九百二十話 黄金遊郭の屋上での戦い
2022/03/14 10:00 21:38 修正
2022/03/16 17:37 修正
2022/06/08 23:21 修正
――王氷墓葎所ではないな……。
ウサタカの背後から白炎の龍が床を這いながら前進し、ウサタカの足に纏わり付いていた。
ウサタカは白炎の龍を使役しているのか?
武王院の皆とウサタカとの戦いの話では、水蛇が登場していたが、水蛇以外にも新たに白炎の龍を使役するスキルを獲得していたようだ。
そのウサタカと背後の連中の動きと地形を把握しつつ――。
風槍流の半身の姿勢を取りながら横へ歩く。
黒仮面を被るウサタカは左足を前に出した半身の姿勢でじりじりと間合いを詰めてきた。
黒仮面から覗かせる双眸に炎が宿ったように双眸が煌めいた。
黒仮面も魔力を有した物か?
仮面の双眸の穴から覗かせる鋭い眼光は刃のようだ。
そのウサタカの黒色の瞳は、凄まじい魔力を内包している。
そして、双眸の真上には小さい半透明の魔法陣が度々出現していた。
魔眼から感じるプレッシャ-は相当なもんだ。
先ほどは視界を揺らされた。
魔眼の能力の一環だろう。
どんな効果を相手に与えるんだろうか。
そして<無影歩>を察知できる魔眼能力。
このウサタカは、白の貴婦人ゼレナードの隠蔽看破能力を超える能力を持つ強者中の強者だ。
そのウサタカことヒタゾウに、
「……槍使いの噂がどんなものかは知らない。俺の名はシュウヤ。で、お前はウサタカことヒタゾウだな?」
質問を返す。
ウサタカは持っている槍を一瞬震わせると、
「……あ? 今はヒタゾウが名だ……」
怒ったか?
ジリジリと間合いを詰めてくる。
が、強者らしい後の先を意識した間合いの取り方だ。
「ヒタゾウ? ウサタカで良いだろう。それより、お前の背後にいる巨大な百足を操る白王院の制服を着たお爺さんだが、ゲンショウ師叔なのか?」
「師叔は俺が殺した」
殺しただと……。
「……お前は白王院に世話になったのではないのか?」
「お前は俺の何を知ってるんだ?」
怒りを滲ませたウサタカは横に移動。
その背後、ウサタカの肩口の上を通って飛来してきた湾曲した刃を――。
無名無礼の魔槍の柄で弾きつつ俺も横に移動――。
ウサタカの後方から湾曲した刃を<投擲>してきた仙武人が前傾姿勢で寄ってくる。
その左右からも大太刀使いと斧使いが近付いてきた。
三人の攻撃に合わせたウサタカは重心を下げつつ、仲間たちに、
「ウルキの攻撃か。サブロウタとパンガッテも構わない。この槍使いを先に仕留めろ」
ウサタカは指示を出すと、己の<黒呪強瞑>を強めたのか?
丹田の位置の衣装防具から外へ魔力が滲み出ていた。
「――了解」
「玄智宝珠札を上乗せだからな――」
大太刀使いと斧使いの二人がそう答えつつ、俺に寄ってくる。
ウサタカは、背中と肩から怪し気なマントのような魔力を浮き上がらせる。更に、足下に漂う白炎の龍を右の掌に集約させながら、魔力を煌びやかな神槍へと伝搬させていた。
三人の動きに合わせて後退。
――<血道第一・開門>を意識。
――<血魔力>を全身から放出。
それらの血で血の分身を無数に創りつつ――。
肩の竜頭装甲を意識。
「血の幻影使いか?」
「魔族か!」
「――吸血鬼の類いだろう」
三人はそれぞれ<魔闘術>系統のスキルを発動。
俺は斜め左後方から斜め左前方へとジグザグに移動。
三人の攻撃を受けず――歩幅を微妙に変化させながらバックステップ。
同時に鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼を全身に装着した。
刹那、<水月血闘法・水仙>を発動。
「こなくそ――<円刃異剣>」
血の分身が更に増えたのを見て、湾曲した刃を持つ男が叫ぶ。
宙空ごと斬るような魔刃が幾つも飛来――。
湾曲した刃を扱う男の名はウルキか。
足の魔力を強めて<戦神グンダルンの昂揚>を発動。
右手が握る無名無礼の魔槍を斜め前方に掲げた。
ウルキの中距離攻撃に合わせた二人の大太刀と斧刃の攻撃を――。
掲げた無名無礼の魔槍で受けながら爪先回転を行う――。
ギリギリの間合いでウルキの湾曲した刃を避けた。
その横回転機動のまま右手首を返す――。
縦回転の無名無礼の魔槍の穂先と柄で受けていた大太刀と斧刃を下方へ受け流し――。
速やかに<龍豪閃>の反撃を実行。
大太刀と斧の刃を下に往なされていた二人だったが、無名無礼の魔槍の<龍豪閃>の機動に合わせた。
得物を持つ腕を胸元に引き、それぞれ、刃と柄で<龍豪閃>の防御を行う。
無名無礼の魔槍を押すように柄を突き出す。
二人の武器と腕を撫で斬るように無名無礼の魔槍を回し引き斬ろうとしたが、大太刀と斧刃に防がれる。
刃と刃、刃と柄が衝突する度に無名無礼の魔槍が震動し、激しい火花が連続的に散って熱さを覚えた。
同時に硬質音が連続的に響く。
鼓膜ごと何度も脳幹を揺らされる感覚となった。
が、その二人の防御機動は予測済み――。
ウルキの湾曲した刃の攻撃を凝視しつつ――。
二人の鍔迫り合いを制するように無名無礼の魔槍を強引に二人に押し付けながら、その無名無礼を引き上げ、右斜め前方から飛来した湾曲した刃を石突で弾くことに成功。続けざま――体から<血魔力>を放出させ二人に血を浴びせた。
大太刀と斧を扱う二人が斜め後方に後退するのを把握、素早く血を浴びているウルキに向け前進。ウルキは、
「うぐあ――目がぁ」
<血魔力>の血でウルキの視界を奪っている。
無名無礼の魔槍の穂先を、そのウルキの胸元に当てながら微かに跳躍――。
体を横に捻りながらの<悪式・突鈍膝>を実行。
ウルキの腹に膝の打撃を喰らわせた。ウルキは、くの字の体勢となった。
ゼロコンマ数秒も経たせず――。
血を纏う無名無礼の魔槍で<血龍仙閃>を発動――。
薙ぐ無名無礼の魔槍が、<悪式・突鈍膝>を腹に喰らっているウルキの首と顎を捕らえ斬った。同時に半身の側転を左に行う――。
近付いていた斧刃を側転で避けた。
直後、地面に片手を突いて宙空へと身を捻りつつ――。
無名無礼の魔槍の穂先を、その斧刃を寄越した相手に向けながらジャンプ<刺突>の攻撃に近い<龍異仙穿>を実行――。
龍異仙流技術系統の上位突きの無名無礼の魔槍が斧を弾く。
そのまま無名無礼の魔槍の<刺突>機動の<龍異仙穿>が斧使いの頭部ごと胸元を穿った。
右の魔素と背後のウサタカの魔素は把握済み。
俺は右と背後に向けて<超能力精神>を放つ。
「ぐあぁ」
「ぬぉ」
衝撃波を二人に喰らわせ間合いを保ちながら反転――。
続きは今週を予定。
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最新刊の槍猫18巻が2022/06/17日に発売予定。
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