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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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六百八十四話 高感度エニチュードワイヤーシステムとナノマシン

 ――キャノン砲を撃つ。

 その浮いたタイミングでキサラとアイコンタクト。


「はい、外ですね」

「浮きました~」

「ングゥゥィィ」


 竜頭金属甲(ハルホンク)も大砲の震動に反応。

 外に出るかと、コックピットの背もたれを触りつつ振り返る。


「おうっ、え?」


 と、二度見――。

 アクセルマギナの両腕が途中で無数の魔機械の指と化していたからだ。

 更には、胸元のマスドレッドコアがフォド・ワン・ユニオンAFVのインスツルメントと合体中。


 ――いつの間に合体だよ。


「キサラ、待った、アクセルマギナを見る」

「はい」

 

 装甲車の計器盤が嵌まるインスツルメントが操縦桿ごとアクセルマギナの肘掛け的に両脇と胸元と繋がっている。

 

 ダッシュボードが拡充されたようにも見えるが、さて……。

 

 汎用戦闘型アクセルマギナの心臓部のマスドレッドコアとフォド・ワン・ユニオンAFVのエンジン的なコアが繋がっていると推測はできたが……。

 そのアクセルマギナの指の群れは、小気味いい音を立てつつ半透明なキーボードを打ちこみ中だ。


 俺の視線に気付いたアクセルマギナ。

 

「マスター? なんでしょうか」


 そう忙しそうに語るアクセルマギナは横顔のまま聞いてきた。

 やや恍惚感がある。いや、無表情に近いか。


 普段は人間味溢れるアクセルマギナだが、作業中のアクセルマギナの表情を見ると……。

 やはり人工知能なんだなと認識できる。


「前にも言っていたが、それはガードナーマリオルス&アクセルマギナの合体兵装でもあるのか?」


 そう語りながら……。


 アクセルマギナの目の前に浮かぶARディスプレイを凝視。

 マトリックス力学と指数関数の意味がありそうなグラフと計算表が並ぶ。

 古代魔法文字の羅列。

 〝黒の塊〟と似た魔法文字もあった。


 エクストラスキルの<翻訳即是>があるが、俺には理解不能。

 不可思議な魔機械言語プログラムに見える。

 

「はい、選ばれし(フォド・ワン)銀河騎士(・ガトランス)マスター専用システムと、このフォド・ワン・ユニオンAFVのシステムの融合です。ナノ防御構築と一部のOSをバージョンアップさせることに成功。現在も実行中」


 俺は、アクセルマギナの両腕、魔機械の指の群れをチラッと見てから、


「凄いな、この短い間での、バージョンアップの成功か。その無数の指たちは、前にも見たが、そのバージョンアップと関係している?」

「はい。しかしながら完璧ではありません。ナノ防御機構と生バイオシステムがあるわたしとは異なることが多い。今は調整を含めて苦戦中の部分が多いです。RNA分子トランスフォーマーの遺伝子設計が大きく異なると、イメージフィードバックシステムも異なりますから」


 RNA分子か。

 俺の転生時にもあったな。

 

 ※エピジェネシス強制展開※ 

 ※ヘイフリック限界強制解除完了※

 ※超力多能性幹細胞展開※ 

 ※テロメア総数スキャン完了※ 

 ※Tループ及びアポトーシスの停止※

 

 DNAの螺旋鎖が薄緑色の文字群で映し出される。

 二本鎖や三本鎖など、高分子生体物質の核酸だ。


 あの時のスキャンがあったからこその、この予測。

 俺の大事な根幹だ。槍使いである俺の……。


「ナノマシンか。生バイオシステムは、マスドレッドコアが関係しているとは分かる。が、RNAも作用となるとミクロ過ぎて難しい。ま、今の見た目でなんとなく凄さは理解できた。で、そのバージョンアップで主に変わった部分はどこだろう」

「……閣下、聞いたことがないちんぷんかんぷんな言葉は、新しい<古代魔法>の呪文でしょうか」

「みたいなもんだ。ナノマシンってのは小さい機械。偵察用ドローンよりも小さい。高度な文明の技術だ。俺の右目にあるサイバネティックス系の技術が使われているカレウドスコープがあるだろう。それにも関係がある」

「小さいヴェニューちゃんのような妖精ちゃんたちですね!」

「何気に正解かもしれない」


 と、ヘルメのことを冗談半分で褒めるが……。


「そうですね、マスターは遺産神経(レガシーナーブ)に適応し、その遺産神経(レガシーナーブ)遺産高神経(レガシーハイナーブ)に進化した。選ばれし(フォド・ワン)銀河騎士(・ガトランス)専用のナノマシンに適応したということです」

「……では、閣下の右目に備わるカレウドスコープと繋がるクナが手に入れた右腕の戦闘型デバイス……アイテムボックスは、宇宙と繋がる超重要なアイテム!!」


 ヘルメは、水をぴゅっと指先から飛ばす。


「そうだ。で、アクセルマギナ、説明の続きを」

「はい、まずは最初に、マニピュレーターでもあるフレキシブルアームを備えたフォド・ワン・ユニオンAFVの前部をご覧ください」


 と、前を見る。


「あ、本当だ」


 操縦席の硝子ディスプレイ越しに外を確認。

 フォド・ワン・ユニオンAFVの前部のボンネット的な位置から、魔機械の腕が一対伸びていた。


「まだ初期段階の装備です」


 魔機械の太いクローアーム。

 潜水艇が装備するようなマジックハンドでもあると。

 

「あのクローアームの魔機械の腕で未知の素材の採取に海底調査もできるし、攻撃も可能か」

「イエス! マスター! フォド・ワン・ユニオンAFVは全天候型の惑星探査装甲車。強力な圧力と放射線にも耐えられます」

「しかし、アクセルマギナさんよ。いつフォド・ワン・ユニオンAFVと合体を」


 そう聞いた瞬間――。

 アクセルマギナの瞳の片隅に黄金分割の数字が浮かぶ。

 同時に、微笑んだような気がした。


 何か、博士っぽい印象を抱く。


「この合体は、まだ仮です。BIOSの上書き行為中でもあります。そして、レーザーパルス180㎜キャノン砲を連射した前後です。マスターの行動を支えるために、今後のエレニウムエネルギーの放出を抑えることが必要と判断しました」


 凄い、自ら進化する人工知能か。

 エヴァは拍手している。


「さすがはアクセルマギナだ。で、クローアームの新装備以外の効果は?」


 そう聞きながら『ドラゴ・リリック』が嵌まりそうなダッシュボードをチラッと見た。


「はい、トーラスエネルギーの防御技術を内包した高感度エニチュードワイヤーシステムの改良、視野拡大、フォド・ワン・ユニオンAFVの操作、武装、反応速度の向上、等」


 色々バージョンアップさせたようだ。

 

「トーラスエネルギーの防御技術を内包した高感度エニチュードワイヤーシステムの改良とは?」

「一対のワイヤーが、高感度エニチュードワイヤーシステムです。その特殊なワイヤーを起点とする出入り口付近に展開できる魔法防御の対エネルギー兵器防御膜」

「俺の水魔法攻撃を防ぎ、樹槍の<投擲>はあっさりと貫通させた防御膜か」

「はい」

 

 ペレランドラの魔塔を駆け下りる際に、相棒に接触したワイヤーだな。 

 その黒猫(ロロ)は後ろ脚を上げつつ、股間に頭部を当てていた。


 ふがふがと頭部が動く。

 毛繕いを実行中――。

 

 その黒猫(ロロ)は、頭部を上げる。

 小鼻が膨らんでいた。

 黒猫(ロロ)は少しだけフレーメン反応を起こしている。

 

 俺は笑いながら、


「高感度エニチュードワイヤーシステムがバージョンアップしたのか」

「そうです。高感度エニチュードワイヤーシステムが放つトーラスエネルギーの改良でもあります。そのお陰で、空力及び揚力と物理防御を得ました」

「へぇ、飛翔中でもあると」

「はい、現在、可変型のグライダーと言える状態。勿論、フォド・ワン・ユニオンAFVはヤヴァい(・・・・)重さですから降下中。しかし、ハイム川に落ちても大丈夫のはず。浮力も得られるように下部の形は船のように変形済み。そして、下の川の水を用いれば推進力も高まります。ですから、風の推力を得たヨットを超えたクルーザーのような航行が可能なはず」


 水陸両用モビルアーマーか。

 進化したら潜水も可能か?

 素直に凄いが、話を聞く限りフォド・ワン・ユニオンAFVに<邪王の樹>で作る樹の道は要らないということになる。


「フォド・ワン・ユニオンAFVは、船のように単体で川の航行が可能ということか?」

「はい、このハイム川の気候なら航行が可能なはず」

「水を用いるとは、どんな仕組みなんだろう」


 双眸の黄金比率の文字を点滅させるアクセルマギナは、

 

「トーラスエネルギーを大気と水に浸透させて循環するエネルギーの魔力化。そのエネルギー魔力の放出を強めつつ推進力を得ると同時に物理属性のあるエネルギーの帆、魔力の網、魔力の帆、魔力の翼を生成し展開する仕組みです」

「自由が利く魔力網の構築か」

「はい」


 翼や帆も十分凄いが、ワイヤーが凄い。

 ワイヤーから放出する魔力層的なモノは自由度が満載。

 翼、帆、網、防御膜、そして、水をエネルギーに転換することもできるのか。

 

 水も使っているなら、水素の電離層を活用?

 イオン化の推進剤かな。

 イオンエンジン的な能力だろうか?


 最新探査機全天候型アークユニオンを元にしただけはあるようだ。

 さすがは、ナパーム統合軍惑星同盟。


 多数の星系に影響を与えているだけはある。


「なんとなく理解はした」

「ん、難しい。戦車が鳥さんになった?」

「魔法ギルドの大幹部が持つ秘宝とかだろう。飛翔できる戦車の魔道具ってことなら分かりやすい」


 クレインの言葉に皆、頷く。

 

「敵対したアキエ・エニグマも優れた魔道具を持ちます。が、このような空戦車風の魔機械は、持っていません。シュウヤ様が仰っていた宇宙海賊のハーミットが率いる海賊団なら持っているかも知れませんが、少なくとも、砂漠地方には、空を飛ぶ戦車はなかった」


 キサラが力強く語る。

 相棒も頷く。

 

「ん、にゃお」


 ドヤ顔を繰り出すロロディーヌ。

 

 そして、


「現状の動力は上昇する気流。鳥のイメージです。平たく言えばエヴァさんが正解です。魔力大気を利用したエネルギー帆であり翼で、この惑星セラに合った揚力と浮力を得る。セナアプアにある風船とはまた違うかと思いますが、魔力の翼で、この惑星の大気の押し上げた反作用を得ているのみ。その揚力は、魔力と空間の捻れによって、計算が非常に難しいですが、簡単な空気の流れなら分かりますから。詳しくはこれを――」


 そして、人工知能(アクセルマギナ)の言葉と連動しているようだ。

 周囲の車内の一部が大規模なARディスプレイと化した。


 ナノテクノロジーと電磁波か。

 ハートミットの最新鋭艦の艦長室にも備わっていた技術。

 ディスプレイにもなり得る金属をユビキタス元素でも扱うように操作したアクセルマギナ。


 ま、簡単に言えば、全天周囲モニター・リニアシート。


「うぁぁ、凄い~。あ、魔力の翼は分かった!」

「――はるか、下のハイム川の夜景が……綺麗です」

「浮いたの次は、飛んだ♪ 飛んだ♪ とびます~♪ ぴゅ」


 水飛沫を発しているヘルメは実際に浮いているからなんとも言えない。


「鉄の装甲車が滑空しながら飛翔していると、分かるが、ハイム川と三角州の北がこんな綺麗だとは……」

「ん、わたしたち、ヒューイちゃん?」

「そうだねぇ、わたしたちは翼を得た、帝火鳥さ」

「ンン、にゃおお~」


 下を向いた相棒が前足を振るって、その前足で床を叩く。

 透明な床が気になるようだな。

 それとも真下のハイム川か。

 ハイム川とは距離があるが、驚異的な視力で泳ぐ魚を捉えている?

 

 イカ漁に用いるぐらいに、エネルギー帆が輝いているから魚が反応したのかな。


「ここが鋼鉄の箱とは思えない。空と一体化したような……」


 皆、この三百六十度の空と一体化したような景色に当然、驚く。

 だが、ある程度は、想定の範囲内って感じの驚きだ。

 

 さすがに慣れたか。

 しかし……キサラが語るように、現状装甲車の中だってことを忘れるぐらいな勢いでグライダーと化しているフォド・ワン・ユニオンAFV。


 大空を飛翔している感が凄い――。

 魔力のヒューイが、フォド・ワン・ユニオンAFVを包んでいるようにも見える。


 大きなトンビ凧を得たかのように飛翔するフォド・ワン・ユニオンAFV。

 ま、下降しているんだが。


 エヴァが言うように、荒鷹ヒューイのような翼か……。

 大騎士レムロナの妹のフランが持つ透明な鷹(リノ)のような半透明の翼で、装甲車が飛翔しているようにも見えた。

 

 魔力の翼、あれが帆にもなるという……。

 その後部の穴から出ている大本のワイヤーを見ながら、


「グライダーってだけでも、改めて、凄い技術だ。魔法防御システムの改良。優秀なアクセルマギナだからこそ可能な応用。そして、後部から出た、その大本のワイヤーの名は、高感度エニチュードワイヤーシステムって言ったか? かなり特別なのか」

「イエス、マスター」


 満面の笑みのアクセルマギナ。

 衣服は軍人スタイルで、秘書官としての印象もあるが……。


 やはり選ばれし(フォド・ワン)銀河騎士(・ガトランス)専用なだけはある。

 ハーミットこと、ハートミットが艦長の、セクター30が有する最新鋭艦トールハンマー号の人工知能よりも、アクセルマギナのほうが性能は上かもな。


 すると、車内に外の光景を投影中の映像が、普通の壁にパッと瞬きでもするように切り替わった。


「あ、変わった。前と同じ。でも、このでぃすぷれい? の動く景色も不思議」


 エヴァが語るように……。

 アクセルマギナがフォド・ワン・ユニオンAFVのOSをバージョンアップ中の一環で、席に座る皆の頭部を囲うようなARディスプレイの視野も拡がっている。


 頭部が動けば、そのARディスプレイの湾曲と傾斜も――。

 その頭部の角度に合わせて微妙に自動で変化する。

 

「そうだねぇ。正面の硝子窓の外と横の景色は本物なんだろう?」


 そう語るクレインは、皆に向けて、片腕を伸ばし、


「それでいて、傍にいる皆と車内の実際の視覚もある」

「閣下は、偵察用ドローンとの視覚の共有は混乱する時があると仰っていましたが……その一端が理解できた気がします」

 

 ヘルメとエヴァは、そのクレインの手に手を合わせた。

 互いがそこにいることを確認でもするように、掌と掌を合わせたり指で互いの掌に字を書いてみたりと、可愛い姿だ。


 皆、不思議そうにARディスプレイを見つめていた。

 エヴァは笑顔だ。

 紫色の瞳を輝かせては、頭部をきょろきょろと動かす。

 ARディスプレイが映す立体的な外の映像と、実際の強化硝子が映す光景が楽しいようだ。

 

 どちらのディスプレイも解像度の違いに違和感がないってのがまた凄い。

 エヴァは楽しそうに外を眺めつつ、


「ん、綺麗」


 と呟く。離れてゆく塔烈中立都市セナアプアの夜景だ。


「あぁ」


 頂上がモスク的に丸い魔塔の群れ。

 頂上がレイピア的に細い魔塔の群れ。

 シンメトリーでモンスターの角を表現した魔塔の群れ。

 アシンメトリーで月の形を表現した魔塔の群れ。

 魔塔と魔塔に浮遊岩が連結して巨大な水路を形成している魔塔の群れ。


 魔塔の群れはそれぞれに意思があるが如く、個性ある輝きを放つ。

 その強い個性ある光が、雲と霧と空魔法士隊を貫く。

 ハイム川の水面と下界を行き交う船を眩く煌めかせていた。


 幻想的で美しいネオンだ。

 崩壊したペレランドラの魔塔がこの魔塔の群れの何処かにあるはずだが、分からない。


「夜間なこともあるが、塔烈中立都市セナアプアを空から眺めると、意外に美しいんだねぇ」

「はい。わたしは時々、夜景を楽しむこともありました」


 俺の横にいるキサラはそう語る。

 

 ――ARディスプレイには素材と周囲のマップが表示。

 ――エレニウム総蓄量が180000に減って、今も減り続けていた。

 ――アクセルマギナの操作システムの名と細かな数字も表示。

 ――高度も徐々に下がってきた。

 

 だが、大いに飛んだ。

 ――鳥人間コンテストなら優勝かな。


「キャノン砲を撃たずとも、このままハイム川に着水しても大丈夫なんだな?」

「はい、そのはず……」

「ハイム川の底にドボンとなっても、ヘルメがいるから全員の空気は大丈夫だとは思うが……」


 そう指摘すると、アクセルマギナが再び、横の機関砲の壁と後部のガルウィングドアの表面をディスプレイ化。


 一対の高感度エニチュードワイヤーシステムの先端が、ハイム川に付着する。

 その直後、キャノン砲とは違う、浮力を得た。


 ハイム川に碇をぶち込んでいる印象だが――。

 クッション的な反動を下のハイム川と付着しているフォド・ワン・ユニオンAFVから得た。

 

 俺とキサラは、車内の天井近くにあるハンドルを握って反動を抑える。


「きゃ」

「ふふ――」

「にゃお~」

「エヴァの胸と精霊様のお胸様の弾力が凄まじいねぇ」

「ん、先生のおっぱいも張りが強い! でも、精霊様のお胸様のほうは、柔らかくて気持ちいい」

「あぁ……これもくせになる?」

「先生のお尻が光ってる」

「不思議だねぇ、あ、エヴァも、神獣様もぴかぴかだよ……」

「にゃ」

「ハルホンク、モ、ピカピカ、ヒカリタイ、ゾォイ」

「ふふ、皆で、わたしの水を飲みますか」

「ングゥゥィィ」

 

 皆、シートベルトを外していたのか?

 まったく、けしからんことをやっとるがな。


「シュウヤ様……」


 キサラが俺の気持ちを読んだか――。

 おっぱいを当てるように、肩に寄り添ってくれた。

 ――柔らかい感触だ。

 思わず、『ングゥゥィィ』と心で発音――。

 竜頭金属甲(ハルホンク)に衣服を仕舞いつつ軽装にチェンジ。

 そして、素早くハンドルから手を離して、キサラのノースリーブの肩に手を回す。

 そのまま『ありがとう』の意味を込めてキサラの抱きしめを強くした。


「あ、シュウヤ様……」


 蒼い双眸を揺らすキサラ。

 顎を上げて、小さい唇を向けてきた。

 だが、姫魔鬼武装が自然と展開してしまった。


 アイマスクが戦闘用の兜に変化した。


「あ、すみません、砂漠鴉ノ型に……」

「いいさ、気にするな」


 と、鋭い鼻先を人差し指で突く。


「はい……」


 同時に車内に流れているBGMも変化。

 細かいアクセルマギナちゃんだ。


「しかし、本当に浮くとは思わなかったねぇ」

「たしかに、フォド・ワン・ユニオンAFVが、まさかクルーザーと化すとは……」


 俺はそう呟く。


「浮き、浮き♪ 浮き浮き♪ 浮きました?」

「ん、戦車船~、浮いた♪」

「にゃお~」

「浮きました~♪」


 相棒の声に合わせるヘルメが面白い。


「くせになる~♪ ドカッと一発とは違うが、この浮く感覚は不思議だねぇ」


 ヘルメのテンションは分かるが、クレインも楽しそうにノッた。

 ヘルメとハイタッチを実行――。

 アイマスクを外したキサラもBGMに釣られて鼻歌。

 いや、鼻歌から微かな歌声に変化。

 ダモアヌンの魔槍は、ギターと化してはいないが、自然と柄の孔から小さいフィラメントが音程に合わせて七色に輝きを発していた。


 相棒は「ンン」と、喉声を鳴らして早速、反応――。

 歌声に合わせたのかと思ったが、そのフィラメントのような線にじゃれようと片足を伸ばす。


 ボーカルとしての才能がすこぶる高い四天魔女キサラ。

 彼女の微かな歌声は心地良い。


 エヴァは胸元に手を当ててドキドキしているような表情をしながら――。

 途中で、ハッとして、紫色の魔力の<念動力>で守っているドロシーと評議員ペレランドラの様子を直ぐに見る。


 そんなエヴァだが、緑皇鋼(エメラルファイバー)はちゃんと展開中。

 一時、二人を忘れるぐらいの状況だったし、気持ちは分かる。

 しかし、二人が起きたら、この未来的な戦車船と状況だ。すぐにまた気を失いそう。


 俺も眠る二人を見ては……。

 そう考えつつ戦闘型デバイスを意識――。


「どうせなら、ガードナーマリオルスも出しとこう」

「ピピピッ」

「ん、マリオちゃん」

「ぴゅっぴゅっのタイミングですね。もう少し窪めば、植木鉢として、未知の植物を育てることが可能なのでしょうか――」

「お、いいところに杯を用意してくれた。では、酒を用意――」

「ん、先生。マリオちゃんの頭のお皿は、お酒を容れるところじゃない……」

「はは、エヴァもお皿と認識しているのかい? しかし、酒は魔力の回復を促しつつ筋力を高める、あの魔酒キューリタンだよ? そして、精霊様は水を注いでいる」

「ん、精霊様はいいの。それに、その酒は度数が高いし、酒臭くなったら先生は強くなるけど、今はだめ」

「う、分かったさ」

「ピピピッ」


 ガードナーマリオルスはヘルメの水を弾くと、アクセルマギナの隣に移動。

 サイドカー的なポジションだ。


 その様子を見ながら、アクセルマギナに、


「操縦桿と席に繋がった、その両手とマスドレッドコアは外せるんだよな」

「勿論です」


 一瞬で、両手とマスドレッドコアが操縦席から離れた。

 分解された細かな部品が、目の前の操縦桿と硝子のディスプレイと足下のインパネ類を含む魔機械の内部へと引き込まれる。

 

 刹那――。

 ガードナーマリオルス用のサイドカーが本当にアクセルマギナの操縦席の横から飛び出た。

 しかも、そのサイドカー的な小さい操縦席は独自に浮く。


 ガードナーマリオルス専用のホバーチェアか。

 赤ちゃんの揺り籠にも見える。

 赤ちゃん的なガードナーマリオルスを乗せたホバーチェアは浮かぶ。

 

 その浮上する機動はあまり見たことがない。

 ディスプレイアーム的な、硬質さと柔らかさを合わせ持つ動き。

 重力をカットした感じだろうか。

 フォースフィールドで作られたホバーチェアなのかも知れない。


 そのホバーチェアに乗ったガードナーマリオルスは、インパネの上に移動。

 

 硝子のディスプレイもガードナーマリオルスを認識している?

 マークが付くと、立体的なARディスプレイに様々な罫線と、その罫線の上にデータ指数が表示。

 この裸眼の立体視は面白い。


 下のパネルに嵌まるメーターとスイッチ類も動いた。


「ンン――」


 黒猫(ロロ)も反応して、跳躍。

 操縦桿の上部にあるクーラーの吹き出し口的な機構を備えたパネルの上に跳び移る。

 

 ロロディーヌは半透明的に浮かぶARディスプレイと重なった。


 そんな黒猫(ロロ)さんはエジプト座りで、神秘的な黒猫(ロロ)の黒い瞳と姿だが……。

 その視線は悪戯娘風でもある。

 黒猫(ロロ)は、近くでホバーチェアと合体したようにも見えるガードナーマリオルスを凝視。


 そのガードナーマリオルスは、


「ピピピッ」


 と、音を発した。


「ふふ、マリオちゃんが浮いた~」

「マリオルス、空を飛べるのかい!」

「この浮遊は、フォド・ワン・ユニオンAFV内だけです」


 アクセルマギナがガードナーマリオルスの代わりに答えていた。

 

「ピピピッ」


 ガードナーマリオルスも、アクセルマギナの言葉を肯定する意味を表すような音を発する。


 そして、単眼としてのカメラを点滅させる。

 そのガードナーマリオルスは、小さいパラボラアンテナを更に小さい形に変化させた。


 それはショットグラス的な形。


「エヴァ、この子はわたしに酒を勧めているようだよ?」

「ピピッ」

 

 続けて、ガードナーマリオルスはチューブからパンのような鋼の塊を出した。

 チューブの一つは下がって、エヴァの足下に向けられている。


「エヴァっ子。この子は、わたしたちと晩酌したいらしい」


 そのクレインの言葉を聞いて、


「晩酌というか、エヴァは魔力を回復するためにポーションを飲んでいた。今も能力を発動中だから、心配しているんじゃ?」


 と、発言。


 エヴァは俺の言葉を聞いて、瞬きを繰り返す。

 そして、優しげにガードナーマリオルスを見た。


「ピピッ」

「ん、マリオちゃん優しい。でも、わたしたちは丸い鋼鉄を食べられない」

「エヴァ、魔導車椅子の素材にしろってことかも知れないよ?」

「あ、わたしの骨の足を見て……それをもらっていいの?」

「ピピピッ」


 ガードナーマリオルスは頷くように、丸い鋼鉄パンを持つチューブを、エヴァの骨足に当てていた。

 

 微笑んだエヴァは、


「ん、ありがと――」


 そう言いながらスキルを発動。


「ん」

 

 眉を中央に寄せたエヴァは、その丸い鋼鉄パンを溶かして、その金属を自身の骨足に付着させていた。

 

 微量な金属の膜を纏う骨足か。


 エヴァは、ガードナーマリオルスに表情を悟らせないように、直ぐに笑顔を作る。

 

 鋼鉄の量は少なかったが、エヴァはとても嬉しそうだ。

 そんな機知と優しさを持つガードナーマリオルスを見て、皆が、微笑む。

 

 ガードナーマリオルスのほうも、頭部をキュルキュルと回して、エヴァと皆の笑顔に応えると、伸ばしていたチューブを胴体に引き戻し仕舞った。

 

 ガードナーマリオルスは目の機能があるカメラをピカピカと点滅させる。


 続いて、頭部のショットグラスの形に似せていたパラボラアンテナを元の形に戻しては、胴体とは逆方向に回転させる。


 簡易地図ディメンションスキャンを展開させる。


「アクセルマギナ、この簡易地図ディメンションスキャンも、合体兵装の一部ってことかな」

「はい」

「ん、マリオちゃん、小さいのに機能が豊富。ミスティに見つかったらバラバラにされちゃうかも?」

「ありえるな」

「……ピピ」


 ガードナーマリオルスは簡易地図ディメンションスキャンを消去。

 魔力を丸い胴体から微かに出す。

 <超能力精神(サイキックマインド)>があるのか恐怖の感情を抱いたようだ。


 カメラの位置とレンズの幅を微妙に縮小させて、アクセルマギナに何かを訴える。 

 アクセルマギナは微笑んでから、


「わたしたちは、銀河騎士マスターにお仕えしている。ですので、いつでも、銀河の塵になる覚悟はあるはずですよ? ガードナーマリオルス」


 すると、ガードナーマリオルスは、アクセルマギナへの返事のつもりか、頭部の小さいパラボラアンテナが拡大し窄まっての、微妙な感じの感情表現を行う。


「ピピッ」


 AIがAIを諭す感もあるし、仕種が面白い。

 すると、ダッシュボードの上にいた相棒が反応。


「ンン」


 喉声を鳴らした相棒。

 猫パンチをガードナーマリオルスの胴体に当ててから、そのガードナーマリオルスにのし掛かる。

 必死な黒猫(ロロ)さん。

 ガードナーマリオルスの小型ルンバ風の頭部に小鼻を当て……。

 その小鼻の孔を拡げ窄めて、ふがふがと、匂いを嗅ぐ。


『この溝の匂いは、たまらん、ち』


 的な感じだ。

 面白い顔だ。

 

 そんな面白い相棒を、小さいルンバ的な頭部に載せたガードナーマリオルスは――。

 俺にカメラを、というか小さい目を向けてくる。


 助けてほしいのか?

 と、思ったが、違った。

 レンズの動きが可愛い。


 瞳に見える。


 その瞳に見えたレンズから、暖かみのある光を寄越してきた。

 

 健気だ……。

 ガードナーマリオルスも面白く、生きた玩具感があってとても可愛い。

 

 ――ん?

 本当に光が温かいぞ。

 遠赤外線効果?

 

 エヴァの骨足と金属の付着部分に当てたらいいかもな。

 

 ガードナーマリオルスは回転しながら黒猫(ロロ)から少し離れると、その温かい光線を相棒に当てる。


「にゃ~」


 温かい光が気持ちいいのか、黒猫(ロロ)はなんとも言えない声を発した。

 ガードナーマリオルスのカメラが発している遠赤外線らしき光を浴び続けて、そのまま腹を晒す。


 ダッシュボードの上で、だらしなくゴロニャンコ。


 あはは、普段は腹の毛に包まれて見えないピンク色の乳首さんが見え隠れ。

 顔を洗いながら、ごろごろと喉を鳴らす。


 本当に体がぽかぽかしているようだ。

 気持ちいいらしい。

 そして、目を細めてから、小鼻をクンクンと動かして、日向の匂いでも嗅ぐように……。


 光の匂いを嗅ごうとしている。

 その様子が、微笑ましい。


 その温かさを一緒に楽しみたい気分で撫でたくなったが、我慢した。

 

 さて……。

 外の光景を確認するか。


「さっき外に出ようとしたが、ここらで外からハイム川の航行を見るとする。セナアプアから、そろそろ追っ手がくるはず。ヴィーネたちも戻ってくるはずだ」


 キサラも、

 

「そうですね、いい休憩になりました」

「ん」

「今日は時の流れが早く感じるさね」

「ん、色々なことが起きた。ユイとレベッカの様子も気になる」

「あぁ、うちの事務所も、ま、リズと会長なら大丈夫か。しかし、魔塔が崩れる争いは何度か経験済みだが、敵の質の高さといい、その攻撃を受け流すように指示を出しては、わたしたちを守ろうとするシュウヤが格好良くてねぇ、テンションが高まって、まだ眠気がこないよ」


 と、クレインは俺にウィンクを寄越しつつ『酒を一杯やろうか』と片手をあげる。

 一瞬、レウビの酒場で情報を得た時の懐かしいエロスを思い出してしまった。


「ん、敵の追っ手の可能性もあるから、そのお酒はなし」

「わ、分かってるさ」

「わたしは閣下の左目に戻ります」

「そうだな、おいで」

「はい――」


 俺の左目に戻ったヘルメ。


「ンン」


 喉声を鳴らす黒猫(ロロ)さん。

 おっさんがだらけるように腹を晒していたが、


「ンンン」


 と、連続的な喉声を響かせると、華麗に立ち上がった。

 そして、頭部を俺に向けて、


「ん、にゃお!」


『わたしも外に行く、にゃ!』


 と語るように鳴いて、片足を上げる。

 シャキッとした面だ。

 よーし。

続きは明日。

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