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眼鏡の人

「さて、今から皆様は竜の巫女です」


 うん、うん。知ってる、知ってる。

 聖竜様のために働くんだよね。

 国の皆の憧れになるんだよね。ここの巫女さんってだけで、一目置かれて、チヤホヤされるのよね。お給金もそれなりに貰えるんだよね。


 村の大人達が言ってたもん。

 あんなに誉められたり、話し掛けられたりしたのは、初めて野犬を退治した時以来だった。

 正直、気持ち良かった。



 よく分からない部署だったけど、私も一員でいいんだよね。


 駆除殲滅って意味分かるけど、仕事内容なんてお母さんに部署名伝えても分からないんじゃないのかな。何より、ここ、軍隊じゃなくて神殿だし。

 そこだけちょっと、いや、かなり心がザワザワする。



 眼鏡の人が続ける。付けている細目の眼鏡がキラリと光った。


「しかし、あなた方はまだ見習いです。しっかり先輩方の言うことを聞いて、早く一人前になるんですよ」


 私も他の二人も黙って頷く。



 眼鏡の人が言い終えて、白い帽子を被る。ここに来る途中に見た神殿の巫女さん達は皆、あの白い帽子とゆったりとした黒い服を着ていた。


 あれが巫女さんの正装なんだね。初めて見たけど憧れるよ。あれに身を包むだけで落ち着いた大人の女性に思われるわね。

 早く着たいよ。



 ノックの後に扉が開いて、とても綺麗な女性が二人入って来た。

 歩き方にまで品を感じるわ。



「シェラね。私はルーシア。よろしくね」


「はい。これからよろしくお願いします」


 優しそうな人がシェラさんと話している。隣の、誰だっけ、鼻笑い女さんも先輩と楽しそうに挨拶している。

 



 ……なぜ、私の先輩は来ないのかしら。


 もう同期の二人がいなくなった部屋に、私と眼鏡の人だけが残っている。


 とても静かで、それが私には耐えられません。これからどんな仕事をするのかという憂いもあって押し潰されそうです。

 視線もどこに持っていけばいいのか迷います。何故、眼鏡の人は私を見つめ続けて平気なんでしょうか。



「質問、宜しいでしょうか?」


「メリナさん、許可します。ただ、お仕事の話は部署でお聞き下さい」


 いえ、それが聞きたかったんですよ。喋る前から挫かれました。

 でも、沈黙が続くのはよくない。


 どうしよ。



「えーと、その眼鏡はどこで買われたんですか? とてもオシャレです」


 心底どうでもいい質問になってしまったわ。ごめんなさい、別に普通の眼鏡だよね。

 なんで私はそんな話題にしたのかしら。振られた方も困惑するわよね。


 もっと神殿の歴史とか聞けたじゃない。バカ、バカ。



「そう? そうなの? 分かるの!?」


 意外に食い付いたよ……。

 うん、良かったわ。結果オーライよ。

 場は繋がれたの。


 そこから扉が勢いよく開かれるまで、私は相槌を打ちながら眼鏡話を聞くことになった。

 有名な眼鏡工房と技士さんについて詳しくなったけど、その知識を使う機会は、多分ないかな。

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