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第12話 踏みにじる心

 

 こうして僕は再びギルド、『ギルネリーゼ』に戻ってきた。


 先程、自分がギルドの追放を言い渡された食堂には今後の方針を話すためか、幹部達とギルド員達がまだ残り、話し合っていた。


 僕は食堂を突っ切ると幹部の皆様の前で床に這いつくばって頭を地に着ける。


「お願いいたします! ギルネ様のギルド脱退を取り消させてください!」


 僕の出現に一度、場は騒然となった。

 もう一度大きな声で、僕は懇願した。


「責任は、僕が全て取りますからっ! ギルネ様をこのギルドに戻してください!」


 しかし、すぐに笑い声が聞こえてくる。


「あ~、ティム君。『アレ』はもう要らないんだ」


 顔を上げると、ギルド長の証とギルネ様が着けていた指輪をはめたニーア様が邪悪な笑みを浮かべていた。

 右手にはギルネ様が手放した白い杖を持っている。


「君にも見えるだろう。あの小娘が長年で集めた宝具や神器の数々が今や私の手にある」


 それらに見惚れるようにため息を吐くと、ニーア様は再び僕を見下した。


「これで私はあの小娘に匹敵する力を手に入れた。だからもう『アレ』は要らないんだ」

「…………」


 頭が真っ白になった。

 もうギルネ様は戻れない。

 全て、僕のせいで……。


「だが、君が来てくれて良かったよ。この"残飯"は君のだろう? 処理してくれ」


 ニーアはギルネ様が置いていったハンドバッグに手を突っ込んだ。

 入っていた綺麗なお弁当の包みを取り出す。

 そして――それを床に叩きつけた。


 きっと綺麗に盛り付けられていたであろう色とりどりの料理が床に散乱する。

 

「昨日からせっせと準備をしていたよ。ギルドの当主がこんなくだらない事をするなんてやはりアレはここから消えて正解だな」

「料理が……」


 僕は震える手で散乱した料理から卵焼きを口に運んだ。

 ギルネ様に僕の好物だと話した料理だ、きっと一生懸命作ってくださったんだろう。

 砂糖の甘味と適度な焼き目を舌の上で感じながら、僕は十分に咀嚼すると飲み込む。


 床に落ちた料理を口にする僕を見て、くすくすと嘲笑する声が聞こえる。

 ニーアは「これじゃ人間ではなく家畜だな」と呟き、高笑いをした。


「あぁ、そうだ。これもただの指輪だったから要らない。ほら、拾って良いよ」


 そう言うとニーアはギルネ様が最後に外された指輪を床に捨てた。


「『愛するギルネリーゼへ』とか彫ってあるだけの安物の指輪だったよ。両親の遺品だろうね、全くバカな娘を産んだものだ」

「…………」



 僕は捨てられた指輪を拾った。

 そして大切に右手の拳の中に収める。


 ――僕の拳がこいつの顔面に当たっても手から落っことさないように。


「うおぉぉぉぉおおおお!」


 僕は怒りに任せてニーアに殴りかかった。

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