表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
槍使いと、黒猫。  作者: 健康


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

906/2031

九百五話 魔将オオクワ、配下になる

2022/02/07 18:25 血魔力とデボンチッチの部分ちょい修正

 

 魔将オオクワと副官はハモる。

 その魔将オオクワは、俺の体格を見て、


「……シュウヤは魔族?」

「半分正解だ」

「半分……どういうことだ」


 副官の仙妖魔の女性は俺を睨み続けていた。

 網タイツとヒールが似合う女王様って印象だ。

 美人なお姉さんタイプの副官さんだ。

 丁寧に、


「俺の種族は光側でもある。種族は光魔ルシヴァル。で、得物はこのように槍使いだ――」


 無名無礼の魔槍を右手に出現させながら――。

 分かりやすく<血魔力>を体から放出させた。

 黒装束の内から徐々に血が滲み出る。

 と、竜頭金属甲(ハルホンク)が気を利かせたか――黒装束の表層と内側にミクロの層と穴でも空けたのか、ポポポッボボッと変わった音を響かせながら<血魔力>が宙に放出されていく。


 更にそれらの<血魔力>は注連縄を腰に巻く子精霊(デボンチッチ)の軌跡を模る?

 消えていた腰に巻く子精霊(デボンチッチ)が<血魔力>を吸い取って体を現している?


 それとも、目に見えない注連縄を腰に巻く子精霊(デボンチッチ)の位置を把握しようと、癖でいつも使う掌握察を想念として感じ得た俺の<血魔力>が、独自の血の察知術のようなモノへと進化しようとしている?


 掌握察も<導魔術>系統に変わりはない。

 アキレス師匠は魔技は使えば使うほど未知なる成長を果たすと語っていた。


 <血魔力>もそれは同じはず。

 血の幻影にも見えた腰に巻く子精霊(デボンチッチ)は天井に吸い込まれるように消える。


「血? 不思議な何かが見えた……そして、血は伝送陣が使える証拠の吸血鬼(ヴァンパイア)系能力の<血魔力>か。魔族だと分かるが……消えた妖精のような能力を発動させたことが光側を意味するんだろうか。そして、<血魔力>を扱う槍使いなら……話が合う」

「あ、カソビの街から帰還した仲間たちは口を揃えて……」

「あぁ」


 魔将オオクワと副官が、そう会話しては頷き合う。

 やや遅れて神妙な表情を浮かべていた。


 カソビの街にもここの伝送陣は通じていたんだったな。


「カソビの街から帰還した者たちから、アオモギの部隊がどうなったか、その顛末を聞いていたのなら話が早い」

「部隊は全滅。アオモギは行方不明」

「はい、黒呪咒剣仙譜は風仙衆に奪われたと……」


 魔将オオクワと副官がそう告げる。


 頷いてから、無名無礼の魔槍の石突で床を突いて、


「――そのアオモギをわざと泳がし、鬼羅仙洞窟にまで案内させたんだ。そうして、魔界王子ライランの眷属アドオミと複数の鬼魔人、巨大神像を倒した――」


 無名無礼の魔槍を回転させつつ穂先を斜め上に伸ばした。


「……カべタとキソバドの話と一致する」

「その二人はカソビの街にいた鬼魔人の名だな?」

「……そうだ」


 魔将オオクワは無名無礼の魔槍を凝視中。

 竜頭金属甲(ハルホンク)を意識してポケットの中に手を入れた。『ハルホンク、冥々ノ享禄を出すぞ』と念話で指示しながら、無名無礼の魔槍を消した。


 そして、


「アドオミを討伐した証拠が、この冥々ノ享禄だ――」


 冥々ノ享禄を出す。


「あぁ、そ、それは……」

「アドオミが持っていた……」

「ほ、本当にシュウヤ、シュウヤさんが……」

「おう」


 頷きつつ冥々ノ享禄を仕舞う。


「信じてくれたかな」

「信じたが……光側という意味が……」

「仙武人側、玄智の森を守る武仙砦の……隊長クラスでもある?」

「<血魔力>を見ただろう。伝送陣を用いた俺だぞ?」

「あ、すみません。そうですよね……」

「武仙砦とは関係ないが、俺は武王院の八部衆でもある。更に、ザンクワという名の鬼魔人を助けた」

「は、八部衆……」

「ザンクワ……アドオミと鬼羅仙の幹部の一人にその名があった……」

「そうだ。ザンクワも魔界王子ライランの洗脳から解放されて、俺の仲間たちと一緒だ。鬼羅仙洞窟の前には、洗脳から解放されている鬼魔人の集団もいる。そいつらとは俺が交渉する予定だ」

「え……交渉……」

「そ、それは本当なのですね、シュウヤ殿!」


 今度はシュウヤ、殿か……。


「おう。俺は武王院の八部衆だが、鬼魔人に恨みはない。戦いを望まないなら戦わないさ」

「な、なんという仙武人……いや、種族なのだ……」

「はい……普通、仙武人は鬼魔人を見たら抹殺対象として……」

「仙武人にも鬼魔人と話をしようとする存在はいると思うが?」

「はい。カソビの街にはいますが、武仙砦の仙剣者と仙槍者の軍隊は交渉なんてしない。問答無用の殺し合い。罠を仕掛け罠に掛けられる死闘の相手ですからね」

「そっか。で、俺のことはある程度理解したかな。外の様子が激しいが……」

「あ、はい……魔界王子ライランの勢力が押し寄せて……」

「ここで武仙砦の人員が撃って出たら鬼魔人は一網打尽だな?」


 魔将オオクワと副官は頷く。


「「……」」


 暫し沈黙。

 副官は頷いてから、魔将オオクワの耳元に小声で「この槍使いは我らを救おうと陰で動いているのかも知れません。同時に、それは見せかけだけで、仙武人側の偵察で罠かもしれませんが……」と告げていた。


 魔将オオクワは、


「仙武人側から見たら、我らも鬼魔人傷場から現れる魔界王子ライランの勢力と同じだ。敵同士で争いあって疲弊したところの漁夫の利を狙うはず。そんな中、単独で鬼魔砦に乗り込み話し合いを行う存在は……このシュウヤ殿以外にはいないだろう」

「はい……」

「……鬼羅仙洞窟の鬼魔人たちの身柄もシュウヤ殿次第」

「そうですね。魔界王子ライランの大勢力が迫る中、友軍を増やさねば、私たちに勝ち目はありません」

「あぁ、カソビの街のダンパンも、アドオミという後ろ楯が消えたとハッキリすれば敵となる。魔族限定なのだから伝送陣も消されるだろう。我らに残された道は……」

「……はい。武仙砦とも交渉が可能なシュウヤ様が我らの希望で、鍵……」


 様に繰り上がった。

 ま、そんなことは指摘しない。


「鍵か……正直な心情を話すが、魔界と神界の争いには興味はない。今は、玄智の森と鬼魔人のザンクワを救うために動いている。最初は成長目的だったがな」

「な、なんと……玄智の森と、魔族一個人の鬼魔人ザンクワのためだけに……」


 魔将オオクワはその場で床に膝を突いた。


「シュウヤ殿――我を部下にしてください……」

「な……」

「え?」


 副官の仙妖魔の美人さんも驚いている。

 そして、


「あ、私もお願いします。名はディエ。種族は仙妖魔です」


 と仙妖魔の副官のディエも頭を垂れてきた。


「是非とも鬼魔砦に加勢を……!」

「はい、私たちの命運はシュウヤ様に懸かっている……」

「部下か……短い間だけだが、それでも良いか?」

「短い間……」

「私は構いません、一人の鬼魔人のために動くシュウヤ様なら信じられる……従います」

「ディエ……」

「オオクワ様、すみません……」

「いや、皆の命が懸かっているのだ……優しさと強さを併せ持つシュウヤ殿に信服するのは当然……」

「はい」

「……鬼魔人のすべてを救えるかは分からないぞ?」

「すべてを救うつもりで動いていたのですか?」

「あぁ、当然だろう。失敗はするかも知れないが、後悔するよりはマシ。挑戦する」

「それは頼もしい言葉だ」

「魔族のために……武王院の八部衆がそこまで……」

「あ、まだ仲間たちに言っていないが……ま、玄智の森を救うためだから、なんとかなるかな……」

「武王院の学院長は……たしかホウシン……強者と聞いていますが」

「そうだ。師匠の一人。ホウシン師匠なら鬼魔人の現状を理解してくれるはずだ」

「――ほ、本当ですか!」

「っと、期待させたなら謝るが、話してみないとなんとも」

「あ、はい……」


 しかし、魔将オオクワが配下になるとは思わなかった。


続きは今週。

HJノベルス様から最新刊「槍使いと、黒猫。18」発売中。

コミックファイア様からコミック「槍使いと、黒猫。」1~3巻発売中。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] オオクワを配下にって事は、実質砦全体配下入りですね。後はライランの手勢をどうにかしてから、ホウシンに話して休戦に持っていくかか。 (今思い付きましたが、ザンクワやオオクワ等魔界にもう拠点無い…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ