第6話 幹部達は納得がいかない
幹部達の意見を静かに聞くと、ギルネ様は腕を組んで口を開いた。
「……今のティムに対する暴言は、私から彼に謝罪をしておく。お前達はもう出ていけ」
「――っ!? ギルネ様、正気ですか!?」
「貴方様が頭を下げるなどあってはなりません!」
なおも意見を変えようとしないギルネ様に幹部の皆様は狼狽していた。
まぁ、一番泡を吹いて気絶しそうなのは僕なんだけど。
「お前らこそ正気か? 私は今なら不問にすると言っているのだぞ。今すぐ消えた方が良い」
「ですが、重要性という物がございます! ギルドにとって重要な方を――」
「重要性を考えた結果だ。お前達との会食よりも優先されるべきと判断した。二度は言わないぞ?」
「ぐっ……、失礼いたします」
ギルネ様の殺意すら宿っていそうな視線に刺されると、幹部たちはすごすごと部屋を出ていった。
全員が『お前の顔は覚えたぞ』みたいな表情を僕に見せながら。
「ティム、君が普段からどんな扱いを受けているか今ので少し分かったよ。全く、酷いもんだ」
ギルネ様はそう呟くと、本当に僕に頭を下げてきた。
あまりの事に僕はギルネ様よりも頭が低くなるように土下座をした。
1000人のギルド員に崇拝される彼女の頭が自分よりも低くなるわけにはいかない。
「ふふ、頭を下げる事に関しては君に勝てる気がしないな。ギルド員が頭を下げるべきは私ではなく本当は君なのにな」
僕の滑稽な姿を見てギルネ様は笑ってくれた。
そのあまりの美しさに僕は呼吸も忘れて見とれてしまう。
「ティム、仕事の邪魔をしてしまってすまなかったな、君は誰よりも忙しいのに」
「い、いえ! そんな事はっ! 僕なんて雑用しか出来ませんから……」
「その"雑用"がこのギルドを一人で支えているのだ。残念ながら私しか気がついていないようだが」
「そ、そんな……恐れ多いお言葉です」
「君は少し謙遜が過ぎるな。よし、明日は私が君を迎えに行こう、食堂に行けば会えるか?」
「え、えと……は、はいっ!」
ギルネ様はワクワクしたような表情で床に這いつくばる僕に手を差し伸べてくれた。
白く、とても綺麗なその手に思わず躊躇う。
「ぎ、ギルネ様のお手を煩わせるわけには……!」
「そ、そうだな! 手を繋ぐのはまだ早いな! いやっ誤解しないでくれたまえ、下心は無かったんだ! 本当に!」
突如、早口になったギルネ様は顔を真っ赤にして手を引っ込めた。