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第13話 無力な拳は掴み取るために

 

「ふん、魔術を使うまでもない」


 ニーアは僕の拳を難なくかわすと、僕の腹を蹴り上げた。

 僕は懸命に堪える。


「――うっぷ!」

「よく耐えた、吐かれても困るからな」


 続けて僕の顔面を殴りつけた。

 指にはめられた宝具が、メリケンサックのように顔面にめり込む。


「パンチとはこうやるんだよ。雑用ばかりじゃ知らないだろうが」


 そのまま僕の頭を掴んで地面に叩きつけた。

 そして、後頭部を何度も踏みつける。

 木造の床がへこみ、床は血溜まりになった。


「ね、ねぇ、流石にやりすぎじゃない?」

「ロウェル、これは良い機会だ。私に歯向かったらどうなるかをこの場でギルド内に知らしめた方が良い」


 僕の足を、手を、執拗に踏みつけて骨を折ると、ニーアは再び僕を掴み上げて晒してみせた。

 ギルド員たちはあまりの凄惨な光景にみんな、目を背け始める。


「ほう、これだけ痛めつけてもまだそんな目で私を睨めるのか」


 ギルネ様の何もかもを踏みにじったニーアを僕は憎んでいた。

 拳は握り続けていた。

 ……それでも身体は全く動かなかった。


「その目を片方えぐりましょうか。私に反抗したことはそれで勘弁してあげます」

「――そこまでだ、ニーア」


 食堂の入り口から渋い声がした。

 剣聖ガナッシュが酒瓶を片手に食堂に現れた。


「ガナッシュ、今さら出てきて何のようですか?」

「俺が重要な用事で出払っている間に色々とあったみたいだな」

「重要な用事って……酒瓶片手によくも堂々と嘘が吐けますね」

「ティムを離せ、どう見てもやり過ぎだ」

「……はいはい」


 ニーアは僕を床に落とした。


「もう十分だろう。こいつは俺がギルドの外に叩き出しておくからお前らは建設的な話し合いでもしてろ」

「それもそうですね、この小僧に付き合っているのは時間の無駄です」

「全く、床も血だらけじゃねえか……よっと」


 ガナッシュ様は僕を担いだ。


「これで俺は話し合いを免除にしてくれ。堅苦しい話は苦手なんだ」

「それが目的ですか、貴方らしい。まぁ、でも貴方の腕は確かみたいですから別に良いですよ」

「さすがニーアだ、話が分かるな」


 人差し指と中指をビッと上げて挨拶を済ませると、そのままガナッシュはギルドを出ていった。


「おい……おい、ティム。大丈夫か」


 ガナッシュ様が僕に呼びかける。


「おい、ティム。お前を休ませるから一度どこかの宿まで運ぶぞ」

「……ギ……ルネ……様……」

「話せるか、ギルネ様が居るんだな? 良し、あの方なら回復魔法が使える。方向を指示してくれ」


 消えかける意識の中で僕はギルネ様の待つ宿までを指差した。


 ◇◇◇


「おい! ティム、ティム! あぁ、どうしよう!?」

「ギルネ様、大丈夫です落ち着いてください。運びながら回復薬をたらふく飲ませました」

「回復薬ってその酒瓶の事じゃないだろうな!?」

「これは俺の回復薬です、こいつにはまだ早い。俺がいない間に何があったのですか?」

「それより今はティムの容態だ! どこを怪我しているんだ……あぁ、可哀想に!」

「大事はなさそうですが……。ギルネ様、こいつ気を失ってるのに右手だけは握ったままですね」

「何かを握っているな……これは!」


「……指輪ですか?」

「あぁ……ティム。取り返してくれたんだな……」



 ティムの右手を抱きしめて。


 ――ギルネリーゼは涙を流した。


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― 新着の感想 ―
[一言] 続きが気になります(  Д ) ゜ ゜ 個人的に好きなストーリーです( ≧∀≦)ノ
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