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神殿に案内される

 お父さんに近くの乗り合い馬車が来る町まで送ってもらった後、3日掛けて竜の神殿のある大きな街にやって来た。


 白くて高い壁に囲まれているのが、遠くからでも分かった。ここが聖なる竜を崇める神殿のあるシャールの街。


 私の村なんか、入ってすぐにある広場よりも小さいかも。

 王様がいる別の街はもっと大きいんだって。

 世の中には知らない事がいっぱいある。

 

 すぐ傍から見る街を囲う壁は予想以上に迫力があって、私はマジマジと見ていた。

 村にあった粉挽き水車の建物よりもずっと高いんだ。

 よじ登ったら怒られるんだろうな。


 しばらく待っていると案内の方が私を神殿に連れていってくれた。




「早速ですが、皆さんの履歴を確認させて貰いますよ」


 目の前にいる、黒い服に身を包んだ人が言う。フレームのない眼鏡で、なんか厳しそうな雰囲気だね。


 机を挟んで、私も含めて三人が椅子に腰掛けていて、ちょっと皆、緊張気味かな。


 きっと、他の二人も今日から巫女になるのね。友達になれるといいのだけど。


 それにしても、神殿に着いて落ち着く間もなくで、こんな所でお話なんて。

 てっきり有名な聖竜の巨像を見学させて貰えると思ったのに、ガッカリよ。


 そもそもよ。


 話なんか、ゆっくり聞ける訳がない。私はお腹が空いてるの。馬車の中じゃ、簡単なご飯しか取れないんだもん。

 どうかお願い。このタイミングでお腹の虫が鳴きませんように。


 私が考えている間に、眼鏡の人がドンドン話を進めていく。

 『人の話をしっかり聞きなさい』って、お母さんの声がしそうだわ。



「あなた、シェラさんね? ……まぁ、伯爵家の方。竜の声は聞こえましたか?」


 私が部屋に入る前から椅子に座っていた女の子の履歴書を読んでいるようね。


「はい。聖竜様のお声は美しくて、いつも身震いをしてしまいそうです」


 ちょっと眼鏡の人が表情を柔らかくした。


「そうね、あなたは礼拝部に行ってもらいましょうか。最初はお作法を覚えるのが大変だけど、あなたの気品なら大丈夫よ」


「はい。分かりました。このシェラ、誠心誠意、聖竜様にお仕え致します」



 次に、眼鏡の人は私の隣に座っている女の子に目を遣る。

 さっきの女の子もそうだけど、この子もいい服着てるな。生地が艶々してる。

 私は旅服のままで、ここにいるんだけどなぁ。でも、普段着もこの服と代り映えしないか。


「あなたは、まぁ、マリールさん。いつもお父様にはお世話になっていますね」


「いえ、それほどでもありません」


 言葉では否定しても、顔はまんざらでもないよね。って、ダメダメ。

 村を出てからはお上品に生きようって誓ったんだから。友達をからかう感じに思っちゃいけないよね。


「マリールさん、あなたは薬師処ね。お父様からもあなたの才能を聞いていますよ」


「はい」


 眼鏡の人が紙に書き書きしてから私を見る。


 おっ、いよいよ私の番ね。

 聞いてなかったけど、皆の配属先を決定してるっぽいよね。

 楽しみ。私は何だってするわよ。竜の巫女になれるんだもん。

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