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魏延が行く  作者: あひるさん
第十一章 北伐
103/120

張儁乂

ご覧頂きまして有難うございます。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

巡回兵の案内で帷幕に入ってきた旧魏軍の使者は一般兵の格好をしていた。


「張郃将軍より書簡を預かっております。」


姜維が使者から書簡を受け取り魏延に手渡した。

魏延は書簡に目を通したが直ぐに視線を上げた。

その態度に疑問を抱いた姜維が横から覗くと書簡は白紙で何も書かれていなかった。


「将軍?」


「大丈夫だ。我々を謀るような類ではない。」


書簡を見て使者を名乗る者達に騙されたのではと警戒しかけた姜維を魏延は押し留めた。


「使者を間に挟まず直接話をしたいと言うわけですな、張郃殿?」


魏延は意外な事を言って使者の一人を見据えた。

その男は突然笑い出すと武具を外して頭を上げた。


「最初から分かっていたようだな。」


「いえ、書簡を見て気付きました。張郃将軍、お元気そうで何よりです。」


魏延は張郃に近づいて握手を交わした。


◇◇◇◇◇


「上党と晋陽を同時に狙うか。良い考えだな。」


「別働隊は鄴攻略も視野に入れているので、魏軍の助力が無ければ我々の晋陽攻略は困難を極めていたと思います。」


「我々の方も司馬昭に押されていたので蜀軍が来なければどうなっていたか分からない。こちらの方こそ感謝しなければならない。」


両者は対晋で意見が一致していた事もあり、話し合いは順調に進んだ。

晋陽攻略については魏軍が晋陽東方の遮断、蜀軍が晋陽攻撃する事で纏まった。

状況次第で魏軍の一部が攻撃に加わる事も決められた。


「これを一読して頂きたい。」


「この書簡は?」


「漢中王が発したものです。」


劉備が法正を通じて魏延に託したもので、旧魏軍に冀州を任せたいとする内容である。

曹家に名を連ねる者は居なくなっているので、残された旧臣で分担する事になるが、誰が聞いても破格の待遇である事には違いなかった。


「これは本当なのか?」


「間違いありません。帝も承認されて玉璽を押されています。」


疑っている張郃に書簡の最後に署名と印が押されているのを教えた。

書簡には献帝劉協と劉備が署名しており、玉璽と王印がそれぞれ押されていた。


「帝は漢中王に対して張郃殿のお陰で命を長らえる事が出来ているので恩義に報いたいと常々仰せでした。」


「私は程昱の暴挙で曹丕様が帝を弑逆したという誹りを防ぐ為に動いただけなのだ。」


「張郃殿の機転で帝と后は今も健在です。これは胸を張っても良いと思います。」


「帝と漢中王のご配慮に感謝する。」


曹丕の事を案じての行動が結果的に張郃を含めて司馬一族による粛清から生き延びた者の身を助ける事に繋がった。


◇◇◇◇◇


魏延は目配せをして帷幕内に居た兵士に席を外させた。

張郃も魏延に続いて配下の兵士に席を外すよう命じた。

帷幕内は魏延、姜維、張郃の三人だけになった。


「晋陽を落とした後、我々は中山から幽州に向かいます。」


「幽州…。公孫淵と一戦交えるつもりか?」


「はい、この件は漢中王を含めて少数しか知り得て居ない内容です。」


公孫淵は司馬懿に協力して張郃を挟撃するなど晋建国に際して功績があり、臣下の礼を取っていた。

しかし劉備が北伐を行い、晋の形勢が不利になったので間髪入れず蜀に対して臣下の礼を取ろうとした。

劉備と諸葛亮は諸葛誕から公孫淵が自分の利を一番に考える油断ならない奴だと聞いていたので表面上は申し出を受け入れたが、将来的に幽州北部へ押し込めるか最悪は潰す方向性で話が纏まっていた。

公孫淵は悪知恵が働くので対抗出来る者を送り込む事になり、魏延に白羽の矢が立った。


「なるほど。あの男が後ろに居れば気になって夜も寝れなくなる。」


「その通りです。対応は私に一任されましたが、潰す方向で動く事を漢中王に認められました。」


魏延は張郃が公孫淵から騙し討ちをされて敗走した事を北伐開始前に聞いていた。

張郃の感情を考える以前に自分の都合で仕える相手を繰り返し変えるような奴は蜀に必要ないと思っていた。

対応を一任すると言われたので獅子身中の虫となる公孫淵は潰すべきだと主張して法正に認められていた。


「我々は晋陽が落ちた後、どう動けば良いのだ?」


「張郃殿には鉅鹿を攻めて頂き、東方に睨みを効かせて貰えれば。」


「承知した。先ずは目の前の晋陽を落とさねばなりませんな。」


張郃は魏延に拱手して、蜀軍に加わり魏延配下として戦うという態度を取った。

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