七百四十三話 鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼
ついに13巻が発売!
2021/01/24 11:49 クリームパン的な肉球パンチを追加。
2021/01/24 12:16 修正
2021/01/24 16:02 修正
2021/01/24 16:09 修正
2021/01/27 20:42 修正
2021/01/27 20:54 台詞関係修正
「ングゥィィ!」
「ハルホンク、魔法の鎧は後で実験予定だから、このままにするぞ」
「ワカッタ。ソノカワリ、主ノ、マリョク、ホシイ」
頷いてから右肩の肩の竜頭装甲へと直に魔力を送る。
魔竜王バルドークの蒼眼がぐるぐると回って瞼が閉じては剥いた。
「ングゥィィ! 主ノ、マリョク、美味シイ、ゾォイ!」
「おう」
「にゃ~」
黒猫が鳴きながら横にくるっと回ってから、小さい頭部を上げた。自慢気な顔つき。腹巻き的な魔法の鎧を見せるつもりのようだ。
肩の竜頭装甲が魔竜王の蒼眼をギョロリと動かして相棒を見る。
「シンジュー、ピカピカ、マリョク、フエタ! 美味シソウ!」
「にゃお~」
黒猫はハルホンクの声に応えてから、横歩きしつつお尻と尻尾を見せる。ハルホンクに向けて尻尾からオレンジ色の魔力を出す。そのオレンジ色の魔力は燕の形になると消えた。
「ンン」
尻尾を立てて菊門から屁でもするようなポージングだ。相棒は俺の新鎧の真似をしている? 魔塔エセルハードを巡る戦いでは大きな黒豹の姿に合う魔法の鎧を装着していた。相棒が戦った相手は蟲使いと巨大ムカデ。
黒毛の先から赫く燕を出しつつ戦った場面は見損じたが、エヴァとレベッカは見ていた。
「ンン――」
相棒は喉声を響かせつつ飛翔している燕の魔力を追った。
燕に肉球パンチを当てて消している。クリームパン的な肉球を晒すパンチだ。その面白い機動を見ていると、キサラが鼻歌を奏でる。センスのいい即興の音色だ、ふとネーブ村の出来事を思い出した。音守の司のゲッセリンク。狸獣人とドワーフが合わさった種族の方。二体に分裂しては、二本のチェロのような楽器を奏でていた。素晴らしい野太い歌声も良かった。キサラの<魔謳>のハスキーボイスとはまた違うから、印象的だった。ヘルメとキサラはダンスして……と、音守の司で狸獣人のゲッセリンクのほうが凄いか。ゲッセリンクは金玉を膨らませては……金玉袋に乗って、足で金玉袋を叩いて音を出していた。あれは和太鼓的な重低音だった。ベース音的でもあるか。そして、二つのチェロのエンドピンは巨大エイの尾のように動いて、チェロの弦を叩くように弾いていた。更に膨らんだ金玉袋を、そのエンドピンで刺しては、金玉袋を萎ませる音も音楽に利用していたのは凄かった。
喩えようがないが、重厚なオペラサラウンドとリズムロックを合わせたようなスペクタクルな演奏だったなぁ。たぶん……あの演奏は他では味わえないだろう。そうこうして、エヴァたちに知らせてから、神殿の地下にある魔封層に挑んだんだ。相棒が魔法の鎧を身に纏う切っ掛けとなった神像は、その魔封層でエヴァたちが見つけてくれた。古びた槍を持つ神像は戦神ラマドシュラー様で、戦巫女イシュランの魂も入っていた。俺は戦巫女イシュランと戦神ラマドシュラー様と精神を合わせて特別な幻想修業を行えた。その幻想修業の最中に戦神ラマドシュラー様は〝神降ろし〟の言葉を使いながら俺を褒めてくれた。
<攻燕赫穿>を獲得すると同時に幻想修業を無事に終えた俺は正式に聖槍ラマドシュラーの使い手として認められた。
しかし、黒猫の燕の魔力の詳細は分からない。
黒猫がそれを獲得していることは、魔塔エセルハードで初めて知った。
それらしい兆しもなかった。あ、セナアプアに戻る際に、シャウトで雲を吹き飛ばしていたな……成長の兆しはあった訳か。神界セウロスの戦神系の恩寵は、俺を通す形で神獣ロロディーヌが色濃く受け継いでいたってことだろう。もしかして、<戦神ノ武功>は相棒が獲得? 違うか……戦巫女イシュランと戦神ラマドシュラー様は、
『『その意気だ! しかし、我の武功とわたしの体術をシュウヤが体得できるかは、分からぬぞ』』
と思念を寄越していた。<戦神ノ武功>が体術と武功だとすると……。
やはり、相棒の燕の魔法の鎧は、<戦神ノ武功>とは違う、他の何かということになる。燕の見た目からして、やはり、俺のスキル<攻燕赫穿>と関係する力かな。俺の血肉と魂から誕生した相棒だ。
その半身の相棒も<攻燕赫穿>を獲得して、神獣の心のまま自己昇華した結果が燕の魔力として体現された? だとしたら、やはり神獣の名は伊達じゃない。
「相棒! お前はやはり凄い! 戦神ラマドシュラー様と戦巫女イシュランの効果だな」
「にゃおぉ~」
黒猫は『そうだにゃ~』と言った感じで、四肢から魔力を放出――元気のいい走りっぷりで奥へと向かう。
尻尾を立てながら歩いていた。太股の毛と菊門を晒している。
はは、変わらない。うんちさんは、お尻にこびりついていないから良かった。すると、後脚の飛節からオレンジ色の魔力が出た。そのオレンジ色の魔力は燕を模りつつ大気の中へと儚く消える。燕のひな鳥が異界に旅立つように見えた。続けて、太股と尻の毛先からオレンジ色の魔力が迸るや、尻尾の毛先からもオレンジ色の魔力が出た。それらのオレンジ色の魔力は実際に燃えているようにゆらゆらと揺れている。黒毛の根元は燃えていない。
「ん、ロロちゃん、カッコいい!」
「あぁ、戦神ラマドシュラー様の加護を受けた相棒だ。格好良く、可愛い」
「はい、素敵な猫ちゃん様です」
「キュッ♪」
「さて、俺たちも聖櫃があるだろう奥に向かおうか」
『――神々の残骸も奥だろう?』
『うむ、反応はその先じゃ!』
沙の念話の返事を聞きながら皆と視線を合わせた。
「ん、行こう~」
「はい! クリスタルの大きい塊が幾つか見えます」
「下り道に上り道もあるっぽい」
「聖櫃。艦長に知らせるのは直前で?」
「そうなる。ハートミットが反応してくるかは分からないが」
「他にもお宝があるかも知れない~」
「シークレットルームは、坂と上り道の先にあるようです」
機械音声のアクセルマギナだ。
「了解した」
「では、行きましょう」
「GO~♪」
「キュ~」
イモリザの掛け声と、その銀髪に住みだした荒鷹ヒューイの声が空間内に響いた。
魔人の像が並ぶ空間を出て先に進む。同じ空間で皆が興味深そうに硝子が重なった空間を覗いていたことも気になったが……と奥に向かった。
ここは一種の地下神殿か、迷宮的な空間の坂道だ。
足下は土の層が増えた。琥珀の床は光ったが、この坂道の土は光らない。壁と天井と横壁は薄らと光を帯びている。クリスタル系の素材が使われている?
すると、戦闘型デバイスから――。
ディメンションスキャンの時に出ていた魔力の粒子がスキャナー波のように展開。
同時に戦闘型デバイスの真上でアクセルマギナが踊るような仕種を繰り返した。
球体のガードナーマリオルスも横回転。
戦闘型デバイスから、ベースを軸としたダンスミュージックも微かな音だが響いてくる。
ホログラフィック技術極まれり。宇宙のナパーム統合軍惑星同盟産だ。
その技術の高さは当たり前!
まさに『トモダチナラ、アタリマエー』だ。
そんな元鹿島アントラーズの名選手を思い出しつつ――坂道を下りながら……。
左サイドのペナルティーエリアに走り込んで、背後から来たスルーパスのボールを右足のアウトサイドで受ける絶妙なトラップでボールを前に運びながら一人のディフィンダーの裏を突いて、突破――そこからクライフターンを実行し、寄ってきた二人のディフィンダーを一気に縦に抜き去って、ゴールキーパーの位置を把握しつつの、右足のインサイドで、ボールの右側を強く擦り上げるように蹴ったボールが、宙に弧を描くように曲がりながらキーパーの手を越えて、ゴールの右隅に吸い込まれるゴールのイメージをしつつ坂道を下る――デルピエロゾーンからゴールを叩き込んだ気分のまま――。
「――ゴォォル!」
「「――ゴォォル!!」」
と、叫んだ俺の声が谺する。動きを停めた。
「ごぉぉる?」
「ん、新しい踊り?」
「リゼッチ的な競技のゴールだ」
「あぁ、そう言うこと」
レベッカは納得。セナアプアの複合構造の魔塔の街で行われていた『リゼッチドロウズボウル』は競技性が高そうに見えた。
俺たちが通りかかった時、スコアボードには16点の数字が並んでいた。
18点目を取った魔法使いの動きは凄かったな。
最後尾にいたボールを持った魔法使い。
サッカーのポジションならリベロの位置か……。
アメフトならクォーターバック。
その魔法使いは、巧みなフェイントで敵側のフィールドプレイヤーたちをあざ笑うように突破しては、見事なゴールを決めていた。
そのリゼッチと、サッカーのことも連想しつつ――。
坂道の途中の踊り場となった左の空間に向けて<光条の鎖槍>を繰り出した――。
「――え? 敵?」
「いや、色々と実験だ――」
更に<超能力精神>を実行――。
宙を突き進む<光条の鎖槍>を、<超能力精神>で掴むことに成功。
「わ! 光の槍が途中で止まった!」
その<光条の鎖槍>を<超能力精神>で操作して引き戻す。
左手で、実際に<光条の鎖槍>を掴んだ。
――痛い。少し我慢だ。
「え? 実際に掴んでいるし!」
レベッカの声が谺する。
<光条の鎖槍>はヴィィィッと音を立てて縮小中――。
同時に<光条の鎖槍>を掴んでいる影響で左手が燃える。
ビームサーベル的な光の槍だから当然だが、痛い……。
その<光条の鎖槍>の後部が分裂しつつ光の網と化して、俺の左手を覆ってきた。前腕の肩の竜頭装甲の軽装と骨の新しい防具も覆われる。「シュウヤ、手が!」
「ん、痛そう! シュウヤ、分かったから早く離して!」
エヴァが紫色の魔力を寄越しつつ、光の網を退かそうとしてきた。
俺は必要ないと右手を挙げる。エヴァは不安の色が消えていない。エヴァの気持ちは分かる。光の網が俺の手首と前腕の一部に食い込んで痛々しいからな。
「大丈夫だ。済まんが、これも今後のためと思ってくれ」
「はい、承知しています。光魔ルシヴァルの修業方法をわたしたちに示すつもりなのですね」
「ん……」
キサラの言葉にエヴァは微かに頷いたが、直ぐに頭部を振るった。
エヴァは優しい。レベッカも不満そうだ。
「光魔ルシヴァルの不死性があるわたしたちだからこそ可能な、無茶な修業方法ではあるけど……」
すると、ヴィーネが、
「レベッカとエヴァの気持ちも分かる。わたしも傷を見るのは嫌だ。だが、傷を受け続けながらも、ご主人様はこうして会話と分析を行いつつ皆に見せている。その意図と、ご主人様の力を信用したらどうだ?」
「それは、うん、信じてはいるけど……」
ヴィーネは微笑みながら俺を見て、
「ご主人様の<光条の鎖槍>が光属性だけでなく、物理属性を備えているスキルだということが分かります。そして、<光条の鎖槍>を掴んだ魔法的なスキルは<超能力精神>でしょうか? それとも<星想ノ精神>と言う名のスキルでしょうか」
ヴィーネの言葉に頷くが、ジンジンとした痛みだ……。
深爪どころの話ではないが、我慢しつつ、
「応用が利きやすい<超能力精神>だ。スキルの<光条の鎖槍>を掴めるとは思わなかったが、掴めた」
ヴィーネは一瞬、俺を心配そうに見る。が、直ぐに、俺の左腕を見て、
「光の網が、ご主人様の血肉と骨を切断し続けているのは、スキルとして物理属性が非常に強いからか。同時に、指の肉と骨の再生の仕方が実に巧妙に組織としてパズルが組み上がっていくように見える……正確無比で不思議だ。そして、胸元の<光の授印>も少し輝いている。だから<光条の鎖槍>を掴めている? 更に、その掴んでいる<光条の鎖槍>は縮小が続いていることから、<光条の鎖槍>の光属性をご主人様が吸収? だから、ご主人様の光魔ルシヴァルの血肉が燃えているように見えるのだろうか」
素のヴィーネがミスティ的な感じに解説。キサラが納得しつつ、
「素晴らしい考察。あ、シュウヤ様は骨の鎧の防御能力も試そうとしている?」
ビンゴ。
「それもある」
「骨の鎧は確かに優秀。物理属性と光属性の強い光の網を見事に防いでいます」
「でも、防具を試すのに自分の肉体を痛めつけるのは良くないと思う。後、好きな人が傷を受けているのを見ている傍にもなってよ」
レベッカが少し怒っている。
「済まん。が、これからのことを思うとな……強者は多い。痛いことにも慣れないといけない。痛みのショックで痺れて動きが鈍るってのもありえる。光魔ルシヴァルは不死系ではあるが、ソルフェナトスと戦って、俺が絶対的な強さではないと分かっただろう?」
そう発言するとレベッカは頷いたが、エヴァが、
「ん、神話級を貫く敵も多いし、それは分かってる……でも、シュウヤ……トースン師匠との魔界セブドラでの幻想修業を行ったせいで、魔界の神々の影響を受けた?」
「あるかもな。光魔ルシヴァルは、光と闇に影響を受けやすい」
「シュウヤ、真剣な表情で語ると怖いんだけど……」
「はは、大丈夫だって」
「そうは言うけど、実際にシュウヤの首には<夢闇祝>があるから」
「あるにはあるが……その<夢闇祝>の傷痕から血は流れてこない。心配のしすぎだ。これは単なる修業だって」
火を浴びるような修業だが……『心頭滅却』と言いたいが、言わずに、
「何事も修業――ッと、痛えもんはイテェや」
左手の血が沸き立つ。
「ん、修業好きも困る」
「使者様の左手から血が滾っているようにも、あ、アドゥムブラリの<ザイムの闇炎>のように? 輝く血を使った炎の開発を?」
「そうなったら面白いが、スキルは獲得していない」
「にゃご~」
相棒も怒ったようなニュアンスで俺の足を肉球パンチ。
相棒の気持ちは直ぐに分かった。
『器よ、妾の出入り口を修業の遊びで焦がすな!』
『主、我の魔印が震えている』
『暫し待て、<光条の鎖槍>を離す前に、他に試すことがある』
右肩の竜頭金属甲を意識しつつ、
「ハルホンク、骨の防具類は喰わずに、一時的に格納しつつ素早く新衣装と一緒に再展開しろ」
「ングゥィィ!」
装着中だった白シャツの衣装とズボンと、獲得したばかりの骨の防具を竜頭金属甲は物の見事に吸い取った。
「あ、竜頭金属甲の首にルシホンクの魔除けが!」
「閣下が裸に!」
「わっ」
「きゃ」
「キュ~」
「使者様~、ご立派〜♪」
「にゃんお~」
皆、それぞれ叫ぶ。気にせず衣装チェンジ。
一瞬だが裸になるのは恥ずかしいが別にいい。新衣裳をイメージ。
肩の竜頭装甲はイメージ通りに――。
ミスランの法衣と牛白熊の素材と骨の防具を吐いた。
ハルホンクの新防護服の素材は、皮膚の上を滑るように展開。
両腕の素材はミスランの法衣を多くした。そのミスランの法衣が前腕を覆う。
上半身の素材は牛白熊の怪物の裏の皮、桃色を活かす形のシャツだ。
吐き出された骨の防具類は紫色の魔力を発しつつハルホンクの防護服の表面スレスレを移動しては、それぞれ骨の防具類に合う体の真上で静止した。
今の骨の防具類の機動は超電導で浮いた磁石的な動きだった。
骨製の胸甲は、胸の前で浮かんでいる。
骨製の腰当は、腰の前に浮いていた。
骨製の肘当は、両腕の真上だ。
骨製の手甲は手の上に浮かぶ。
それらの防具の表面には、鬼の顔の紋様が浮かんでいて、渋い。
その体と防護服の表面に浮いていた骨の防具類は、新しい防護服とインナーの上に装着された。
すると、
左手を覆っていた<光条の鎖槍>の光の網が外れて消えた。
前腕のミスランの法衣が効力を発揮したようだ。
が、まだ左手が掴んでいる小さい<光条の鎖槍>はそのままだ。物理属性もある光属性のエネルギー刃の塊ってことか。
その縮小した<光条の鎖槍>を<投擲>でもするように手放した。小さい<光条の鎖槍>は宙空で乱雑に回転。
その回転を見ながら足下の魔力を強めた。
――右手に神槍ガンジスを召喚するや、投げ捨てた<光条の鎖槍>に向けて、踊り場の地面を蹴るように前進――。
歩幅を調整するように横へとステップしつつ腰を捻って跳躍を行った。
視界の端に回転する<光条の鎖槍>の残骸を捉えつつ――宙空で神槍ガンジスの穂先を斜め下に向けながら――。
回転途中の<光条の鎖槍>の残骸の後部目掛けて――。
神槍ガンジスを突き出す<光穿>を繰り出した。
光の魔力を纏う方天画戟と似た双月の穂先が<光条の鎖槍>を貫いた。<光条の鎖槍>を真っ二つ――。
神槍ガンジスの柄を引きつつ左足の爪先で着地。
爪先と踵を基点とする左回転を実行しつつ――上段回し蹴りを放った。
そして、蹴りの機動のまま振り返るのと同時に足を揃えて、神槍ガンジスを消した。
ヘルメとキサラは、今の槍武術を見て、パチパチと拍手をしてくれた。
ヴィーネも頷きつつ拍手。エヴァとレベッカは魅了されたような視線だ。
イモリザはその場で可愛い小ジャンプを繰り返す。
「よし、骨の防具には中々耐久性があることが分かった。この骨の防具を一端外す」
一瞬で、ハルホンクの防護服から骨の防具類は外れた。
防具類は魔力を放出しつつ一カ所に集結。
「え! 驚き」
「ん、また石板に戻った!」
「わぁ」
「にゃお~」
皆が驚いた。石板は骨の鎧のセット防具として組み上がったが、その骨の鎧のセットは溶けてまた骨の石板的なモノに早変わり。骨の重なった魔造書とも呼べるのか?
骨の魔術書? しかも、骨の石板の表面には浮き彫り状の鬼の顔が刻まれてあった。
鬼の顔を持つイケメンがカーボン凍結されたって印象だ。
その骨の石板の表面から魔力が発生し、鬼の顔を模る。
鬼の顔はホログラフィック風かつ、劇画タッチで、アメコミ風。
鬼系の模様がカッコいい魔術書にも見えた。
「ングゥィィ、マリョク、アル!」
「――浮いた鬼の顔も気になりますが、骨の鎧は骨の石板に纏めることが可能。ならば、閣下の思念で骨の鎧は再展開が可能?」
「可能かもな――」
石板に向けて――〝展開〟と念じた。
刹那、石板は溶けるように崩れて骨となって散るや、俺の体の各部位に骨の防具が装着された。直ぐに、それらの骨の防具類に――〝骨の石板に戻れ〟と念じた。
すると、防具類は外れた。再び宙空の一カ所に集結し、骨の石板、骨の魔術書、骨の魔造書と呼ぶべき物に変化した。
「わぁ、装備品でありながら書物のような石板に戻るなんて、一種の魔造書系でもあるってことかしら。でも、怖い鬼の顔よね……あ、まさか<神剣・三叉法具サラテン>のような意識があるの?」
『百目血鬼のような能力はあるかも知れぬな』
サラテンの沙がレベッカの疑問に念話で応えていたが、当然、レベッカには聞こえない。
そのレベッカは、頭部の上に疑問符を浮かべたような面を作る。
眉毛が可愛い。
「今のところは、沙、羅、貂、ヘルメ、シュレゴス・ロードのような思念は寄越してこない。が、実験は成功だ。この骨の防具の性能は良いと分かった」
骨の鎧には血魔剣の<十二鬼道召喚術>的な能力がある?
見た目が鬼なだけに外魔十二鬼道と近い?
まだ喋ってもいないし、意識も別に感じないが……。
「はい、鬼神系の力を宿す骨の防具」
頷きつつ骨の石板をアイテムボックスに入れる。
名前は、〝鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼〟だった。
戦闘型デバイスは便利だ。
名前が分かるのは地味に大きい。
「鬼神キサラメ様のアイテムのようだ」
「クエマとソロボが信奉する、オーク八大神の内の一柱ですね」
「トトクヌ氏族の故郷は、ララーブイン山の奥地の地下」
キサラとヴィーネがそう発言。
レベッカは、
「魔界セブドラの神様か荒神様のアイテムだと思っていたけど、オークの神様のアイテムだったんだ、不思議~」
「あぁ」
「エヴァと一緒にクエマとソロボからオーク語を習ったから、少し覚えている」
レベッカとエヴァは頷く。
そのエヴァが、
「ん、魔界で魔人武王ガンジスの勢力に敗れたトースン師匠は、オークの神様の装備を愛用して、その鬼の神様との契約があったから、悪愚槍の秘伝書の中に骨の残骸として残っていた?」
「そうかも知れない」
「鬼神キサラメ様……<従者長>のオークコンビの二人から、過去に、人族の集団がトトクヌ氏族の秘境を荒らしたと聞いています」
「うん。鬼神キサラメ様に関する秘宝を盗まれたって言ってたわね。ソロボの鼻息が荒かった。口の牙は怖かったわ」
「では、ご主人様が回収した鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼は、人族たちが、過去、ソロボとクエマの故郷を荒らした戦利品ということに? そして、魔界セブドラに何らかの原因で移動し、魔人トースン様が、その鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼を愛用していたと……修業中のご主人様が、あの雷の骨を纏ったような姿になったのも、その装備と関係が……」
雷の骨か。
多分<闇神式・練迅>によって出ていた魔界の雷。
装備と関係するかは不明だが……鬼神キサラメ様の言葉や思念は聞こえてこない。
「ま、分からない」
皆に対して頷きながら、
「どちらにせよ、魔界にいたであろうトースン師匠が持っていた装備が、鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼だ。経緯は不明だが、ララーブイン地方のお宝が魔界セブドラに渡っていたって説が濃厚だろう」
「はい。当然ですが、ララーブインの地下にも、色々と秘められた歴史があると考えると面白いです」
「そうだな……狂戦士繋がりもあるし、地下も地下で浪漫がある。バーレンティンたちの濃い話も色々あるしなぁ……今度、クエマとソロボに聞いてみるか」
「「はい」」
「ん、クエマとソロボのご先祖様たちと信仰するオーク八大神が、魔界の神々と喧嘩していた?」
「その可能性もある。ま、転移やらを含めると色々だろ」
「そうねぇ~。武術マニアも納得したような晴れ晴れとした顔となったから、わたしも嬉しくなった。ふふ。さ、奥のしーくれっとルームにある聖櫃と未知のお宝をゲットよ! 先に行こう~」
「おう」
と、歩き始める。
天井と両側の地層は回廊的な通路だ。
地下を放浪していた頃を想起する。
ずっと続くような洞窟内を進んでいるような感覚……。
が、そんな感覚を壊すように、硝子を踏む音が足下から響いた。
地面にはクリスタルの粒と塊が無数に散らばっている。
それらの粒と塊を、皆が踏みながら坂道を下るから、音が響きまくった。
この先に『王の間』のような超低密度の空間があるんだろうか。
――ワクワクする。
『原始猿人バーゴン』出現か!
そんなことを思い出して笑うと、側で見ていたレベッカが『大丈夫?』といった顔で俺を見てきた。
無難に変顔を繰り出して誤魔化してから、アクセルマギナが浮かぶ戦闘型デバイスをチェック――。
ディメンションスキャンを起動。
立体的な簡易地図。
俺たちの赤い点と坂道の先には広い空洞のような場所があることが分かる。
同時に坂道が終わった。
上り坂になる。
右側の地層を見たエヴァが反応した。
「ん、地層が変わった、回収してくる」
俺たちもその壁際に移動。
地層には鉱物がある。
金色とか銀色とか黄緑色とか色々だ。
神々の残骸はないようだ。
エヴァは鉱石を溶かしてアイテムボックスに精錬した金属を回収していた。
「白皇系の鉱物っぽい印象。精錬したから白皇魔鉄か白皇鋼かな」
エヴァは頷く。
「ん、他にも、普通の鉄と黄緑魔鉱、魔白金鉱、聖赤魔鉱、少量だったけど貴重な虹柔鉱も少しあった。精錬して虹柔鋼にして、金属の足に色々と混ぜた」
エヴァは少し跳躍。
金属の足の形が少し変化していた。
アーモンドトゥの形状に黄緑色の溝ラインが混じる。小さい車輪とアンクルの周囲には金色と銀色の粒が付いて、お洒落感が増していた。
ブーティなアンクルブーツに見える。
「おぉ~、お洒落! 金属の足が少し変化しているのは」
「ん、黄緑魔鋼にして少しだけ足に混ぜた。だけど、少し失敗。最初は難しい。でも、加工した金属をいっぱい回収したから魔導車椅子の車輪と背もたれにも活かせる! 今度、試す!」
エヴァは嬉しそうだ。
わくわくした顔も好い笑顔だな。
良かった。
「ふふ、わたしも嬉しくなった! 迷宮にあるような鉱床ってわけではなさそうだけど、まさか烈戒の浮遊岩でショッピング気分を味わえるとは! やるわね、シュウヤと烈戒の浮遊岩ちゃん!」
「烈戒の浮遊岩をちゃんか」
「にゃお~」
と黒猫からクリームパン風の肉球パンチを足に受けて走って逃げるレベッカ。
「ん、行こう! 上りの道もおしまい、幅も狭くなった」
「はい、先にシークレットルームが」
壁に挟まれた奥の道。
奥の道には夜の色が溶け込んでいる。
波打ち際のような音が響いてきた。
湖? 烈戒の浮遊岩の奥は狭そうだし、シークレットルームの前に水槽でもあるのか?
「奥は暗視が利かないぐらい真っ暗で怖い。でも、見て、ここの壁にデボンチッチの人形的な塊がいっぱい詰まってる!」
『器よ! あったぞ――』
「おう、今行く――」
レベッカとハイタッチ。
「見て、面白い形ばかり! 鼻くそをほじくっているデボンチッチの人形!」
「あはは、確かに面白い!」
笑いながら左手の運命線のような傷を意識。
他にも相撲取り系のデボンチッチの人形もある。
長髯のお爺ちゃん系のデボンチッチの人形もあった。
ヘルメが気に入りそうなお尻を突き出しているヘンテコデボンチッチの人形もあるし、色々だ。
さて、
『――<神剣・三叉法具サラテン>』
『やっとか!!』
神剣が左手から出た。神剣の沙は突貫か? と、思ったが――。
俺の眼前に停まる。宙空で一回転しつつ柄巻の部分を差しだしてきた。好い子の<神剣・三叉法具サラテン>の沙だ。
同時に<神剣・三叉法具サラテン>としての大人びた沙の幻影が神剣から浮かぶ。沙はお辞儀をした。笑みを見せると<神剣・三叉法具サラテン>の中に消える。お淑やかな沙だった。
『妾の器……妾を使うのは器だけ……』
『おう』
お淑やかな雰囲気を醸し出す沙の念話を聞いて、少し感動。
その<神剣・三叉法具サラテン>の柄を両手で丁寧に握って一回横に神剣を慎重に動かしてから、相棒が掻いている壁の前に移動した。
「相棒、神剣を振るうから危ない。横にさがってくれ」
「ンン、にゃ」
黒猫は離れてくれた。
「よし――」
<水車剣>――斜めに神々の残骸がある壁を斬った。
神々の残骸の横にざっくりと縦線が走る。その<神剣・三叉法具サラテン>の握りを変えて<超翼剣・間燕>を実行、横壁の地層を切り刻む!
神々の残骸はたぶん切れないだろう――周囲の壁という壁を丁寧に切断しまくった。同時に左手の<シュレゴス・ロードの魔印>を意識。
『主、了解した――』
半透明の蛸足集合体で、神々の残骸の人形を拾いつつ戦闘型デバイスに素早く回収。
「うわぁ、剣術も凄まじく進化している!」
「はい……」
レベッカは変わらん反応だが、キサラの色っぽい声がいいな! と、沙が宿る<神剣・三叉法具サラテン>を腰に差し戻すように魔力を送ってから左手の傷の中に戻した。次は……奥から波打つ音を響かせる暗いシークレットルームか。どんな聖櫃があるのやらだ。そして、心臓と髑髏のマークがあるバッジを意識。アクセルマギナはフォド・ワン・マインド・フィフィスエレメント・クリスタルを起動した。
続きは明日。
13巻発売記念のSSとして、闇ギルド関係の第三者視点を予定。




