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奴隷ならそれくらい当たり前だろうが

 木陰に潜みつつ進むと、居たのはアデリーナ様とアシュリンさんでした。アデリーナ様は黒い巫女服なので遠目でも分かりました。

 やっと合流できました。



 エルバ部長も確認されたようで、遠くから二人に声を掛ける。


「おいっ! 久しぶりだな」


 ただ、アシュリンさんはその前からこちらを見ていました。エルバ部長の様に魔力感知とか言うもので気配を感じ取られたのかもしれません。アシュリンさんは、意外に高性能ですからね。


 アデリーナ様も振り向かれて、エルバ部長に軽く会釈をする。

 で、横にいる私を見て目を見開かられました。


「メリナさん、どうしてエルバ部長といらっしゃるの? ナタリアはどうされたの」


「ナタリアはノノン村に預けました。お母さんがいるので、この世でスードワット様の傍の次に安全な場所です」


「……転移魔法。あのイカれた攻撃魔法と言い、あなたは才能に恵まれているのですね」


 もっとお誉めください。

 私、とても誇らしいです。



「アシュリン、このメリナがラナイ村に戻りたいと言っていたが、何故だ?」


 エルバ部長の質問にアデリーナ様が答える前に、私は口を挟む。


「アデリーナ様、お聞きください。ナタリアの他に奴隷がいるようなのです。聞いた話ですと、とても酷い事をされていまして、すぐに助けに行かないといけません」


「それは、さっき聞いた」


 エルバ部長が短く、感情もなく私に言った。私はそれを無視して、ナタリアが語った内容を皆に伝える。



「アシュリン、それは魔物駆除殲滅部としての仕事か? 一人の奴隷の戯言に組織を巻き込む気か?」


 ん? この人、ナタリアのお姉さん召し使いを助けるつもりが無いってことですか。


「我々はエルバ部長の捜索が任務でありますっ!」


 それは、そうです。

 が、私は助けに行きますよ。今も裸の上に鞭打たれているかもしれません。


「では、私を連れて帰るまでだな。あと、このメリナを抑えてくれ。私を倒してでも村に行きそうだ」


 えぇ、目で殺してしまいそうです。それくらい殺気が出ていますよね。

 クソガキ部長は怯まずに私に言葉を続ける。


「奴隷ならそれくらい当たり前だろうが。犬が棒で叩かれるようなものだろ」


「汚され続けろと仰るんですか?」


 子供だから事態の深刻さが分からないんでしょうに。


「失礼だな。汚れたかどうかを決めるのは本人だ。お前の価値観で物を言うな」


「聖竜様がお聞きになったら嘆かれることでしょう。巫女の言葉とは全く思えません」


 まだ敬語で耐えていられるけど、これ以上はダメよ。素が出てしまうわ。


「竜が人間の所業を気に掛けるとは思えんな」


 あぁ!! 了解だわ。

 一人で行きま――


「エルバ部長の任務は完了しているのですか?」


 アデリーナ様が口を開いた。



「あぁ。メリナが言う奴隷が私の調査対象の巫女見習いフロンだろうな。屋外に出てこない以外は、不審な点はなかった。ただの出奔だろう」


 お姉さん召し使いが巫女ですって!? なおさら、助けに行かなくてはならないでしょ。


「であれば、総務としては、そのフロンの救出をどこかの部署に依頼しないといけませんが、ご助力頂いて宜しいですか?」


「何故だ? 事件性があれば別だが、フロンは既に神殿の籍から抜いているだろ。逃走の挙げ句、騙されて奴隷に墜ちる。数年に一度くらいある話だ。神殿が絡む必要性を感じない」


 もう良いかしら。私は村に向かわないといけません。


「貴部から調査を続けたいと半年前に連絡があり、除籍の決裁をしておりません。従って、彼女はまだ巫女見習いであり神殿の関係者です」


「そうか。……出鱈目な調査結果が提出されたから、再調査を命じたんだったな。まさか自分が来るとは思っていなかったが。……仕方ないな、行くか。そういうことであれば、調査部としても現認という名目も立つだろう」


 最初から、そう言いなさいよ。


「ありがとうございます」


 礼を言って、アデリーナ様が颯爽と村に向かう。

 私たちもそれに続く。




「エルバ部長は聖竜様を竜とお呼びしたことについて、謝罪されないのですか?」


 私が何回も道中でそう言い続けたら、エルバ部長は遂に謝った。


「マジしつこいな。悪かったよ。謝るよ」


 うむ、まぁ、満足です。でも、今から救出予定のフロンさんとかいう人が手遅れになっていたら、また許しませんよ。ただ、もはや何をもって手遅れと言うのか、一線は何回も越えている様なので、私のそれ系に関する知識では想像も出来ない状況です。



「聖竜も竜。生物学的な話じゃないか」


 まだ言うか。


「いえ、違います。エルバ部長のような頭カチコチのクソチビガキと私みたいな清廉な乙女では、同じ人間ですが、区別すべきでしょう? 聖竜様と他の竜を一緒にするなど、天地がひっくり返っても思ってはなりません」


「あぁん? 言い換えろ。『あなた様のような天才と、愚かな戦闘狂の私では同じ種族と思えません。地に這いつくばってよろしいでしょうか』、だろ」


 減らず口を。叩きのめすぞ。


「クハハハ、さすが狂犬メリナだ。エルバ部長であっても噛み付くのだなっ!」


 狂犬……。いえ、違いますことよ。私はお淑やかで御座いますよ。



「もう、村に近いので静かにお願いしますね」


 アデリーナ様に軽く叱られた。エルバ部長のせいで御座いますね。

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