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主役(ヒロイン)返上!

作者: 有喜志寿実
掲載日:2017/05/11

 ノリと勢いの作品です。深く考えずに読んでください。

 突然だが、私、メノリは乙女ゲームのヒロインらしい。


 きっと誰もが何を言っているのか理解できないだろう。安心して欲しい。私もだ。


 始まりは私の五歳の誕生日の時だ。とは言うものの、誕生日はあくまでも便宜上のものだ。私は生まれたと同時に、この田舎町にある唯一の教会に併設されている孤児院に捨てられていたらしい。そのため、私は拾われた日を便宜上の誕生日視しており、本当の誕生日を知らないのだ。閑話休題。

 ささやかな誕生日会を終えた後、気弱な私は孤児院の近くに住んでいるいじめっ子たちにいじめられていた。誕生日に最悪だ。しかもさらにそのいじめっ子が私を面白半分で突き飛ばし、その結果、私は近くのため池に落とされたのだ。いじめっ子は怖くなりその場から逃げ出した。逃げるくらいならやらなきゃいいのに。

 孤児が一人消えようがきっと誰も困らない。私は幼いながらに死を覚悟した、その時、いきなり走馬燈……ではなく、前世の記憶が頭の中に流れて来たのだ。


 ――あ、これ、異世界転生だ。


 私はすぐに理解した。ネット小説で使われ続けていて手あかがつきそうな『異世界転生』を私はしたのだと。

 前世でそういう小説を読み漁っていた為か、私は冷静にこの状況を受け入れた。しかし、忘れてはいけない。私は未だため池で溺れているのだ。

 泳ごうと思ったその時、突然誰かに体を支えられてそのまま浮き上がる。水面に顔が出ると私は大きく呼吸をし、盛大にむせた。私が状況を確認する前にため池から引き上げられた。


「大丈夫?」


 そう声をかけて来たのは私を助けてくれた男の子のようだ。金髪碧眼、天使のような愛らしい顔立ちをしている彼は、さぞやイケメンになるだろう。そこまで考え、ふと、私は既視感を覚える。


 ――この男の子、見たことあるぞ?


「ごめんなさい!僕もう行かなきゃ!!」


 そう言って男の子は走り去っていく。姿が見えなくなるまで見送った後、その後姿を見て私は思い出した。


「……そうだ!友ちゃんに見せてもらった乙女ゲームのプロローグ!!」


 前世での私の親友・友ちゃんは大の乙女ゲームオタクで、やりこんだソフトの本数は三桁を超えるというつわものだ。確か私が死んだのも、友ちゃんの付き添いで何かの乙女ゲームの限定コラボカフェに行った帰りに、トラックの荷物が私の上に落ちて来たのが原因だったはず。いや、別に友ちゃんが悪いわけではないが。

 私はそんな友ちゃんに付き合わされて、時々一緒にゲームを見ていた。私が生まれ変わったこの世界は、その中のどれかの世界だ。なんか見覚えがある。たぶん、さっきのは友ちゃんの持っていたゲームのオープニング後、ニューゲームを選ぶと毎回出てくるメインヒーローとの思い出だった……と思う。のだが、


「やべぇ、思い出せん。」


 そう、それしか思い出せない。題名を初めとして何のゲームなのかどんな内容なのか、間違っても攻略キャラやルートは思い出せない。なにしろ、友ちゃんから見せてもらったゲームの量は膨大だ。


「……詰んでないか?」


 こんなことになるなら、ある程度記憶がなくてもネット小説のテンプレ通りに沿って行けば何とかなる悪役令嬢に生まれ変わりたかった。生活も豪華だし。

 大体乙女ゲーム系のヒロインはどんな小説でもろくなことにならないパターンが多い。権力の後ろ盾も何もないヒロインがこの手のゲーム転生で生き残るためには、製作者の手によってここぞとばかりに詰め込まれたチートを駆使するか、『ゲームの修正力』なんて称されるご都合主義に頼るか、知略を張り巡らすかくらいしかない。間違っても誰かの攻略ルートに入ればそこでお終いだ。ハーレムルートなどもっての外である。だというのに私にはゲーム知識という名のアドバンテージはない。普通の異世界転生物と同じように生きるしかない。しかも転生あるあるな『知識チート』とやりたくても、下らない日常のことをぼんやりとしか思い出せず役に立つとは思えない。


 まさに『詰んだ』の一言に集約される。


「どうするよ、私?」


 私はただ細々と、ささやかな幸せをかみしめながら、心穏やかに生きたいだけなのに。


「……ん?」


 それでいいんじゃないか、私。下手にゲームにかかわろうとするからまずいのであって、関わらなければ私はただの(前世の記憶がぼんやりとある)小娘だ。


「そうだ、そうしよう!私はただいつものように『清く・正しく・美しく』をモットーに生きればいいだけじゃないか!」


 先ほどの男の子の格好から見て恐らくメインヒーローはこの世界にいる貴族、しかも上級貴族と見た。ならば彼はこの国の王都に暮らしているはずだ。だったら私は王都に行かなければいい。懸念材料としては『ゲームの強制力』が働くことだが、それでもとにかく王都行きを何が何でも回避し、万が一あったとしても派手そうなイケメンとは関わらないようにする。それで何とかなるはずだ。


「ヒロイン?……そんな物は知らん!何かのフラグ?……ああ、いい奴だったよ。」


 そう。たとえこのゲームが『ヒロインチート』だったとしても私には関係ないのだ。『乙女ゲーム』要素が息をしていないだと!?ならばとどめを刺して……言葉を変えよう、引導を渡してやる。


「主役返上じゃあぁぁーーーー!!」


 私は腹の底から声を出した。声を聴いて駆け付けてきたマザーをはじめとする大人たちに叱られた。






 こうしてメノリの主役返上計画が幕を上げる。しかしこのゲームのヒロインのメノリは『伝説の聖女の生まれ変わり』で『亡国の王族の生き残り』というヒロインチート要素が含まれており、色々と面倒なことになるのだが……生まれ変わった友人・友ちゃんに再開するまでそのことをメノリは知らない。





 読んでいただきありがとうございました。

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