勇者の武器は己の拳、俺の武器はセール品の剣
ネルウィの家を出ると何やら街が騒がしかった。どうやら誰かと誰かが
喧嘩しているようだ。ネルウィも気になったみたいなので見にいった。
「さあ勇者よ!武器を選べ!聖なる剣か己の拳か!」
「じゃあ私は己の拳を選ばさせてもらうぞ」
「ハッハー!馬鹿め!俺様は聖なる剣を選ばさせてもらう!」
勇者だから手加減して己の拳を選んだのだろうか。随分優しい勇者だ。
と思ったがそうじゃなかった。どうやら勇者は武闘家並みの戦闘力だった。
「セイ!ハッ!私に拳を選ばさせてくれるとは随分優しい奴だな!」
「ぐふっ…まさか拳でここまでできるとは…」
まさか拳でこんな事をできるなんてさすが勇者だ。剣を持てばもっと恐ろしい
事になるだろう。俺はちょっと勇者に聞いてみることにした。
「勇者さん勇者さん。今のすごいですね!」
「あはは!これぐらい普通だよ!なんせ私の愛用の武器は拳ですから」
「ふぁ!?」
まただ。また変な声を出してしまった。勇者が剣を使わないなんて考えられる
だろうか。勇者の愛用の武器が己の拳だなんてだれが考えるだろうか。ネルウィ
が言っていた誰も剣なんか使ってないというのはこういう事なのか。
「アキトー!あ、ユーシャじゃん!」
「お!ネルウィ殿!相変わらずお元気ですね」
「だって友達が出来たからね!」
そう言ってネルウィは肩を組んでくる。まだ何時間ぐらいしかたってないだろ。
ものすごい馴れ馴れしい感じだ。きっと友達とかそうゆう人がいなかったって言っていたからどうゆうものか分からないんだろう。もう完全に長年一緒だった仕事仲間って感じだ。まあ俺もぼっちだったからよく分からないけど。
「随分仲が良いんですね」
「えへへ」
あれ友達いないって言ったって事はこの勇者とは知り合いなだけなのか?。
「そうだユーシャ!剣とか売ってる店この辺にないかな?」
「そうですねぇ。剣なんか最近売ってませんからねぇ」
まじかよ。売ってないのかよ。
「あ!それなら私の腰に下げてる勇者の剣をあげましょうか?」
「え!?くれるの!?」
勇者の剣をいきなりもらえるかよ。そんな高価な物もらってもいいの
だろうか。
「でも勇者の剣はさすがにあげられないですね。これが無くなっちゃうと
私が勇者だって事を証明できなくなりますからね。」
「確かに…」
もはやこの人。勇者であるのかどうかすら怪しい。
「じゃあ一緒にさがしましょうか」
「そうね」
「わざわざすいません勇者さん」
「いえいえ大丈夫ですよ。人助けは勇者の仕事ですからね」
こういう所だけ勇者っぽい。
その後俺たち三人は剣を売っている店を探した。この王国はすごい広いらしい
からあまり知られていないお店もあるらしい。そして見つけたのが…。
「この剣とかどうでしょう」
「そ…その剣どこから持ってきたの?」
「店でセールしてたので買いましたよ」
「か…勝手に買ってどうすんのよ…」
「この剣は鋭さも重さも丈夫さも良い感じらしいですよ」
「あ…もうそれでいいです」
「いいのアキト?」
「これで頑張るよ!」
まあ剣が売ってだけ幸運と思えばいいのかもしれない。どうやらこの世界の剣は
希少価値でもなく、昔の遺物だと思われてるらしい。なんか悲しい。
「そうだ!私も良かったら一緒に旅しても良いですよ」
「じゃあユーシャも一緒に旅しよう!」
「勝手に進めるな!まあいいけど」
「あ…私の名前言ってませんでしたね。私はユーシャって言います。勇者で
ユーシャなんです。面白いですよね?」
「ハハハ…俺はアキトです。よろしく!」
ユーシャで勇者って…完全に名前がそうだったからなったとしか思えない。
剣が手に入ったところで俺たち三人はネルウィの家に帰った。
勇者のユーシャが仲間に
アキトの武器はセール品の剣に…