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魏延が行く  作者: あひるさん
第一章 転生
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五丈原

ご覧頂きまして有難うございます。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

「丞相が昨晩亡くなりました。」


「丞相が亡くなっただと?」


「間違いありません。」


「我々はどうすれば良いのだ?」


「丞相が生前立てられた策に従い漢中に撤退します。」


蜀の丞相諸葛亮が陣中で病没した。補佐役の楊儀が丞相代理として指揮を執り前線将軍に撤退命令を発した。最前線に居た魏延は伝達役の姜維からその事を聞いた。


「申し上げます。魏軍が陳倉方面へ撤退し始めました。」


「姜維、魏軍の撤退をどう見る?」


「丞相の策に引っ掛かったのでしょう。」


「そうなのか。で、策がどういうものなのか教えてくれないか。」


諸葛亮が病で長く保たない事を耳にしていた魏軍大都督の司馬懿は蜀軍撤退の知らせを聞いて諸葛亮が陣没したと判断して追撃部隊を差し向けた。そこへ諸葛亮を似せた人形が目の前に現れた事で司馬懿は気が動転し撤退命令を出すと同時に我先に陳倉方面へ向かって逃げ出した。それが影響して魏軍は混乱状態に陥った。自身亡き後、司馬懿と正面切って対峙するのは危険だと判断した諸葛亮が蜀軍を無事安全圏に撤退させる為に考えた策だった。


「魏軍が混乱状態の今こそ司馬懿を狙う絶好の機会ではないか。」


「そうとも言えますが命令に従い撤退するしかありません。」


「姜維、ここで司馬懿を討てば次の北伐が容易になるのだぞ。」


「命令を違える事は出来ません。」


命令を頑なに守ろうとする姜維の言葉に業を煮やした魏延は説得するのを止めた。そして甲冑を身に着け、武器を携え外に出た。


「馬を引け。」


「魏延将軍、どちらへ行かれるのですか?」


「魏軍に決まっているだろう。単騎で魏軍に斬り込んで司馬懿を仕留めてやる。」


「無謀すぎます。」


「これは俺の意地だ。先帝の恩義に報いる為にもやらねばならんのだ。」


魏延は姜維に直属将兵の指揮を委ねると愛馬を駆って単騎魏軍を追いかけた。姜維は魏延を止めようとしたが振り払われた。


「将軍、楊儀の一言が無ければ私も同道していました。あの一言さえ無ければ。」


姜維は魏延の後ろ姿を見ながら自身の不甲斐なさを悔いて号泣した。姜維も魏延と同じ考えで混乱する魏軍に一撃を加えて司馬懿を追い詰めるつもりで将兵を集めていた。しかし楊儀から魏軍を追撃する者は何人であろうと謀反の罪で厳罰に処すと言われたことで姜維は躊躇して動けなかった。


*****


「どけっ、貴様らには用は無い!」


魏延は退却中の魏軍に追いついた。魏延の動きを阻もうとする将兵を大刀で蹴散らしながら魏軍本営を目指して突き進んだ。


「司馬懿、貴様だけは逃さん。」


魏延の視界に司馬懿の後ろ姿が入った。魏延はありったけの声で司馬懿の名を叫びながらひたすら追いかけた。


「お前だけは殺さねばならんのだ。」


司馬懿は乗馬が蹴躓いた拍子に落馬してしまった。それを見た魏延は馬から下りて道を阻もうとする兵士を斬り捨てながら司馬懿に近付いた。


「ぐわっ!」


魏延の身体に矢が刺さった。司馬懿の救援に駆けつけた司馬師率いる弓隊が放ったものだった。


「司馬懿、貴様だけは道連れだ!」


「ぎ、魏延を儂に近づけるな!」


魏延は腰に提げていた弓を素早く構えると司馬懿目掛けて矢を放った。魏軍も司馬懿の叫び声を聞き、魏延に向けて矢を放った。魏延の放った矢が司馬懿の冠に刺さると同時に魏延の全身に魏軍の放った矢が刺さった。


「陛下、申し訳ございませぬ・・・。」


魏延は司馬懿に向けて弓を構えた姿のまま息絶えた。

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