六百五十七話 蛇人族の赤ちゃん
蛇人族の赤ん坊だと?
すると、ホルテルマの蛇騎士長の封窯が光る。
その窯の蓋が自動的に横にズレて外れると中身から魔力が発生。
魔力は現れた蛇人族の赤ん坊に吸収された。
一瞬、泣き止むが、またすぐに泣く。
「オギャァ、オギャァ」
と、泣いている赤ん坊の蛇腹に紋様が刻まれた。
蛇人族の意味だろうか。
文字はヒッタイト象形文字と似ているが、蛇人族の文字か?
部族専用の印章か?
しかし、赤ちゃんだ。母性あるヘルメに助けを求めるように、
「えっと……」
そう呟きながらヘルメを見る。
ヘルメは自身の指を顔に当て『わたしですか?』と聞くような表情を作る。
俺は『うむぅ』とビアとか左手に棲む大人しい沙のように頷いた。
『……』
左の掌は黙っている。
上でリザードマンと戦っていた時に、サラテンたちが疼いているのは感じていたが。
ヘルメは「あ……」と呟いて『なるほど』と言うように微笑んでから、
「お任せください――」
ヘルメは蛇人族の赤ちゃんに向けて頭部を寄せる。
赤ん坊はビクッと動いて反応。
泣き止んだ。
ヘルメのおっぱいさんが揺れているが、まさか……。
あの巨乳さんの蕾から水飛沫を?
蛇人族の赤ちゃんは真ん丸い瞳で、ヘルメを見る。
「ぱぶぅ、ばぁ?」
赤ん坊は可愛く喋る。
俺たちに向けて小さい掌を見せた。
……ヤヴァイ可愛さだ。
御豆のような、お手手。
可愛い蛇人族の赤ちゃんだが、腹蛇以外は人族とそう変わらない。
短い産毛は少し濡れている。
本当の生まれたてのようなへその緒はないが、そんな生まれた直後に見える。
蛇人族は墓碑から子供が生まれるわけじゃないだろうし……。
この子は、古代の蛇騎士長なんだろうか。
小さいつぶらな瞳で俺たちを一生懸命に見る。
「ふふ。赤ちゃん! カワイイでチュね!」
と、中腰姿勢のヘルメは面白おかしなポージングを披露――。
ヘルメ立ちだ。
そして、ヘルメ立ちを進化させるように、次々と新しいポージングを披露。
帽子をかぶるようなポージングや、舌を出しつつ唇に人差し指を当てながら、エッチなポージングもいいが、やはり……俺は、腰を捻って背中とお尻を見せるようなポージングが一番かな。
そんなヘルメは蛇人族の赤ちゃんに対して一生懸命に踊って、水飛沫を飛ばす。
更に、
「――ぶばぶばっ、ぶばぁぁ~ん――ぶば?」
と、ヘルメは赤ちゃん言葉を発して、ダンス。
ポージングの動きを止める。
蛇人族の赤ちゃんは笑顔となった。
「ばぁぶぅ~! うきゃきゃっきゃ!」
あはは、蛇人族の赤ちゃんは本当に嬉しそうに笑う。
その笑顔は、無垢その物で、とても可愛らしい。
しかし、さすがは常闇の水精霊ヘルメ。
さっそく赤ちゃんを手懐けるとは。
「ふふふ、蛇人族の赤ちゃん! こんにちは! わたしはヘルメですよ~」
「……ばぁぶぅ? ばぁ!」
蛇人族の赤ちゃんはヘルメの長い蒼色の髪を触る。
「うふふ、興味があるのですか?」
「ばぶぅ」
「理解しているか分からないが、俺はシュウヤって名だぞ。赤ちゃん」
「ばぁぁう」
ヘルメの髪を離して、小さい掌を俺に見せる。
その赤ちゃんの掌に、俺は指を伸ばしてみた。
蛇人族の赤ちゃんは、小さい豆粒のような指で俺の人差し指をぎゅっと握る。
と「……ばぁば?」と呟く蛇人族の赤ちゃん。
……可愛い。
すると、背後から、
「主!」
「デュラート・シュウヤ様~」
と、ビアとマルアが駆け寄ってきた。
そのビアはオベリスクが崩れていることに唖然とする。
説明しとくか。
「よう。リザードマンの首は袋ごと消えた。そして、ホルテルマの蛇騎士長の封窯は漬けたってより、ここに置いたら、この通りオベリスクが崩れてな。中からいきなり赤ちゃんが誕生した」
「……」
唖然とするビアとマルア。
「それで、この蛇人族の赤ちゃんは、そこの封窯から魔力を吸い込んだ」
「なんということか! 古い蛇騎士長たちを奉る祭壇の碑の中身が赤ん坊だったとは……」
「で、聞くが、この赤ちゃんって、やはりスポーローポクロンの一族?」
ビアは蛇人族の赤ちゃんに近付く。
「オギャァァァ」
と、蛇人族の赤ちゃんはビアを見て、恐怖したように驚いて泣く。
そのビアはショックを受けたような面を見せるが、俺をチラッと見て、取り繕ってから、赤ちゃんの三つある胸を調べていた。そして、腹に指を当て、
「……元気ある赤子よ……ん……? ある……確かに、これは、うむ。ホルテルマ・ギヴィンカゲレレウ・トップルーン・スポーローポクロン。一族としての意味が腹にある」
さっきの紋様か。
「分かった。とりあえず、この蛇人族の赤ちゃんは保護。リザードマンは放って一旦、サイデイルに帰還しよう。シェイルの治療を急ぐ」
「承知した」
「ばぶぅ~」
蛇人族の赤ちゃんはヘルメが抱っこした。
ヘルメの指先から出ている水を飲んでいる。
おっぱいから出る水なら、相棒とバルミントもよく飲んでいた。
元気に育つかな……。
そのヘルメが、
「はい! 坂道で合流にしましょう。戦場では何があるか分かりません」
確かにと、頷く。
血文字で連絡してからかな。
「そうしようか。二十四面体で転移。吹き抜けだし、相棒に乗って天井から飛行もできる」
「そうですね。強いリザードマンがどうなったか。まぁヴィーネとジョディに敵うわけがないですが」
「サイデイル? シュウヤ様についていきます」
俺はマルアに対して頷くと、左手を出す。
「はい――」
瞬く間に黒髪が伸びたマルアは俺の近くに来ると、瞬間的にデュラートの秘剣に戻る。
そのデュラートの秘剣は戦闘型デバイスに瞬時に格納。
アイコン化するのを見てから、皆に血文字連絡を送る――。
続きは来週!
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