六百五十二話 新ギミックと光闇の奔流の意味
2024年3月21日 13時11分 修正
人を模った溶岩?
いや、兜頭巾の魔人か?
「ハルホンク――」
「ングゥゥィィ!」
肩の竜頭金属甲から衣裳が展開される。
今回はひさしぶりの魔竜王装備だ。
紫色を基調とした渋い魔鎧。銀ヴォルグの素材に近いマントを備えたバージョン。
「標的数、解析不能、魔素変換効率100%――」
アクセルマギナが周囲のことを報告。
溶岩系の魔人かモンスターかな?
兜頭巾の額にあるのは魔宝石。
その中央の魔宝石の左右にはクリスタル系の角がある。
二つの角は歪でアシンメトリーだ。
が、すこぶる綺麗なクリスタルの角。
兜頭巾が沈み込むような深い眼窩から覗く眼球は……。
膜? 眼球の内部に半透明な液体が詰まっている。
鼻と口と顎は兜頭巾が覆う。
顔の凹凸はあるが、その判別は不能。
手足以外は、溶岩的な色合いの兜頭巾が包む。
その体の兜頭巾の隙間から、内部に半透明の手足が見えた。手足の表面は膜で、膜の下には毛細血管的な魔力の網がある。
兜頭巾の人族風で、半透明な皮膚を持つ種族か。
中身は透明人間?
……薄ピンク色の尺骨に、長母指屈筋も見えた。
筋肉は人族と似ている。
が、溶岩流のような赤黒いモノが血管の表層と内部を巡っているから別の生命体だろう。
とにかく、兜頭巾と溶岩に半透明な体を持つ異質なモンスターってことだ。
「……アクセルマギナ、名前とか分かる?」
「地殻内熱水活動及び放線菌ホロビオント魔法生命体メガロン系列と分類します」
と、アクセルマギナなりの分析名を寄越す。
メガロンか……。
俺的には、そのフレーズは、いかん。
甘くて美味しい夕張メロンと……。
メロンパンを想起してしまった。メロンパン!
転生者or転移者はいるから、この世のどこかには、あるだろう……。
そんな美味しいメロンとかパンをいつか食べたいな。
レベッカの美味しい物発掘センサーに期待しようか。
セナアプアでは闇ギルド関係で忙しくて、戦いばかりだろうし、そんな余裕はないかな。
お菓子大魔王という渾名を信じるか。そして、目の前のメロンパン、否、魔法生命体メガロンを凝視。
魔法生命体メガロンこと、溶岩怪物からの先制攻撃はない。
デュラートの秘剣と聖槍アロステを消去。名はメガロンでいっか。
まずは挨拶。フリーハンドで笑顔を意識しつつ、
「どうも――」
と、挨拶。
すると、兜頭巾怪物メガロンは太い腕を斜めに上げた。
ズバッとした勢いで上げたが。
挨拶が敬礼? メガロンの左右斜め下の火山湖がぐにゃりと盛り上がった。
更に、メガロンの兜頭巾の一部が変形。
口のようなモノができた。その口が裂け横へと拡大。
「ゴアァァァァ――」
兜頭巾の口が発した奇声。
ドドドッとした重低音の衝撃波を喰らう。
続けて、二つの火山湖の溶岩が俺に向かってきた。
右から迫る溶岩はミミズの形。
左からやや遅れて迫るのも、ミミズのような溶岩流。
まずは右――俺は俄に体勢を傾けて間近で避ける。
右から左へと、眼前を通り過ぎゆく溶岩ミミズ――。
最初は観察しようか――熱があるから迫力満点だ。
間近で列車が通るような「ごぉ――」とした音に熱波が――。
ジジジッと、熱で肌が削られて痛い。
鼻と、やや遅れて頬に火傷を負う、肌が焦げてヒリヒリした。
そんな熱と魔力たっぷりの溶岩ミミズは長細い溶岩流の胴体を晒しつつ通り過ぎていく。
この溶岩胴体の脇腹から触手とか足の刃は出ないよな?
――と、用心。溶岩ミミズの内部は透けて内臓が覗く。
毛細血管の中を虹色の粒と魔力が螺旋的な動きで行き交う。
粒は、赤血球の形。メガロンの眼球に手足と似て半透明。
だが、行き交う魔力の質と形はメガロンと違う。
魔力と関係した真核細胞でもあるんだろうか――。
すると、左側からもう一つの溶岩ミミズが迫った。
丹田から体に魔力を巡らせている<魔闘術>を強めた。
左の溶岩ミミズは口元が平たいブレード状に変化している。
――右手に鋼の柄巻を召喚しつつ溶岩ミミズの形状を把握しながら岩場を蹴った――。
左に跳びながら、牽制に《氷矢》を射出、《氷矢》が宙空を進む。
溶岩ミミズの頭部に《氷矢》をぶち当てた。
だが、《氷矢》は頭部に触れた直後には蒸発してしまう。
水蒸気が溶岩ミミズを包むと、溶岩ミミズは方向を見失ったような仕草を取った。
それを見ながら岩場に着地し、右の掌の中で鋼の柄巻を回しつつガンスピンを実行――。
再び、岩を蹴って違う岩場に向かう――。
足場となる点在する岩場を利用し、火山湖の上を舞うように飛翔しながら移動。
宙空から両手を広げつつ溶岩ミミズに指先を向けて――。
連続的に《連氷蛇矢》を発動。
続けて<夕闇の杭>を発動。
指先から出た魔法は見ない――岩場に着地してから溶岩ミミズを見る。
溶岩ミミズに《連氷蛇矢》はある程度効いたが、水蒸気を生んで勢いを削ぐだけか。
やはりこの環境では意味がない。
――<夕闇の杭>のほうは通じている。
溶岩ミミズの細長い溶岩の胴体を削りに削った闇杭。
再び岩を蹴って梵字が煌めく<鎖>を射出。
<鎖>は細長い溶岩ミミズの胴体をぶち抜いた。
が、溶岩流を貫いたってだけか。
一応は内部の毛細血管のような内臓は破壊した。
溶岩ミミズは頭部を振るっている。
動きは鈍ったが火山湖の溶岩を吸い取って再生する。
ダメージは少ないか。すぐに<鎖>を消去。
<血鎖の饗宴>ならどうだろう。
<血鎖の饗宴>を繰り出した。
溶岩ミミズに血の鎖が衝突。
蒸発するように燃える溶岩ミミズ。
だが、体積が減ったぐらいだ。
すぐに膨らむように元の溶岩ミミズとなった。
続けて大量の<鎖>か<血鎖の饗宴>ならいけるか、と。
<血鎖の饗宴>を数十と本体のメガロンに向けるが、盾のような溶岩ミミズに防がれた。粘液のような塊となって血鎖を固めようとしてくる。
シリコーンゲルのような物質が周囲に飛散していた。
連続的に血鎖を出せば、いけると思う。
が、呪いを受けそうで固まるとか怖い。
すぐに<血鎖の饗宴>を消去。
本体の兜頭巾ことメガロンは両腕を動かす。
その両腕から極めて小さい魔線が火山湖と繋がっていた。
溶岩ミミズを火山湖から生み出し続ける。
魔法は《凍刃乱網》。
《氷竜列》もあるが……。
ま、環境が環境なだけにな――。
それに、直に突くか叩っ切るほうが性に合う。
クルクルと回る鋼の柄巻に魔力を通す――。
放射口から青緑色のブレードが発生。
ブレードが出た鋼の柄巻を振るうように右腕を少し下げた。
ブゥゥゥンと、小気味いい音が響く。
ブレード状の口元を向ける溶岩ミミズに――。
――左手を掲げた。
『ワクワク――』
『残念』
期待したサラテンの沙には悪いが――。
<超能力精神>を意識。
眼前に迫った溶岩ミミズに<超能力精神>の衝撃波を喰らわせた。
ドッと鈍い衝突音を発した溶岩ミミズ。
口元のブレードと頭部の一部が爆発。
折れたブレードと頭部の溶岩の破片が自身の溶岩流の腹に突き刺さる。
頭部が抉られた溶岩ミミズは大きく仰け反った。
が、溶岩流の体のミミズだ。
頭部と腹にダメージはあるのか疑問だが――。
その仰け反って動きを止めた溶岩ミミズの隙を狙う――。
しかし、違う溶岩ミミズが迫った。
――チッ、先にこいつを倒すか。
<魔闘術>の配分を変えつつ――。
アクセルマギナから小気味いい戦闘音楽が響く。
そのリズムに乗るように――。
足下に<導想魔手>を刹那的に展開するのをくり返す。
その<導想魔手>と<生活魔法>の水を活かす――。
体勢を屈めつつ魔力の歪な手と水の上を滑るように前進。
右手に魔槍グドルルを召喚。
流れるように<超脳・朧水月>を発動――。
爪先から踵に軸を変える回転をしつつ屈んだ姿勢から体勢を上げての――<水月暗穿>の蹴りを放つ。
溶岩ミミズは、下から俺のトレースキックをもろに喰らう。
蹴りの衝撃でドッ――と鈍い音が響く。
溶岩ミミズは胴体が凹んで浮き上がった。
間髪容れず――追撃。
弧を描くような水月連携斬りを繰り出す。
オレンジ刃の薙刀が溶岩ミミズの腹に線を描くように炸裂。
更にグドルルのオレンジ色の薙刀の穂先から――。
火柱の女性が回転しながら出現――。
火柱の女性は切断した溶岩ミミズと接触、ミミズを大爆発させる。
火柱の女性は、その爆発を味わうような恍惚とした表情を浮かべてから、魔槍グドルルの中に溶岩ミミズの魔力を吸い寄せる――。
刹那、火柱っぽい女性は俺を見て微笑んだ。
おぉ、美人さんだ。
『フヌァァ、不埒な気配ぞ!』
沙の思念はシャットアウト。
溶岩ミミズの一匹は処分したが、まだ、出現は続く。
そして、まだ仰け反ったままの溶岩ミミズは動いている。
魔槍グドルルを消去。
<導想魔手>を蹴った。
鋼の柄巻を召喚――。
さて、この鋼の柄巻の表面にあるムラサメブレードの〝改〟の新しい機構の一つを試すとしよう。
それは三つあるボタン。
月と樹。
獣。
血色の水滴。
その三つのボタンを指の腹でなぞる。
――<血魔力>を展開。
俺が選んだのは血の水滴ボタン――。
柄巻の新ギミックに期待だ。
〝血の水滴〟のボタンを押した直後――。
振動するムラサメブレード・改――。
おぉぉ、この振動は特別と分かる――。
振動するムラサメブレード・改。
血と白銀の霜のような魔力粒子が迸る。その白銀の霜的な魔力粒子を吸い込んだ。
霜のような魔力粒子は心臓を打つように体に轟くと耳鳴りとなって突き抜ける。
<血魔力>と体内の<魔闘術>の影響で血流が上昇し急降下。
――<魔闘術>が活性化。
『――うむぅ、魂が滾るのじゃ。生命との共生感覚を活かす体術を心得ておる……』
アオロ・トルーマーさんの打ち震えたような思念が聞こえた。
アクセルマギナとガードナーマリオルスは敬礼している。
俺の<血魔力>と<超能力精神>が連動している証拠だ。
――前傾姿勢を取る。
粒子迸るムラサメブレード・改の角度を変えた直後――。
岩場を蹴って――仰け反った溶岩ミミズに向かう。
ムラサメブレード・改ごと、自ら特攻するように体を捻りつつムラサメブレード・改を振るった。
――ブゥゥゥンと音が響く螺旋機動のムラサメブレード・改。
溶岩ミミズの土手っ腹を巻き込み内部を抉るように斬った――。
溶岩ミミズの体は渦状に散り、リンゴの皮むき状態のまま蒸発し消失――。
※ピコーン※<飛剣・血霧渦>※スキル獲得※
よっしゃ、飛剣流技術系統をゲット。
サザーのスキルを真似て学んでいた甲斐がある。
偽宝玉システマと戦った際に獲得した<飛剣・柊返し>も同じ飛剣流だった。
俺は飛剣流の剣術と相性がいいのだろうか――。
刹那、ムラサメブレード・改から迸る血と白銀の霜のような魔力粒子が俺に降り掛かると、
『――これまた見事な剣術であった。銀河騎士剣術を独自に編み出したのか?』
またアオロ・トルーマーさんの念話が響く。
『そのようです。剣術を学んでいましたから。弟子というわけではないですが、眷属に優秀な剣士がいるんです』
『……ふぉふぉ、銀河戦士の逸材をもう有しているのか。さすがは黄金比を持つマインドじゃ。そして、日々の研鑽か。槍使いという自分に固執することなく、変化に応じて、自らを変化させる。常にマインドに身を任せることを、理解しておる……』
『ありがたいお言葉です、偉大な銀河騎士マスター』
『ふ、何を言うか。ソナタこそが本物のマインドを持つ銀河に黄金比を齎す選ばれし銀河騎士なのじゃぞ……』
『俺は……』
正直銀河騎士マスターと呼ばれることにはあまり納得がいっていない。
『いいのだ。黄金比を齎す銀河騎士。時間はまだある。そして、覚醒してから短い期間ではあるが、お主が、自由と多様性を大事にしておることは、傍に寄り添ってよく分かった』
『はい、そのつもりはあります』
『謙遜する必要はない。マルアという奇怪な女を助けたであろう。お主は、怒りや苦しみで身を焦がす女を受け入れ癒やしたのだ。実に善い……無償の愛に生きる漢であると強く認識した』
『はは、見てましたか……』
『うむ……だからこそダークのマインドを持つと分かる』
『ライトではなくダーク。闇、愛と執着でしょうか』
『ふむ。だが、恋や愛は、感情としてパワーとしてのライトのマインドを得られるものでもある。何事も黄金比が肝要。そして、選ばれし銀河騎士よ。お主の心の深くには、切っても切れぬ、水と闇に深い関係がある……生き別れたか、失った存在がおろう?』
そこまで分かることなのか。
『はい、両親と……』
『いいのだ、その悲しみが、無償の愛に繋がっていることなのだからな? ただ、拠り所を見失うでないぞ……いや、これは言い過ぎたか。余計なお世話であったな。すまなんだ。ふぉふぉふぉ』
温かい心を持つアオロ・トルーマーさんだ。
ラ・ケラーダ!
アクセルマギナから重低音の宇宙的な音楽が響くから身が引き締まる。
『そんなことはありません。ありがたい言葉です』
『うむ、いい黄金比じゃ。やはり<光闇の奔流>を持つ者。そして、さきほどの技は、わしも驚いた。自分自身として武の表現を具現化する能力は傑出しておる……本当に見事じゃぞ、黄金比を持つ選ばれし銀河騎士よ……』
おお、偉大な銀河騎士マスターの一人、アオロ・トルーマーさんに褒められた。
と、ここは火山湖という環境――。
スキルを得ようが、戦いの場だ。
溶岩が、突如弾けて礫が無数に飛来する――。
飛来した礫をムラサメブレード・改を振るい斬った。
ブゥゥゥン――ブゥゥン――。
振るう青緑色と黄緑色と灰銀色に変化するブレード――。
煌びやかな軌跡が俺の眼前に次々と生まれ消える。
煌びやかなブレードのムラサメブレード・改を用いて飛来してきた、すべての礫を叩き斬った。
直ぐに岩場を蹴って跳躍――。
背に翼を得たように飛翔をくり返す。
足場の<導想魔手>の上に着地。
真下は溶岩の海と呼ぶべき火山湖だから、熱い――。
――が、構わない。
股間はスースーだ!
そう、魔竜王装備を少しいじって、ちんちんが蒸れないように……。
<生活魔法>の水をばら撒いていた。
即座に社会の窓を閉める要領で竜頭金属甲を意識。
身なりを整えた。
そんな火山湖の上で、一人こそこそとした動作で、浮かぶように立つ俺を追う兜頭巾のメガロン。
火山湖の表面を滑るように近付いてくる。
兜頭巾メガロンは額の魔宝石を輝かせた。
兜頭巾の一部を変化させると、メガロンは三体の分身を作り出す。
合計四体となった兜頭巾メガロンは、その兜頭巾から無数の礫を射出してくる。
即座に<神剣・三叉法具サラテン>を意識。
『沙――』
『やっとかぁ――』
と、左手の掌から<神剣・三叉法具サラテン>の沙が飛び出す――。
<神剣・三叉法具サラテン>に乗った小さい沙は下の火山湖の溶岩を巻き上げ蒸発させながら中空を突貫。
礫を貫きながら兜頭巾メガロンの分身体を瞬く間に貫く――。
本体と目される兜頭巾メガロンは火山湖の下に逃げると、再び火山湖に浮かび出す。
沙の脅威を逸早く察知か、分身体と神経が繋がっている?
距離を取った兜頭巾メガロン。
額の魔宝石の輝きは減っていた。
クリスタルの角もくすんだか?
とりあえず、
『――沙、戻れ』
『ぐぬぬ、分かった!』
沙は、もう少し暴れたかったようだな。
その<神剣・三叉法具サラテン>の沙は幻影として出現。
少女ではない、大きな仙女だ。
綺麗な美人さんの沙。
薄い衣には羅と貂と同じようなマークを刻む。
下着と美乳を隠す布ブラジャーが揺れる。
衣のスカートのヒラヒラが風を切るようにそよぐ。
生の太股から紐パンの一部が露出。
魅力的な沙!
微笑んでくれた。
普段はハイテンションの思念ばかりを寄越す、サラテンの沙だが。
すこぶる美人さんが、沙だ。
正直、目元の肌の艶とかを見ると、おっぱいさんも美しいと分かるし、胸が高鳴る。
が、素直に沙には伝えない。
その沙はギラリと視線を鋭くする。
エヴァと同じくエスパーか!
と、ツッコミ念話を送ろうとしたが、
『――器、戻るのは、このミミズを倒してからぞ――』
真面目な沙だ。
そんな念話を寄越しつつ火山湖の上を飛翔。
<神剣・三叉法具サラテン>の沙は、火山湖から生まれたばかりの溶岩ミミズをぶち抜く。
半透明の魔力の源らしきモノを<神剣・三叉法具サラテン>は吸い寄せると、キラキラと光を放つ。
沙は、火山湖の表面スレスレを飛翔する。
次々と小山を作るように誕生した溶岩ミミズをすべて貫いて倒してくれた。
――凄まじい光景。
『――ウハハハ』
ハイテンションになった直後。
途中で止まった。
火山湖の斜め上に出ていた溶岩に突き刺さる<神剣・三叉法具サラテン>さんだ。
貫けないってことは……。
『グヌヌヌ』
『毎度だな。が〝神々の残骸〟を発見したことになる』
『う、うぬ! 器、頼む、妾を引き抜くのだ……』
『実体化すればいいんじゃ?』
『そ、それが、刺さると敏感になって……』
何がどう敏感になるのか、筆を使って神剣を擦ってみたい衝動に駆られた。
しかし、声がしおらしくて可愛い沙ちゃんだ。
距離を取ったメガロンはこちらに来ないから――。
俺は<魔闘術>を全開――。
岩場を蹴って火山湖の上を飛翔するように跳躍しながら<神剣・三叉法具サラテン>に近づく。
くすぐる悪戯はしない。
真摯に、左手で<神剣・三叉法具サラテン>の柄を握る――。
左手の<シュレゴス・ロードの魔印>から桃色の蛸足魔力を幾つか出しながら、沙によく戦ったと、神剣の柄巻から直に魔力を通してあげた。
『あん――』
と喘ぎ声が可愛い沙を引き抜く。
素早くそのまま<神剣・三叉法具サラテン>の握りを意識してから――斜め上にせり上がった普通ではない溶岩を凝視――。
こげ茶色の素材。
極度に圧縮された琥珀かダイヤモンドだ。
薄い層が卍型に組み合わさり重なっているのも前と変わらない。
極めて小さい水晶の欠片と墨色の繊維網がぎっしりと詰まっている。
その層にデボンチッチの化石がみっしりと密接に混ざり合っている岩素材。即座に<シュレゴス・ロードの魔印>のピンク掛かった半透明の蛸脚魔力を左腕に纏わせつつ――。
『沙、神々の残骸を採取するからな』
『うむ!』
<神剣・三叉法具サラテン>を振るって神々の残骸の周囲を切断。
採取を素早く実行。
一瞬で採取を終えると、アクセルマギナが神々の残骸を回収。
他のアイテム類と同じくアイコン化して浮かぶ。
――<神剣・三叉法具サラテン>は左手の孔に帰還。
<シュレゴス・ロードの魔印>のキラキラと輝く蛸足魔力も左手の魔印に納まる。
その瞬間、吸盤がタイルから外れるような音が響いた。
すると、
距離を取っていた兜頭巾メガロンが近付いてくる。
続きは明日。
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