霖雨~後日談~
一週間後、やっと翡翠の熱も下がり、退治屋を再開できるようになっていた。
「おはよう、翡翠。体調はどう?」
「もう大丈夫だと何度も言っているだろう⋅⋅⋅」
ここのところ琥珀は毎朝体調が悪くないか聞いてくる。
⋅⋅⋅⋅⋅⋅過保護すぎる。
内心溜め息を吐きながら、ふと思い出したことがあった。
「⋅⋅⋅なあ、そういえばあの時刀が光らなかったか?」
『あの時』というのは、例の妖鬼との戦いのときである。
「ああ、そのことに関しては父さんから手紙を預かってるよ」
琥珀が箪笥の引き出しを開け、一通の手紙を取り出し、持って来る。
「退治屋の刀は特殊製だけど、翡翠のはさらに特殊製らしくてね。翡翠と刀に変化があったときにこの手紙を開けろって言われてたんだ」
手紙を開封し、琥珀と一緒に覗き込む。
文面には、
「やっと翡翠は素直になったか。その刀は特別製も特別製。打つときに翡翠の血を一滴入れてある。翡翠の強い感情、想いに反応するようにな。普段は本来の力を抑えられている。次の修業はそいつを使えるようになることだな。まあ、取り敢えず翡翠が素直になったってことで赤飯炊いとけ、琥珀」
と、あった。
琥珀はその文面を見て苦笑いをするしかない。
翡翠の方を見ると、拳を握りしめ、怒りで若干震えていた。
「そんな大事なことはさっさと言っておけ⋅⋅⋅!」
退治屋外の上空ではピィーと天青が滑空しながら鳴いた。
宝玉の退治屋、第一部終幕です。第二部に続きます。