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第7話 仕組まれた罠

 未だに実感がわかない……夢のような時間だった。

 ギルド長とお話をするだけでなく、共にクエストに行くだなんて。

 しかし、ギルドの受付嬢さんに確認を取るとやはり薬草採集のクエスト受注はされていた。

 現実として受け入れて良いみたいだ。


 ――その後、ギルドの雑用を終えると日が落ちかけていた。

 僕は自分の部屋に戻ると、ベッドの下に隠し持っている木刀を取り出す。

 隠しておかないといつも僕をいじめている意地悪な冒険者達に折られてしまったり、捨てられてしまうからだ。

 廊下を通り抜け、少しだけ肌寒い外の風を肌で感じながら、僕は誰もいない中庭に出て一人素振りをする。


(ふぅ……これだけ鍛錬しても僕の剣スキルは最低ランクか)


 一向に強くなれない僕だけど、毎日の鍛錬はかかさない。

 早く強くなって、このギルドに、冒険者として貢献するためだ。

 どこも受け入れなかった僕なんかをこのギルドは拾ってくれたから。

 もう冒険者になるには、このギルドで人一倍努力するしかない。

 そして、僕はいつかギルド長のギルネ様に恩返しをしたい。


 といっても、今回の件でさらに大きな恩が出来てしまった気がするけど……。

 クタクタになるまで鍛錬をすると、僕は眠る事にした。


◇◇◇


「……朝、か。朝食の準備をしに行かなくちゃ……」


 雑用係の朝は早い。

 なぜなら、緊張しすぎて眠れなかったからだ。


 とりあえず、朝の雑用仕事をこなそう。

 僕はギルドの内部を掃除し、外の花壇や植木などの外観も整えた。

 僕が冒険者の皆さんから預かっている兜や武器もきれいに磨いていく。

 冒険者の皆さんが今日着ていく服も用意して、収納している食材の確認をしながら食堂にやって来るのを待つ。

 食堂に現れ始めた冒険者の皆さんへ挨拶を済ませながら朝食を提供し終えて、一段落するといよいよその時が近くなる。


(――そろそろ、ギルネ様が来られる頃かな)


 食堂は朝食を食べている冒険者達で賑わっていた。

 その中で僕は一人落ち着けないでいる。


 どうしよう、お弁当もギルネ様が用意してくださっているし……。

 冷静に考えるとギルネ様のお弁当が食べられるなんてとんでもない事だ。

 僕も何か用意した方……。


「おい、ティム! ティム=シンシア!」


 そんな事を考えていたら声をかけられた。

 僕をよくいじめているギルド員の1人、長髪の剣士の男だ。


「ギルネ様が紅茶をご所望だ。ギルネ様のカップは預かってる。これに淹れてさしあげろ」

「は、はいっ!」


 長髪の男がそう言って僕に綺麗なカップを渡した。

 手持ち無沙汰だったのでちょうど良い。

 ギルネ様の為に丹精を込めてお淹れしよう。


 そう思ってカップを手にした瞬間、長髪の男は僕にぶつかってきた。

 僕は決死でカップを守りきり、一安心する。


「あ、危なかっ――」


 と、思ったら僕の手の上でカップは不自然に割れてしまった。


「――えっ?」

「あぁっ!? ギルネ様のティーカップがぁ!?」


 長髪の男が不自然な程の大声を上げると、人が集まってくる。

 その多くは日常的に僕が虐められる様子を見て嗤いに来た冒険者たちだろう。


 ――しかし、今回は日頃のような小さな言いがかりではなく大事件だった。


「ティム、お前! あろうことかギルネ様の私物を『勝手に持ち出すだけでなく』壊すなんて!」

「えっ!? えっ!?」


 長髪の男の大声に驚きつつ、僕は唖然とするしかなかった。

 確かに割ってしまったのは僕かもしれない。

 でも、このカップはギルネ様の許可のもとに持ち出された物ではなかったのだろうか……?

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― 新着の感想 ―
[良い点] あちゃーデート、いえ、冒険者としての始まりの朝が、こんな形で!
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