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やっと発見

 やっと発見できたよ。

 で、そのアシュリンさんはどこ?

 私は真っ直ぐ続いている道に目を凝らす。


 真っ直ぐで起伏もそんなにないんだけど、森は暗くて、先は見え辛い。私には少しの人影も分からない。

 オロ部長、凄いな。どうやって分かったんだろう。



 私やグレッグさんが前方を見ている間に、オロ部長がメモを書く。


“アシュリンの後ろから魔物が迫っています。各自、迎撃の準備を”


 追われているのかしら。

 ってか、そこまで感知できるなら、絶対にゴブリンも見付けていたわね。お腹が空いていたからなの? 食事をしたいからゴブリンの群れに入っていったのだと確信しちゃうわよ。



 いえ、それよりも気合いを入れて準備しないと。


 あのアシュリンさんが撃退せずに逃走する相手よ。かなり強いと思わなくては。


 一般に森の奥に行くほど、魔物は強くなっていく。お母さんが持っていた小難しい本に拠ると、確か『瘴気』が奥に行くほど強まって、魔物の力が変質しやすいから云々。お父さんの別の本には、その場所に住む精霊の影響が云々とか書いてあった。


 この森がどこまで続くのか分からないけど、もう夕暮れ近くになるまで歩いたのよ。かなり奥に入ったと思うべきよ。日帰りの冒険者ならまず立ち入らない場所だもの。



 アシュリンさんが見えた!

 オロ部長が書いた魔物とやらの姿は見えないな。

 私は手をぶんぶん振る。

 アシュリンさんも片手を上げた。大きなコウモリの羽根を畳んで背負っているのが見える。薬師処からの依頼、無事に達成ね。


 タッタッタッタッと一定のリズムで走るアシュリンさんの様子からは襲われている感じはしない。




「オロ部長、このような所までどうなされたのですか」


 アシュリンさんは私たちの下に到着して直ぐに、姿勢良く部長の前に立つ。

 それに対してアデリーナ様が代わりに答える。


「アシュリンの帰りが遅いとメリナが心配されたのです。ここまで出迎えた事、感謝致しなさい」


「おぉ、アデリーナも一緒かっ! 珍しいなっ!」


 呼捨てですか。アデリーナ様は王家の方ですよ。アシュリンさん、強過ぎです。

 そんなに精神力があるのに、肩車は恥ずかしかったのですね、プププ。


「メリナっ! ご苦労であったっ!」


「いえす、まむ」


 私も会えて嬉しいから、アシュリン式で返答してやりました。



「で、どうされていたのですか?」


 アデリーナ様がアシュリンさんに訊く。


「道に迷ったっ!」


 至極簡単な理由ね。

 でも、深く聞くと単純じゃなくて、コウモリを仕留めて帰ろうとすると景色が変わったのだそう。魔物に転送魔法を掛けられたか、混乱系の魔法を掛けられたのだろうとアシュリンさんは主張する。

 根拠は、景色が変わった先に魔物がいたから。


 魔法が使える魔物か……。それは強敵。

 使うだけの知恵があるっていうことだもの。狡猾なのが多いわね。


 アシュリンさんは逃亡を選択。何故なら、相手のテリトリーで戦う愚を犯す必要はないため。


 で、逃走中に私が出した火炎魔法の光を見て、原因が何であるかを確認するためにやって来たらしい。道が真っ直ぐで走りやすかったのもあったって。


 アシュリンさん、自分で言うのも何だけど、あの火炎を見て恐怖心は湧かなかったのかしら。私なら得体が知れない物を確認しようなんて、逃走中なら尚更思わないわよ。


「そうか、あれがメリナの魔法か!」


 相変わらず、アシュリンさんは大声だ。普通の大きさで喋ることも出来るのに、どうしてなの? そちらが素なの?


「そうです。アシュリンさんに直撃しなくて良かったです」


「グハハハ、確かになっ! しかし、メリナ、その服、派手にやられたなっ!」


 私の血まみれの服を見て、アシュリンさんはそう言う。空気に触れて、もう黒ずんでるものね。擦ったら赤黒い粉を吹く感じにまでなってますよ。



「何はともあれ、アシュリンさんが無事で何よりです」


 アデリーナ様が水とパンをアシュリンさんに渡す。受け取り次第に、アシュリンさんはガッツガッツ貪り、飲む。


「助かったぞ、アデリーナ! 誉めてやる」


 おかしいでしょ。その人は王家の人よ。アシュリンさんは知らないの?


「さすが、王位継承権13位だっ!」


 知ってたよ。アシュリンさんはマジものでしたか。

 


「おいっ! 折角の再会で悪いが、言って悪い冗談もあるぞ! 王家への侮辱として重罪にされたいのか!?」


 何故か怒り出したグレッグさん。真面目なのもいいけど、それ冗談じゃないのよ。ごめん。

 どちらかと言うと、今のでグレッグさんが王家を脅迫したことになりそうよ。



「それに魔物が近付いて来た……」


 グレッグさんが指差した方を見ると、道に沿った遠くの木々が揺れているのが見える。風じゃない、もっと不自然な感じで(しな)ったり戻ったりしているように見える。

 木を伝って、こちらに来ている?


「猿だ、猿。大きかったぞっ! 行くぞ、アデリーナ、メリナっ! それから、そこのヒヨッコ! 馬を見ておけ」


 アシュリンさんが食事で汚れた口を袖で拭き落としてから叫び、敵の方を見る。


 ちょっ、アデリーナ様も戦力で考えていいの?

 あと、ヒヨッコってグレッグさんの事ですよね。大声で言ってあげると可哀想なので止めて下さい。


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