ての責は私が負うから安心してくれ。」


「有難うございます。」


姜維は一礼するとその場を後にした。

その姿を見ながら前世の諸葛亮が功を焦り先走る自分に対して苦々しい思いをしていたのだろうなと感じて馬鹿な事をしていたものだと自戒した。


◇◇◇◇◇


司馬師は姜維の予想通り空城の計を仕掛けていた。

しかし蜀軍は城に入り占拠するなど司馬師の予想に反する動きをしていた。


「蜀軍に軍師役の知恵者が居るのか?我々の動きに警戒して晋陽に後退するかその場に留まる筈なのだ。」


司馬師は蜀軍に対して恨み辛みをぶちまけたが聞き役の賈逵は晋陽で分かれて鉅鹿に退却している。

近くに居た兵士では役に立たないので司馬師の苛立ちは酷くなる一方であった。


「こうなれば殿軍を襲撃して城に入った主力を城外に引き摺り出してやる。」


司馬師は賈逵から中山に退却した後は籠城して静養を兼ねて救援を待つようにと助言されていたが賈逵本人が居ない事と自尊心の高さが邪魔をした。


「敵主力が城内に入るのを確認した後、殿軍に攻撃を仕掛ける。」


司馬師は肩に鈍痛が走ったが気にせず精力的に動き始めた。

晋陽で深傷を負っていたが興奮しておりその事を頭の中から消し去っている上に周囲の兵士たちも叱責される事を恐れて指摘する者は誰も居なかった。


「目標は敵殿軍。一息に攻め滅ぼすぞ!」


◇◇◇◇◇


姜維が城内に向かうと魏延は殿軍として周囲の警戒を始めた。

偵察隊が何度も調べているので周囲に敵は居ないが前世や益州で痛い目に遭っているので念には念をである。


「姜維将軍より伝令です。城内に敵の姿は認められず。引き続き探索を行うとの事です。」


「ご苦労だった。周囲の警戒をしつつ城内に入ると…。」


魏延が伝令に指示を与えようとした時、偵察隊の兵士が息を切らせながら幕舎に飛び込んできた。


「申し上げます!北から敵兵が進軍中、我が軍の側面を突くものと思われます。」


「姜維に伝えてくれ。迎撃は私が行うので探索と受け入れに専念せよと。」


「承知致しました。」


「敵襲だ。迎え撃つぞ!」


魏延は立て掛けていた方天戟を手に持ち、近くに居た将兵に指示を出した。

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