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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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863/2030

八百六十二話 フィンクルに、エンビヤとの修業

2021/10/24 12:38 修正

2021/10/24 17:11 18:34 21:08 21:51 修正及び<仙魔・黄泉陣>など追加、色々と追加。またちょい追加。最後追加

 エンビヤの温もりを感じながら共に走る。

 エンビヤからイイ匂いが漂った。

 俺たちの左右には木造の学び舎がある。


 学び舎は洒落た和風の学び舎で雰囲気満載だ。

 木窓の障子は月の形で硝子と紙が用いられていた。


 紙は分かるが硝子の障子か。

 随分と未来的。

 あ、魔道具か。

 湿気と臭いを取り換気を促す魔道具?


 その月の形の枠をした障子から、学び舎の校舎としての奥に続く廊下を覗かせる。

 廊下は檜と似た木材かな。

 並んでいる障子の穴から覗かせていた廊下は壁に変化。


 壁と壁の間から教室の内部が覗く。 

 走っているから、チラチラと見える範囲だったが――。

 間取りは三十人ぐらいが入れそうな教室かな。


 ――机と椅子の並び方は俺の知る学校と同じ。


 刹那、小さい魔素を感知。

 走りながら視線を上げて、


「――エンビヤ、あの魔素は」

「あ、フィンクルです」

「フィンクル――」


 欄間には猫のような動物が見え隠れ。

 フィンクルって名なんだ。


 四肢を持つ小動物で、可愛い。

 モフモフの毛並み。


 猫の姿に近い。

 あれ、少し違う。柔らかそうな毛並みの間には竜の鱗のような小さい岩のような鎧が付いていた。


 ――不思議だな。


「ふふ――」

「――ん?」

「いえ、シュウヤが小動物が好きだとは」

「あぁ、俺は――」


 欄間の上を俺たちの速度に合わせてくる速い小動物の動きは気になる――。


 が、加速するエンビヤに合わせた。

 俺たちは学び舎の間にある土の道を抜けた。


 花壇を抜けて手を離したエンビヤは先に出た。


 少し振り返る。


 欄間から軒下の端に映ったフィンクルはスフィンクス座りとなって俺たちの様子を見ている。


 フィンクルはつぶらな瞳で可愛い。


「シュウヤ、こっちですよ」

「おう」


 ――あまり見てばかりいられない。


 走ると左側の玄智山の自然が出迎えた。

 右側はまだ色々と施設がある。

 武王院の魔塔と呼ぶべきような高い建物。

 その向こう側には校庭のような場所と先に大きい門が見えた。

 門の出入り口には門番の院生がいる。


 ま、当然か。

 魔界セブドラの傷場と比較的近いのが玄智の森で玄智山。

 そんな玄智の森に存在する五つの仙境の一つが武王院。


 普通はあの大きな門から入るんだよな。


 入学させてくれたホウシンさんとエンビヤに感謝しよう。


 そして、この武王院は玄智山の麓だと思ったが――。

 玄智山は結構標高が高いらしい。


 校庭の向こうの門の先は下り道。

 遠近感が狂う。階段が小さく見える。

 武仙ノ奥座院は玄智山の頂上付近にあるからな。


 香川県琴平町の金刀比羅宮を想起した。


 にほんの四国に存在する有名な寺のことに思いを馳せながらエンビヤと共に走るのは良い気分だ。


 しかし、前方に違和感が。

 魔素の反応?


「シュウヤ、大丈夫だと思いますが、もう修業は始まっていますよ――」

「え? そうなのか」

「はい――」


 エンビヤは走りながら――。

 二本の短槍を槍帯から引き抜く。


 ――宝魔槍・異風。

 ――宝魔槍・異戦。


 名前が似ているが少しだけ色が異なる短槍だ。


 すると、孟宗竹の間から飛び出た魔素の反応――。

 石幢から迸る魔矢――。

 ローブとローブの間に聳える木人が凄まじい速度で飛来――。


 ――ジャベリンのような先が尖る太い丸太も飛来。

 ――自動大型弩砲台まである。


 それらの攻撃を避けつつ――。

 無名無礼の魔槍を召喚――。

 木人の顔が変だ――。

 無名無礼の魔槍を持つ右腕を右斜めに伸ばす。

 <刺突>――。

 木人の頭部を無名無礼の魔槍の穂先が貫いた。

 そして、無名無礼の魔槍を持つ右腕を引きつつ――。

 左手の掌で無名無礼の魔槍の柄を押し出した。

 左側へと無名無礼の魔槍の柄頭が回る。

 蜻蛉切と似た穂先に引っ掛かっていた木人を後方に吹き飛ばした。


 続いて――。

 右斜め前から飛来する丸太を視認。

 無名無礼の魔槍の石突で、その丸太を突いて裂く。

 

 裂けた丸太の一部を膝頭で砕きつつ前進――。


 エンビヤは丸太を蹴って宙を跳ぶ。

 二振りの短槍を振るい×印を宙に描く。

 魔矢を切断しつつ右斜めに前転しては孟宗竹を蹴って左斜めへと跳ぶ。

 動きが非常に優秀な槍使いだと分かる。

 そして、<魔闘術>系統の<闘気玄装>の使い方は学べる。

 が、あくまでも微細な魔力配分だ。<魔闘術>系統とそう変わらない印象。


 根本の<闘気玄装>の魔力操作の作用を学ばないとダメだろう。


 そう考えつつ、丸太を左手で掴んで<投擲>――。

 遠くの木人を丸太で破壊――。


 可憐なエンビヤの背中を追う。


 左の傾斜した山の道を進む。

 横に飛び出た刃が付いた孟宗竹を無名無礼の魔槍で受けて、左回転。

 斜め下から飛来してきた樹槍を無名無礼の魔槍の穂先近くの柄で叩き払って前進――。


 孟宗竹以外にも樹木が多い。

 赤く色づき始めた美しい林の景観と訓練を楽しみながら、足下に多い石畳を蹴って走った。


 エンビヤは二本の短槍を仕舞う。

 背中側に揺れた短槍を納めた槍帯の模様は綺麗だ。


 清流が見えてきた。


 風にそよぐ樹と細い竹。

 孟宗竹以外にも柳のような葉を持つ細い竹もあった。


 風に靡く美しい姿はエンビヤを思わせる。

 そのエンビヤが、川の手前で止まる。


「ふふ、シュウヤ、川の石を渡ります」

「了解。自然が多いが、ここも武王院?」

「はい、玄智山。小川の間にある石を跳躍します」


 自然を感じさせる平たい石が並ぶ道だ。


 少し左上に傾斜している川がある道。

 玄智山へと向かっているということだろう。


 エンビヤと一緒に地面と川の間に点在する石の道を前進。

 何気にエンビヤと歩法のリズム――。


 ――互いの息と足の動きが合っていることに気付く。

 ――エンビヤと俺の相性はいいかも知れない。


 ま、彼女は二槍流だ。

 俺も基本は風槍流を主軸にしつつも我流の二槍流はある程度身に着けている。


 滝のほう? 奥地へと誘導するように川と岩の瓦礫に立つ石幢が左右に均等に並ぶ。


 上部の縁には長方形の紙の札が貼られてある。

 武王院のマークが記されてあるようだ。

 左右に並ぶ石幢から音波が響く。


 弦の音、振動波? 圧迫感が強まった。


 川面が上下に振動し跳ねていた――。

 

 電磁波を喰らったように魚も川面から飛び出た。

 

 エンビヤは自身の体に纏う魔力を強めると前進。

 ――弦の音が連続的に響く。

 

 これはある種の、鳴弦の儀のようなものか――。

 ――この弦の音と連動している。


 石幢の外面の紫と赤の炎で燃えた魔力が色々な姿を模って模様を変化させていた。


 不思議な訓練だな――。


 精神を削ってくるような不思議な音を響かせてくる左右の石幢は神秘的。


 神社の鳥居を潜っているようだ。神秘ゾーンに誘う。


『トワイライト・ゾーン』

『アウター・リミッツ』


 などの番組を思い出す――。


 更に、その川の左右に並び立つ石幢の群れを見ていると――。

 外面は異なるが六幻秘夢ノ石幢のアイテムを思い出した。

 独鈷魔槍で面を突けば封印が解けるから、独鈷魔槍を――この夢の世界に持ってきたかったが――。


 仕方ない。

 そんな鳥居的に左右に並ぶ石幢の間に点在する石を渡って前進。


 足下は小川で滑りやすい――。

 が、エンビヤは気にしていない。

 魔力を込めた爪先でスムーズに石を蹴って前進を続けている。


 川の縁際に生えた草と川面から覗かせる藻の動きは美しい――。

 川魚の動きから生命の息吹を感じる。

 

 が、周囲の石幢から放たれ続けてくる魔力の振動波のようなモノは強烈。

 圧迫感からして、これは厳しい修業だと分かる。


 これが、仙境の武王院の修業の一つか。

 しかし、マイクロ波の弾丸を喰らっている印象だ。


 俺の知る地球にも超音波ドップラーレーダーや対ドローン兵器は存在した。


 更に、勝手に反社会性ありと決めつけた存在が、国民に対して秘密裏に電磁波などで虐待を行う連中はたしかに存在していた。それらが集団ストーカーなど、個人的なストーカーと結びついていたことは事実。

 

 ま、そんな卑怯な連中を思い出しても仕方ない――。

 ――玄智山と玄智の森の自然を見よう――。

 ゴルディーバの里で過ごしてきた光景を思い出す。


 エンビヤの歩みが遅くなった。


「さすがシュウヤ。霊能印・真念波を余裕で突破ですね」

「今の石幢の間の訓練か」

「はい。<仙魔術>系統の修業です。霊能印・真念波の魔力攻撃を浴び続けたら<仙魔・黄泉陣>を獲得できるとされています――」

「へぇ」

「先に向かいますよ」


 エンビヤが走る先に大きな楼門が見えた。

 エンビヤは、その手前で止まった。


 すると、


「あっ、師姐、修業? 大添水を浴びに? 守護仙湯の修業?」


 と、声が響く。

 大きな楼門の二階からだ。


 見張りの院生さんかな。


 エンビヤは見上げながら前を歩く。

 エンビヤは左手で『こっちです』と指示を寄越すように左腕を左右に揺らす。

 指示通り、そのエンビヤに寄った。

 エンビヤは、大きな二階にいる女性の院生に、


「そう、修業よ。大添水の修業を行うかはまだ未定」

「はい。隣の男性は……」


 二階の女性に会釈。

 エンビヤは、俺を見て


「武魂棍の儀を済ませた、新入生です」

「名はシュウヤです。エンビヤとイチャイチャ、いや、修業を行いたいと思います」

「イチャイチャ!?」

「ふふ、シュウヤ……」


 上の女性院生は驚いて、俺を見ている。

 エンビヤは笑っていた。

 そのエンビヤに笑みを送りつつ、門の向こう側を凝視。


 そこは紫色の濃霧に包まれている。


「……あの真面目な師姐が……男と……」

「マヤ。戯れ言は止して。シュウヤ、中に入るので少しお待ちを」

「了解、ここも武王院の施設なんだと思うが……」

「はい。正確には武仙ノ奥座院と鳳書仙院の一施設。風情が豊かな地ですが……八部衆や特別に許された院生が入れる秘密の修業蝟集部屋で、修業蝟集道場なんです」


 その大きな門の外側からは孟宗竹と玄智の森の樹木しか見えないが、門の間からは紫色の濃霧が見えていた。


 何かの幻術か。

 エンビヤは少し呼吸を整える。

 と右腕を門に向けて翳した。

 エンビヤの横顔に見える顎のEラインと耳は可愛い。

 左耳に近い髪の房の紐もいい。右手から魔力を発した。


 腕輪からも魔力が迸る。すると、濃霧の幻術は解かれた。

 門の先に拡がっていた濃霧が晴れる。


 すると、


「――デッボンチィ、デッボンチッチィチッチィ」

「――デッボンチィ、デッボンチッチィチッチィ」


 この不思議な歌と音色は……。

続きは来週。

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コミックファイア様からコミック「槍使いと、黒猫。」1~2巻発売中。

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― 新着の感想 ―
[一言] 秘密の修行施設か。規模や修行難度等、一般生徒達と実力差が有るから修行する場所は分けられてるか。そういう施設に最初から入れるのはラッキーですね。
[一言] 今回の描写をみるかぎり、エンビヤはかなり強い感じなんですけど、 それでもあの集団に負けたのか。 あいつら結構強かったんだなぁ。 シュウヤにサクサク殺されてたイメージだったけど。
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