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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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九百五十六話 魔界沸騎士長ゼメタスとアドモス


「閣下ァ、魔界沸騎士長ゼメタス見参! 神霊を帯びた楔が結ぶ合同の魂魄が滾る!!」

「閣下ァァ、魔界沸騎士長アドモスが、今此処に! 神霊を帯びた楔が結ぶ合同の魂魄が滾りまするぞ!!!」


 ――すごっ、魔界沸騎士長たちの体から沸き立つ蒸気のような魔力が俺たちを突き抜けていく。

 髪の毛が持ち上がった。


 ゼメタスとアドモスの肋骨が少し蛇腹機動を起こしているし、格好良い。


「ンン、にゃ~~、にゃ、にゃ~、にゃごぉ~」


 早速、黒豹から黒猫の姿に戻っていた相棒が大反応。

 前立の飾りの鍬形を触手で優しく突いている。


「よう、ゼメタスとアドモス。立ってくれ」

「「――ハッ」」


 星屑のマントを羽織っている姿はまさに骸骨の魔界騎士。

 もう完全に魔鋼鉄の甲冑だな。

 

 漆黒色と銀色と金色に赤色の肉体を構成するパーツが渋い。

 後頭部とポールショルダーに首の流線形が良い。

 星屑のマントの内部の煌めきは小宇宙。


 鋼鉄都市に棲まうターミネーターにも見える。


「魔界セブドラに関して重要な報告があるんだが、それは後にする」

「「はいッ」」


 そう返事をしたゼメタスの左右の角が伸びた。

 新しい冑が槍烏賊っぽくなった。

 二人の片腕に持っている虹色っぽいフォースフィールド的な魔法力を得た骨の盾も輝きを強めたように見える。


「にゃ~?」


 相棒も驚いている。


「驚いた。その兜の変化は、魔界セブドラでの成長の証し?」

「はい! 閣下に頂いたアニメイテッド・ボーンズとプレインハニーの効果は想像を超えていますぞ。私たちは更に成長しております」

「新しい部下のことはもうご存じかと思いますが、我らも成長をしておりまする」

「上等戦士ゼアガンヌか。黒獄アニメイテッド・ボーンズと赤獄アニメイテッド・ボーンズとゼガの魔コインを滝壺に浸けて儀式を行ったとか」

「「はい!」」


 二人は魔力を体から噴出させる。

 ゼメタスの槍烏賊の部分の細かな孔からの魔力の噴出具合が面白い。


「アドモスも冑の変化は可能なのか?」

「可能ですぞ。しかし、頭部の横に出っ張りが増える分、余計な攻撃が当たりやすくなるため、攻め重視と普段の場合は、この鍬形の飾りが基本となります」


 アドモスがそう語ると、ゼメタスの頭部が元に戻った。


「へぇ」


 ゼメタスとアドモスの眼窩の奥に宿る橙色の炎の質が向上している。

 口の左右の歯牙の間から橙色の魔力の煙を放出させていた。


「さて、今の俺たちの状況を説明しとこう」

「「ハッ」」

「ここは【塔烈中立都市セナアプア】の上界に存在するフクロラウドの魔塔の四階の廊下だ。片側の壁には大きな部屋が並ぶ。で、俺たちの背後は見ての通り観客席が見える低い壁で、観客席が囲う中央が巨大な舞台で戦う会場。要するに、ここは闘技場の魔塔。主催者の名はフクロラウド・サセルエル。サセルエル夏終闘技祭の会場だ」

「サセルエル夏終闘技祭! そういえば【迷宮都市ペルネーテ】にも巨大な闘技場がありました!」

「閣下は、サセルエル夏終闘技祭に出場を?」

「そうだ。俺の胸元の短剣、〝輝けるサセルエル〟が出場資格。更に、この〝輝けるサセルエル〟を巡る戦いはもう始まっている。観客もそれは織り込み済みのようで、楽しんでいるようだ」

「なんと! 〝魔将軍選抜競技会〟や〝フルヴァド・ゴウン・ザーメリクス闘技会〟などのルールに近いのですな」


 そう語るゼメタス。

 頷きつつ、


「……前に、アドゥムブラリからも聞いたが、魔界セブドラにも色々な闘技大会があるんだな」

「このような巨大会場は見たことがありませぬが、はい!」

「それについては今度また聞こう。ここに呼び出した理由を説明する」

「「ハッ」」

「戦いの言葉に尽きるが……俺の闇ギルド【天凛の月】は色々と敵がいる。前々から話に出ていた【闇の八巨星】グループの一角と全面戦争となった」

「承知!」

「……その【闇の八巨星】は覚えておりまする。【八頭輝】よりも大きい存在。裏の支配層と呼ぶべき存在が【闇の八巨星】!」


 アドモスがそう発言。

 ゼメタスも、


「うむ! 【八頭輝】も、南マハハイム地方の各都市を縄張りに持つ大手の闇ギルドでしたが、裏には更に大きい規模の【闇の枢軸会議】があり、その中核が【闇の八巨星】だと!」


 そう発言しつつアドモスと頷き合う。

 

「そこの一角と全面戦争とは!! ふはは、強まった私の名剣・光魔黒骨清濁牙で――閣下に貢献できる!」

「おう! 我の名剣・光魔赤骨清濁牙で、敵を粉砕する!」

「――敵を塵に!」

「――敵を灰に!」

「――敵を魔素に!」


 名剣・黒骨濁と名剣・赤骨濁がパワーアップしていた。

 ゼメタスとアドモスは、名剣・光魔黒骨清濁牙と名剣・光魔赤骨清濁牙で叩き合う。


「お前たちの背後の大きな部屋の中にいる組織が【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】。闇ギルドの一つで【闇の八巨星】の一角。その【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】が俺たちの敵となった。部屋の中には、その組織の盟主キルアスヒがいるはずだ。ホアルというもう一人の盟主は、この塔烈中立都市セナアプアにはいないと聞いている。更に部屋には盟主キルアスヒが雇った専属護衛に、最高幹部が数十名いるだろう。地下には【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】の【八指】または【八本指】と呼ばれている暗殺者の暗光ヨバサがいるようだ。そいつは〝輝けるサセルエル〟持ちで、このサセルエル夏終闘技祭に出場予定らしい」

「承知! そこの部屋の内部を鎮圧するのですな」

「室内戦ならば、我らの出番……」


 ゼメタスとアドモスがジッと大きな部屋の出入り口に拡がる血飛沫と魔剣師の死体を見ている。

 そのまま魔界沸騎士長ゼメタスとアドモスは周囲を見回す。


「幅広い廊下……既に激しい戦闘が行われていた……では、ここには【闇の八巨星】のような闇ギルドが他にもいる?」

「いる。【天衣の御劔】は分かるだけで二人殺したから、そことも全面戦争は確実。【ラゼルフェン革命派】の幹部ギュララも倒したから、そことも全面戦争だろう」

「――承知、閣下の敵は我らの敵!!」

「――我らの敵!」

「そして、まずは、【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】を倒すのですな!」


 ゼメタスとアドモスは魔法の骨盾をぶつけ合いながら叫ぶ。

 魔界沸騎士長ゼメタスと魔界沸騎士長アドモスの厳つい声が響きまくっている。

 その度に、【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】の部屋の内部の魔素が少し動いていた。


 【白鯨の血長耳】のファスのような攻撃を警戒しているんだろうな。

 が、フクロラウドの魔塔の部屋の出入り口と壁はかなり頑丈だ。

 <神剣・三叉法具サラテン>が貫いた側は部屋がある壁ではない。

 

 すると、廊下の前後から、


「ご主人様!」

「シュウヤ様!」

「ん、そこが【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】の!」

「おう」


 ヴィーネたちと【剣団ガルオム】の方々が来た。 

続きは今週。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 武器も防具強化されたみたいですね。それだけ貴重なアイテムだったか。 「……その【闇の八巨星】は覚えておりまする。【八輝頭】よりも大きい存在。裏の支配層と呼ぶべき存在が【闇の八巨星】!」 …
[良い点] 最初はしゃべる骸骨騎士的だったのにシュウヤの手に渡ってからの成長がすごいw あれ?ゾルが使ってたときはしゃべりさえしてなかったっけ…? 読み返してみたら愛着とかまるで無さげな感じで(シータ…
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