表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/421

配属決定

「最後はメリナさんですね」


「はいっ」


 元気よく返事をしよう。第一印象が大事なのよ。



「あなたは………ノノン村? 聞いたことないわね。どこにあるの?」


「ここからだと東南に四日ほど馬車で行ったところにあります」


「あぁ、小麦畑が広がる所ね」


 大雑把な認識ね。でも、そんなものか。


「はい、森を開拓した比較的新しい村になります」


「あら、推薦者の名前がないわよ?」


 それは私には分からない。だって、その書類は私が書いたんじゃないもの。


「どなたからの紹介?」


「すみません、名前は覚えていません。フなんとかさんです。半年程前に雨宿りして頂いたお婆さんに、その場で紹介状と、後日お手紙を頂きました」


 すみません、お婆さん。

 紹介状の筆跡が達筆過ぎて、私には読めませんでした。


「それらはどこに?」


「こちらの鞄の中です」


 横に置いていた手提げ鞄を半分引き摺って前に出す。ほんとクソ重い。

 あとで、向こうに座っているシェラさんだっけ、あの貴族様だったらどう表現するのか教えて貰えないかしら。


 あっ、一番底にあるかも。

 大事なものだからって、最初に入れたんだ。


「取り出すのに時間が掛かるかもしれません」


 私の困った表情で、眼鏡の巫女さんは察してくれたのかな。そんな感じがする。


「分かりました。結構です。失礼ながら素性調査は行なっておりますので、あなたが推薦されていることは間違いありません」



 眼鏡の人は、机に置いてある書類に目を移す。


「あら、あなた、魔法が使えるのね?」


「はいっ」


 口に出すと不遜に思われるかもしれないけど、大得意。

 火を付けたり、水を出したり、色々とお手伝いしてたのよ。


「どれだけ出来るのかは、具体的には書かれていませんね」


「そうですか。説明がお要りでしょうか?」


 眼鏡の人は少し書面を睨む。


「……この報告者も名前がないのね。報告も中途半端だし。ちょっと調査部の規律が緩んでいるようね。後でしっかり言っておかないと」


 眼鏡の巫女さんは私も睨む。

 ちょっと怖いんですけど。


「あなた、森には慣れているの?」


「はい。小さい頃から慣れ親しんでいます。森の豊かな恵みも聖竜様のお蔭です」


 本当は魔物の退治のお手伝いで森に入っていました。村の人手が足りなかったんです。

 って、これは言わない。ごめんなさい。

 巫女さんには必要のない事だもの。


「運動は出来る?」


「はい。足は村の子供の中でも速かったです」


 少し眼鏡の巫女さんが考える。

 緊張するわね。

 これで、私の巫女生活が決定するのね。


「どこでもいい?」


「……はい」


 出来るだけ、お淑やかなヤツをお願いします。洗練された都会の女性になりたいのです。



「そう、良かったわ。元気そうだし、あなたは『魔物駆除殲滅部』ね」


 はい?

 やたらと、逞しそうな部署名なんですけど。


 それに、隣のヤツがくすっと笑ったのは聞き逃さないし、見逃さない。

 ぶん殴りたい。

 あと、あなたの薬師処と変わってよ。お願いします。



 でも、今更、村に戻るのも気が退けるわ。少しは頑張らないと見送ってくれた皆に申し訳ない。


 そうよ。どこに配属されようが竜の巫女よ。そのステータスは魅力的なんだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ