六百九十七話 猫の集会に荒鷹ヒューイの追跡
続きは来週を予定でしたが、今日書きました。
インドカレーを美味し。
この空き地は猫たちの集会場だったのかも知れない。
周囲の猫たちは間合いを詰めてこない。
警戒している?
それも当然か、空き地に大きな六幻秘夢ノ石幢が登場だ。
この六幻秘夢ノ石幢に独鈷魔槍と魔軍夜行ノ槍業をぶち当てた。
そこからの幻想的な修業だ。
結果、『獄魔槍譜』の秘伝書から魔法文字が俺に飛来。
アクセルマギナが語るに、六幻秘夢ノ石幢の四の面も派手に散ったようだし……。
今は腰に戻っている魔軍夜行ノ槍業も蠢いていたはず。
猫たちがびびるのは当然か。
「にゃ~」
「ンン」
「にゃごぉ」
「ニャガァァ」
「ジャガァァイモゥ」
「バカニャオォォ」
「にゃ、にゃ」
「にゃお」
「にゃあぁぁ」
「ニャゴァ」
と、猫たちは互いに警戒を促すように鳴きまくる。
猫たちの鳴き声の中に『じゃがいも?』と『馬鹿にゃおぉ』が混じって聞こえたが気のせいだろう。
すると、古民家に新しい猫の気配。
薪が重なった間から、その新しい猫が現れた。
老猫か。その老猫が前進すると……。
体格のいい二匹の猫が、その老猫の傍に寄る。
他の猫たちは、ささっと二手へ分かれた。
老猫は体格のいい若い衆を連れて、薪の段に乗った。
その薪の上から、二つのグループに分かれた猫たちを見下ろす。
老猫の左右に立つ体格のいい二匹の猫は、助さんと格さんに見えた。
老猫は、猫たちの様子をジッと見る。
そして、俺と、六幻秘夢ノ石幢もジロッと見てきた。
少し迫力がある老猫は、相棒と挨拶していた老猫かな?
老猫がボソッと鳴いた瞬間――。
傍の猫たちは両耳を凹ませる。
やはり、あの老猫が、この界隈のボス。
ボスってより長老かな。
傍にいる体格のいい猫が親衛隊みたいな存在だろうか。
二手に分かれた猫のグループにも、それぞれリーダー格がいるっぽい。
すると、月明かりが、老猫の艶のない茶色と白色の毛をはっきりと映す。
老猫は雛壇的な高い薪から降りた。
物怖じする様子を見せずに六幻秘夢ノ石幢と俺を凝視しながら、よたよた歩きで近寄ってきた。
老猫にやや遅れて体格のいい二匹の猫も付いてくる。
その三匹の猫は、俺に甘える様子はない。
老猫と体格のいい二匹の猫は足を止めた。
「にゃお」
老猫が鳴いてくれた。
背後の体格のいい二匹の猫は無言。
挨拶かな。俺の挨拶が通じるか不明だが、
「こんばんは。猫の集会にお邪魔しました」
と、発言すると、老猫は瞳孔を少し散大させた。
片足をぷるぷる震わせつつ斜めに上げる。
背後の二匹の体格のいい猫が、倒れそうにも見える片足を上げた老猫の行動に、驚いたような面を見せつつ、前進して、老猫の体を左右から肩を貸すように支える。体格のいい猫は騎士のような感じだろうか。
俺からしたら、可愛い猫の行動だ。
周囲の猫たちが一斉に鳴き始めた。
ざわついているが、面白い猫ちゃんたちだ。
片足を上げた老猫の肉球は、ボサボサな毛に覆われて見えない。
その老猫が、眼を細めて俺を見る。
鼻を小刻みに揺らしつつ、ふがふがと、荒い息を立てた。
老猫は、俺の臭いチェックか。
俺とは距離があるが、二匹の体格のいい猫も鼻をふがふがとさせて臭いを嗅ぐ。
臭いを嗅ぎたいなら、直に嗅げばいいのに……。
光魔ルシヴァル特有の<分泌吸の匂手>はしないが、それなりのフェロモンはあるはずだ……。
フレーメン反応のくちゃ~な顔をしたら面白いが……。
哺乳類の生理現象だからな。
俺と一定の距離を保つ三匹の猫は鼻先をクンクンと動かし続ける。
すると老猫が、
「にゃおお」
がんばった感のある鳴き声を発した。
餌がほしいってわけじゃないっぽい。
挨拶か、仲間の猫たちへの合図か。
周囲の猫たちも「「にゃおおお」」と鳴いている。
相棒がいれば違ったとは思うが……。
空を舞うヒューイは降りてこない。
俺は微笑みながら前進。
三匹の猫はドキッとしたのか一歩、二歩、と後退した。
この辺は、やはり、まだ警戒が解けないか。
猫たちは逃げてしまうかな? と思いながら更に近寄った。
が、老猫と体格のいい二匹の猫は逃げない。
俺は、更に近付いた。
手で触れる位置に来た。
老猫と体格のいい猫は俺を凝視。
が、甘えてくる気配はない。
餌を強請る素振りもない。
俺は両膝に手を当てつつ、中央の老猫に頭部を寄せる。
老猫は、俺の臭いを調べるように鼻孔を拡大させて窄ませつつ、頭部を上げた。
老猫の双眸の色合いは紺碧色。
可愛い。鼻の中央には傷があった。
「ンン」
老猫は喉声を鳴らしつつ――俺に近付いた。
膝に頭を衝突させてから離れると体格のいい猫たちも続く。
連続的に俺の膝に頭を寄せる、気合いが入ったゴツンとした音だった。そして、体格のいい猫たちは退いた。
老猫は近くの六幻秘夢ノ石幢にも頭部を擦りつける。
体格のいい二匹の猫も同様に続いた。
直後、「「にゃ、にゃ、にゃおおお」」
と、周囲の二つのグループに分かれていた猫たちが近寄ってくる。
一気呵成に、俺と六幻秘夢ノ石幢に頭部を擦り始めてきた。
ここは、猫ランドか。
六幻秘夢ノ石幢がメリーゴーラウンド化。
六幻秘夢ノ石幢に頭部を寄せられない、並んでいる猫の中には、自分の股間の臭いを嗅いで、フレーメン反応を起こしているおっさん猫もいた。笑える。
「ふふ、猫ちゃんの国!」
「にゃごぉぉぉ」
「にゃおおおお」
「にゃ、にゃ、にゃぁ」
アクセルマギナに反応する子猫たちもいる。
すると、空を舞っていたヒューイが「ピュゥ」と鷹らしい音を立てる。
急降下しながら、光る物体を追っていた。
ん? 光る物体は鴉?
その鴉が俺の近くに飛来してきた――。
『器よ、あの鴉は、普通ではないぞ。神界に伝わる光鴉かも知れぬ』
『なんだって? 宿の名も水鴉。石像も鴉。ヒューイが睨んで反応していた理由か』
『ふむ。魔力を備えた鴉像。妾は黙っておったが怪しい爺と婆であった。水精霊も多種多様な動植物を模るからの、その類いかと思っておった』
『沙・羅・貂が大人しいからシュレに遠慮しているのかと思っていた』
『ふむ。いやの、ここは、清々しいバカンス気分なのじゃ――』
沙との念話をシャットアウト。
飛来する輝く鴉は俺の近くを通って、山間部に向かう。
荒鷹ヒューイも「ピュゥゥ」と音を立てて、その光る鴉を追った。
時間帯は深夜だから、光る鴉はUFOって感じで目立つ。
とりあえず、猫たちには悪いが、六幻秘夢ノ石幢を仕舞った。
独鈷魔槍も仕舞う。猫たちは六幻秘夢ノ石幢が突然消えたことに驚愕して、逃げ出す猫もいた。
おっさん猫は、逃げずに、股間に顔を突っ込んでいた。
そのおっさん猫に好感を抱く。
んだが、光る鴉が気になる。
おっさん猫のくちゃ〜顔は見れなかったが、少し見てから地面を蹴った。
おっさん猫と勝手に名付けたが――。
三毛猫っぽい色合いだから雌猫ちゃんかな。
そんなことを考えながら――。
光る鴉と荒鷹ヒューイを追う。
山間の宙を<導想魔手>で駆けた。
魔闘術を意識。足に魔力を込めては、いい踏み台になりそうな樹を蹴った。
宙を加速するようにホップステップハイジャンプ――と夜空を駆けた。
光る鴉と荒鷹ヒューイの姿を捉えた。滝の音も響く――。
水の気配が強まった。
方向的にハードマン神殿とは正反対。
山の奥にチラッと見えた神殿の方角か?
が、神殿とは違う。
滝の近くの樹が茂った森の中に光る鴉は突入して姿を消す。
ヒューイは、その森の繁みに突入。
――俺も繁みの中に入った。
――洞穴か。水気を散らしつつ重なる蔓のカーテンをヒューイは切り裂く。
そのまま天井にある鍾乳洞の石に爪先を突き立ててぶら下がった。
俺は<導想魔手>をクッション代わりに湿った洞穴の岩場に着地。
こりゃ、昔を思い出す……。
地下を放浪した頃は、こんな光景ばかりだった。
すると、前方の奥に光る鴉の反応――。
更に、無数の魔素の気配もある。
モンスターか。まだギルドで依頼を受ける前だが……。
この洞穴を先に調べちゃうか。
続きは来週を予定。
HJノベルス様から小説版「槍使いと、黒猫。」1~11巻発売中。
コミックファイア様から漫画版「槍使いと、黒猫。」1~2巻発売中。




