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ゴブリンはおやつ

 オロ部長がいないと思ったら、樹上に行っていたみたい。森で登場した時みたいにバサッと上から落ちてきた。

 ……案外、蛇の体って便利なのね。私の魔法も通さないくらい丈夫な鱗皮をしていたし。


“アシュリンが向かったと思われる箇所を突き抜けて一本道が出来ていました。彼女の気配はありませんが、進みましょう”


っていうメモを頂いたわ。



 えっ、それってサラッと恐ろしい事書いてますよね。アシュリンも燃えてない?

 気配って言うのは、遠目で見た意味での気配ですよね。魔力で絶対的にアシュリンさんを感知出来るとか、そんな絶望をホンのちょっとだけ、すこーし感じるような意味での気配じゃありませんよね。

 ……衝撃的な文字だから自己防衛しちゃうわね。はっきり聞くのは怖いから黙ってます。



「うん、地面は熱くないわね。やっぱり火炎魔法ではないですよ、メリナさん」


 ホントだ。私も触ったら全然熱くないや。


「竜のブレスも熱くないのがあると聞いたことがあるぞ」


 グレッグさんも横から会話に参加してきた。


「……まぁ、いいです。真っ直ぐに見通せて進みやすくなったと、今は考えておきましょう。メリナさん、もう行けますか?」


 まだ休憩してないですよ。私は馬の背の樽から水を掬って飲む。


 突然、オロ部長が尻尾で地面をバシンと叩いた!

 えっ、お水飲んだの不味かったですか?



「皆さん、敵襲です!」


 喋れないオロ部長に代わってアデリーナ様が伝えてくれた。そういう合図だったのね。


 でも、私はきついわ。さっきの魔法で、だいぶ体が言うことを聞いてくれない。


 オロ部長がまたメモを出してくれた。グレッグさん宛ね。


“安心しなさい。囲まれ始めていますが、雑魚です。私とメリナが仕留めます。グレッグさんは念のためにアデリーナをお守りください”


 ちょっ、私の名前が勝手に使われているじゃない。まだ敵の認識もしてないわよ。



「メリナの魔法で寄せられてきたか」


 グレッグさんは短剣を構える。

 うん。まだ、今の私の方が戦力になりそう。

 部長命令だし、仕方ないわ。私も拳を構える。



 どこ?

 木々の奥へと目を凝らす。

 

 ……いた!

 ゴブリン? 本当に雑魚ね。でも、囲まれているってオロ部長が書いていたから、それなりの数が居るってことね。


「ゴブリンが出たぞ! 気を付けろ!」


 私に遅れてグレッグさんが叫ぶ。でも、もうアデリーナ様でさえ分かっているわ。叫ぶ前に敵に身構えなさいな。



 他の冒険者がいないと思ったら、ゴブリンの巣でもあったのかしらね。オロ部長、ちゃんと教えて欲しかったよ。ゴブリンがこれだけいれば、冒険者を避けるのと同じように出来たでしょ。


 あいつらは汚いから、私は好きじゃない。殴ったら手がベットリするのよ。



 オロ部長がいきなり跳ねた!

 これ、知ってる! 地下水路で私が喰らったヤツだ。


 改めて見ると凄いジャンプ力。しかも木の隙間を縫って跳ぶのね。ちょっと間違えれば木に当たるかもしれないのに、怖くないのかしら。


 うわっ。

 着地したオロ部長を見たら、何か咥えていた。緑の足だけが口からはみ出ている状態だったけど、絶対にゴブリンよ! 部長、ゴブリンを食べちゃったよ! 丸飲みだよ!



 仲間を一匹殺られたゴブリン達は一斉に姿を現す。

 10は余裕で越えている。20匹くらい?


 私は慌ててオロ部長とは反対側に回る。小賢しいゴブリンよ。死角から狙ってくるわ。


 やっぱり、いた!

 馬を狙って突進してきていたわ。


「グレッグさん、横! 気を付けて!」


 後ろから来たなら、別の方角も来るわ。

 せめて私と部長、グレッグさんで三角形の陣になって、アデリーナ様を守りたい。……オロ部長が出過ぎているけど。


 無防備に突っ込んでくるゴブリンの緑色の顔を全力の拳で殴って、ぶっ飛ばす。ゴブリンって小柄で細身だから軽いのよね。

 殴った奴は頭を木の幹に当てて動かなくなった。……という死んだ振りなんでしょ。悪賢いわね。


 私は氷の槍を出して、仕留める。ついさっき火炎魔法を使ったばかりだから、体が重くて辛い。でも、我慢よ。



 よし、こちらのサイドのゴブリンは、もう前に出て来なくなった。でも、遠くに何匹も視認できる。様子を伺う知恵があるなら、さっさっと何処かに去りなさいよ。


 馬を挟んで向こうのオロ部長の方は重量物が何回も落ちる音がする。たぶん、部長のジャンプよ。ゴブリンはオヤツ的な感覚なのかしら。ちらっと見たら、また食べてた。お腹壊さないのかな。



 それにしても、ゴブリンは仲間を食べ続けられるのを見て、何とも思わないのかしら。人間を補食しに来たのに自分達が食べられる。それって怖くないの。

 襲って倒されるなら仕方ないかもとか思えるけど、食材として扱われているのよ。恐怖過ぎるじゃない。



 私は周りを警戒する。


 良かった!

 グレッグさんの方へも来ていない。


 って、木の上!

 スリングショットで狙っている!!


 私は魔法を唱える。が、たぶん間に合わない。諦めて、私はアデリーナ様の前に出るように走る。

 グレッグさんを狙っているなら、ごめんなさい。当たっても怪我くらいで済むと思うよ、きっと。アデリーナ様は護衛するって森に入る前に約束したから。



 ゴブリンの動きを注視しながら走ったけど、突然、煙を上げて消え去った。


 何?


 あっ、オロ部長の口から出す何かの液だ。

 何なの、アレ。とても怖いわね。私も当たっていたら、あんな感じで煙になって死んでいたのかしら。恐ろしすぎるわ。鬼部長よ。

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