第2話 ティムの勘違い
僕の突然の土下座にギルネ様は慌てて椅子から立ち上がって駆け寄る。
「ちょ、ちょっと待ってくれティムっ! まだ何も言っていないだろう? いったいどうしたんだ!」
「分かっています! 僕が弱っちいから解雇するんですよね!? でも僕はどうしても立派な冒険者になりたいんです!」
「ティムを解雇!? そっ、そんなわけないだろう! な、なんなら生涯と、と、共にするまであるわっ!」
ギルネ様は顔を真っ赤にして僕の言葉を否定してくれた。
声が裏返るくらい、言葉がドモるくらい、必死になって言ってくれた。
僕というギルドの『障害』と共に居てくれる……と。
あまりの優しいお言葉にまた今度は別の涙が出そうになる。
「ティム、落ち着いて聞いてくれ。今回呼んだのは本当に些細な用事なのだ」
「す、すみません……取り乱してしまって……」
「大丈夫だ、落ち着いてからでよい。ほら、お茶を淹れよう、私の椅子に座ってくれ」
「そんな、僕なんて床に座って――飲み物も泥水でいいんです!」
そんなことを言いつつ僕は床に正座しようとした。
でもよく考えたらそもそも座ること自体が失礼なのですぐに立ち上がる。
「驚かせて済まなかった、きっとガナッシュが君に何か脅しでもかけたのだろう……あいつめ」
「い、いえっ! ガナッシュ様は僕にとても良くしてくれました!」
ギルネ様が怖い顔をしてガナッシュ様の名前を呟いたので僕は急いで誤解を解く。
ガナッシュ様は僕をここに連れてきてくれただけでしたし……。
というか、剣聖ガナッシュ様と共に歩かせていただいたことが身に余るほどの光栄です。
「えっと……ギルネ様が直々に僕をお呼びになるなんて、いったいどんな御用なのでしょうか?」
たとえBランクのクエスト依頼ですら幹部たちに一任しているこのギルドでは、ギルド長の呼び出しなどあり得ないような異常事態だ。
このギルドにおいては戦力にすらなっていない僕にいったいどんな用事なのだろう。
消えても構わない僕は攻撃魔法の実験台にでもされるのだろうか。
僕は死すら覚悟するような気持ちで尋ねた。
「いや、本当に些細なことなのだ。ティム、君の最近の様子を聞こうと思ってね」
ギルネ様は優しく微笑んだ。
※ギルネ様は味方です。