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第14話 始まりの朝、誓いの言葉

 

 目を覚ますと、体中に痛みが走った。

 そういえば、僕は昨日、幹部のニーアを殴ろうとして。

 逆にこっぴどくやられて。

 ガナッシュ様に運ばれながら意識を失って……。


 今は小鳥のさえずりを聞きながら、見覚えのない天井を仰向けで見上げている。

 折れていたはずの腕が動かせる、誰かが治療してくれたのだろうか。


(……? 左手に何か温かい感触が)


 そう思って見てみると、ギルネ様が僕の手を両手で握ったまま床に座って寝ていた。


「うわぁ! ぎ、ギルネ様!? 何で床で!?」

「う~ん……ティム! 良かった、起きたんだな! 体調は大丈夫か? 痛い所は? お腹は空いていないか?」


 僕が目を覚ましたことを確認すると、ギルネ様は身を乗り出して矢継ぎ早に質問をしてきた。


「ぎ、ギルネ様! なぜベッドで寝られなかったのですか!?」

「だ、だって、ベッドに入るのは流石(さすが)にまだ早いと思って……!」

「早寝早起きは大切ですよ! ベッドが2つあるんですから使ってください!」

「え、あっ、そ、そうだな! 全くだ! 使わないのはもったいなかったな!」


 あはは~、と二人でぎこちなく笑った後、フゥと一息ついた。

 お互いに慌てすぎて変な方向に話が進んでしまったみたいだ。


「……ギルネ様、勝手な行動をしてしまい申し訳ございませんでした」


 僕は先にギルネ様に謝った。

 ギルネ様の顔に酷い泥を塗ってしまったからだ。

 勝手にギルドに戻り、ギルネ様の決断を取り消してもらえるように懇願してしまった。

 今だから分かる、僕の行動は本当に愚かだった。


「あ、謝らないでくれ! ティムが無事なら良いんだ!」

「それと、ギルネ様っ! 卵焼きを作ってくださりありがとうございましたっ! 甘くて、焼き目もほど良くて、大変美味しかったです!」

「た、食べてくれたのかっ!? それはその……凄く、嬉しいぞ……」

「あはは、どうしても食べたくて。せっかく作ってもらった物ですから」


 ギルネ様は感動に胸をつまらせるように呟いた。

 僕も料理を作る身だ、相手に作った料理を食べてもらう喜びはよく分かる。

 ギルネ様も嬉しさの為だろう、熱を帯びた視線で僕をぼんやりと見つめている。


 ギルネ様はふと我にかえったように頭をぶんぶんと振る。

 そして自分の手に持った指輪を見せてくれた。

 指輪の赤く輝く小さな宝石は朝日に照らされて美しく輝いている。


「これを取り返してくれたんだろう? 私にとってはかけがえのない指輪なんだ。本当にありがとう」

「あっ……その指輪。良かった、僕はちゃんと持って帰ってくる事ができたんですね」

「あぁ、もう手放さない。またティムが大怪我をしてまで取り返しに行ってしまうからな」

「ふふっ、では指にはめておいた方が良いですね。……ギルネ様、失礼いたします」

「――っえ?」


 僕は指輪をつまむと、ギルネ様の指にゆっくりと通してゆく。

 赤い宝石の光が反射したのか、ギルネ様の顔も真っ赤に染まった。

 これで落とすこともない。


 指輪を取り戻せた喜びだろう。

 ギルネ様はとろけそうなほどに幸せそうな表情で指輪越しに僕を見つめている。


「……ギルネ様」


 僕は『ある誓い』を立てる為にギルネ様の名前を呼んだ。

 僕の決意の表情に気が付き、ギルネ様も僕を見つめ返してきた。

 多分、僕たちが考えている事は一緒だ。


「ギルネ様、あいつらは僕について来たギルネ様を侮辱しました」

「ティム、あいつらは冒険者になるために頑張っているティムを馬鹿にしていたよ」


 僕の視線とギルネ様の視線が熱く交差する。



「「――だからっ!」」



「僕、立派な冒険者になりますっ!」

「ティム、私と冒険者になろうっ!」



 お互いがお互いの気持ちの為に。

 踏みにじられた思いを取り返す為に。

 指輪と共に二人で約束を交わした。

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