六百二十二話 すべてのことに裏がある
階段にいるカリィにも聞こえるように……。
宇宙船に転移したことを告げた。
ゲンザブロウとアイにユイとレンショウは驚く。
リズさん&クレインさんの【魔塔アッセルバインド】組も、目が点だ。
途中で、カリィが階段から下りてきた。
リズさんは睨みながら両手を胸元で組む。
袖の中にしまっていた魔剣か、魔刀の柄を握っている。
そのカリィは、慌てて、
「待った待った、ボクは槍使い側だヨ。もう降参だ」
「その導魔術の短剣はなんだ?」
「これは、気にしない♪」
「チッ、不気味な野郎だ……」
ニタリと片頬を上げるカリィ。
細い目をぐわりと動かして、周囲を見てから、俺を見る。
「……正直に話をするから聞いてくれるかイ?」
「いいぞ、話せ」
「やった、さすがはボクの友!」
「なんで友なんだ、いいから話せ」
「ウン♪」
と、依頼者の名と依頼を長々と告げていく……。
エーグバインの名がここで出るとは正直驚いた。
「ノーラさんとアンジェの……」
そう呟くユイも、驚いている。
色々と重要情報をぺらぺらと喋ったカリィは満足そうだ。
一方で、レンショウは頭を抱えていた。
「……これで、信頼してくれたかナ?」
「ある程度は」
「そんナ~、オセベリアとサーマリアに通じていた件はもう知ってイるだろう? 他に話せることは、ナッシングだヨ?」
声を高めたカリィは、レンショウに助けを請うように、視線を向けた。
そのレンショウは「戦いを望むからそうなる……」とボソッと呟くと、溜め息を吐いて……。
ゆっくりと頷くと俺に視線を寄越す。
「カリィの話したことは本当だ。俺たちの仕事は、すべてパーってことだ。裏社会の元締めの一人がここにいるから、まだいいが……事情を察してくれると助かる」
レンショウは俺たちから仕事をもらいたいようだ。
ま、最初にヘカトレイルの事務所に来ていた時に、シャルドネと会うことを勧めたのは俺だからな。
メルから何かしらの仕事を回せるだろう。
すると、ユイが、
「……カリィの言葉は本当のようだけど、ロルジュ公爵のロゼンの戒に、ラスニュ侯爵の【黒薔薇の番人衆】の幹部暗殺に、レフハーゲンの軍商組合とか、吸血鬼ハンターのフランク・エーグバインの暗殺とか、未開スキル探索教団の〝左長〟の組織【ムサカ狩り】のリーダーのスーチンマルドルの暗殺に、【ミリオン会】と【不滅タークマリア】に、キーラ・ホセライの【御九星集団】とか……サーマリア関係筋が多すぎなのよ。アルフォードさんだっけ? 何者なの?」
と、聞いていた。
悪態笑顔のカリィは、武器を持たない両手を広げつつ、頷いて、
「千里眼のアルフォード。彼はサーマリアを軸に色々と動ける能力もあるんだ。本人は弱イと豪語するけど、実は戦闘能力は極めて高イ。枯れた枝のような両腕も、実は、めちゃくちゃ――硬イ♪ けど、やっぱり、あの魔水晶を使った特異能力が一番凄いと言えるかな」
「硬い? どの程度凄いのよ」
「遠くから見える能力が凄い。それはボクが震えるぐらい凄いンだ。ビンビンに硬い」
「……はぁ? 変なポーズを繰り出さないで。あ、もしかして、そのアルフォードって男の人も影翼旅団のメンバー?」
と、仏頂面のユイが、カリィに聞く。
カリィは腰を捻りつつ、また違った悪態笑顔。
際立った魔闘術。
魔力が全身に行き交う様子からして、かなりの手練れと分かるが、ポージングが怖い。
「うん♪」
「なら、影翼旅団を倒したシュウヤや、わたしたちのことを恨んでいそうね」
「うーん。船旅中にカードの勝負をしてたとき、文句を言っていたけど、そこまで恨んでナイヨ」
「そう? 遠くから見るような能力なんでしょう? シュウヤたちのことを見て、なんか企んでそう……」
「イや、前、能力を使って槍使いを見たことがあったンだけど……槍使いを見たら魔水晶が壊れソうにナったって、もう二度とごめんらしい、怖イから嫌だとも。あと、アルフォードは、その能力と見た目から、軟弱そうで陰湿さが際立っているんだけど……とんでもないほどに、見た目に反して男らしいンだ。陰でコソコソとネチネチとしたキショイ粘着質を持った男じゃナイから大丈夫さ」
独特の声も怖いんだが。
「……カリィが語ると怖い」
ユイも同感だったらしい。
というか皆、頷く。
「そ、ソンナァ、心外だァ」
それを見たアイが笑っていた。
ゲンザブロウは右手の立方体から出た細い刃で壁の表面を削っている。
シャルドネの依頼にあるのか?
そのことは聞かずに過去に、影翼旅団のガルロが喋っていたことを思い出す。
「天凜堂でレザライサとガルロのリーダー同士が、ガチンコで戦っている時に、その影翼のガルロが、血長耳のレザライサに対して……血長耳の極秘作戦を事前に見通していたように話をしていたな」
「そっか、そのガルロ総長が語ったことはアルフォードの能力で間違いないヨ」
そうカリィが告げると、リズさんが、
「カリィ。お前はわたしの挑戦は受けるんだな?」
と、凄みのある声で質問した。
カリィはリズさんではなく、俺をチラッと見てから、
「――さぁ?」
と、再び、悪態笑顔。
素早い動きで、わざと背中を晒しつつ仰け反った奇妙な体勢で階段を上っていた。
髪がうねうね動くし、変態チックで、怖いカリィさんだ。
カリィは何かの歌劇団の演目を演じるように――。
すらりとした片足をわざとらしく交互に伸ばして、階段を上り下り。
バレリーナかヨガポーズでもするように、片足を宙空の位置で止める。
爪先の動きが珍妙すぎて怖い。
リズさんはイラついたような表情を浮かべて、俺を見る。
「……カリィは、逃げていないということで納得してくれ。今は話の続きをする」
「分かった」
と、最新鋭深宇宙探査船に転移して艦長ハーミットに遭遇したことを素直に告げていく。
転移については、量子テレポーテーション技術と誘因性の高いビームのトラクタービームだと、説明。
時空属性を用いたスーパーな転移魔法だとも……。
俺なりに分かる範囲で、ざっくりと、語ったが……。
皆、当然ながら、ちんぷんかんぷん。
それぞれ思案顔。
一方、黒猫さんは、俺の説明など聞いていない。
床の左右から、タケノコ風に出ている長細いクリスタルに夢中だ。
聖櫃の魔宝石を浮かせていた魔道具か素材のクリスタル。
ロロディーヌは鳩の頭部のように自らの頭部を前後に動かしつつ、自らの頬をクリスタルの表面に擦りつけている。
髭が取れちゃうぐらいな勢いだ。『ここは、わたしの縄張りにゃ~』と声が聞こえてきそう。
思わず敬礼したくなるほどに必死な黒猫さん。
こういうところは完全に猫なんだよな。
神獣なんだが……。
『尻尾ちゃんの動きが可愛いですね』
『そうだな。ま、全部が可愛い』
『はい』
ヘルメにそう念話を返しつつ聖櫃の魔宝石を、ポケットに仕舞った。
血文字で皆に連絡を開始。
宙空に現れ出る血文字は単発。
地上組からの血文字は遅い。
戦闘中のようだ。
続いて、ヴェロニカから船に乗っているメルとカルードに報告。
副長メルは宇宙船のことを聞いて驚く。
だが、海賊のハーミット団を知っているからか艦長ハートミットのことは、あまり驚かず。
『ここでハーミット団とは。黒猫海賊団の船長のゲットーと魚人ロックとマジマーンから聞いたことがありますね』
『マジマーンとカルードたちも今そこか?』
『はい。カーフレイヤーはチップヨークの魚人たちに任せています。安静中のベニーの傍には、ラファエルとエマサッドさんもいます』
ベニーの治療も上手くいくといいが……。
最終的に、ダメだったら残り一個となった聖花の透水珠を使うか眷属化を勧めてみるか。
『そっか』
『今、マジマーンから〝総長、宇宙海賊に入ったのなら、これから先は操舵室の海図を使った聖櫃探しとなるんだろう?〟 と、質問が』
『宇宙海賊に入ったことは入ったが、シェイルの治療が先だ。聖櫃探しも選択肢の一つに過ぎない』
『はい、続いてのマジマーンの言葉をよろしいですか?』
『頼む』
『ミホザの騎士団の専用船は凄い魔導船のはずだよ! だとしても壊れている可能性があるだろうし、その場合は別の聖櫃。ハーミットが第一世代のレアパーツと呼んだアイテムが必要かもしれないね。あ、新しく手に入れた魔石風の聖櫃だけど、まだ素材として流用はしないでおくれよ? わたしが持つ聖櫃には、何かを嵌める窪みがあるんだから』
『だ、そうです』
ハーミットが返してくれた、魔石風の第一世代のレアパーツ。
ミホザの騎士団の聖櫃は、パソコンでいうメモリかCPU的なモノの可能性もあるわけか。
マジマーンの聖櫃は海図にもなる板状の聖櫃だ……。
実は、何かしらの電子基板か?
あまり意識していなかったが聖櫃とは結構重要か?
オセベリアとサーマリアとセブンフォリア……。
内実は、国の知恵者たちor大商会or闇ギルドの敵味方関係なく、共通して、聖櫃をほしがったための戦争だったりする?
一瞬、将棋かチェス盤の背後で、歩を持ち、これからの展開を考える軍師や諸侯たちの姿が思い浮かんだ……。
俺も一つの駒でしかないような気がしてきた。
これは考えすぎか。
いや、現に流れ上ではあるが、シャルドネの思惑で動いたことになるからな。
ま、これは、あくまでも仮説の一つ。
『……分かった。エヴァかミスティへのお土産か。俺の銀河騎士用のアイテムボックスに納めようかと思っていたが、取っとくとしよう。マジマーンの船と海図を使えば、海岸線か島か海底か、聖櫃がある場所にたどり着けるかもしれない。だから、第一世代の聖櫃を収集しているハーミットと協力できるかもしれないな。んだが、今の俺たちの目的はシェイルの復活だ。ジョディたちと合流しだい魔宝石探しに出る』
『はい、赤心臓のアルマンディン。東の火山地帯にあるフサイガという森ですね』
メルの血文字はちゃんとしている。
字で個性がでるのは面白い。
レベッカは血文字でアート風の絵を書く場合があるし、エヴァはシンプル。
上のコンサッドテンの陣地にいるであろうエヴァのことを少し心配しながら、
『そうだ。蝶族の魔宝石だったかな。東の地については、ママニとビアからどのような場所か聞いたこともあるし、血文字で報告を受けているが、まだまだ不明な点も多い。だから、東の旅からの帰還は、いつになるか分からない。案外すんなりと終わるかもしれないが』
『了解です。総長の場合は、神獣様が傍にいますので、そのように、意外とすんなりと探せるかもですね』
『そうなれば、他の用事もスムーズに運ぶ』
『あ、またマジマーンが、〝その東だけど、海に出るならレイの船に速度では負けるが、わたしのカーフレイヤーも足は速い。海か喫水線が高い川があれば使えるよ?〟 と、聞いてきました』
『目的地は、火山地帯。たぶん陸地だろう。マジマーンは無難に【天凜の月】の黒猫海賊団としてがんばってくれ』
『はい、しっかりと伝えました。そして、総長との血文字会話に、カリィたちの生存欲の高さと、マジマーンとカルードに鴉さんとの会話を交えた、この一連の出来事を考えますと、ユイさんが過去に語られていた言葉を思い出しました』
『ユイの言葉を? なんだ?』
『〝すべてのことに裏がある〟』
『裏か。表裏一体と言いたいんだな?』
『はい』
メルも切れ者だからな。
俺と同じような予想をもったのかもしれない。
そこでメルが言う過去の……マジマーンとの会話を想起した。
『……群島諸国のハーミット団がオセべリアから免許状を受けていると聞いたが、知らなかったのか』
『ハーミット団は銀船のように魔導船が多く、謎が多い。そして、秘密裏にオセべリアの貴族と協定を結んで活動を続けている大海賊はローデリア海では多いだろう。工作活動やら色々な』
あの時のマジマーンの言葉に、皆、頷いていた。
ヴィーネも、
『とにかく【血月海星連盟】としてのわたしたちの台頭も大いに関係があるってことですね』
『そうだ。ユイの言葉ではないが、すべてのことに裏がある』
〝すべてのことに裏がある〟か。
過去にそう発言したユイ。
そのユイは、俺の視線に気付くと……。
血文字交換を行いながらも、優しげに微笑んでくれた。
クールビューティーさを持つユイ。
あの辺の笑顔は、黒髪の女子高生風で、すこぶる可愛いから、ドキッとしてしまう。
そのタイミングで、俺は副長メルとの血文字交換を終わらせる。
ユイは、まだ父のカルードと血文字交換をしていた。
他の<筆頭従者長>たちの血文字が浮かんでは消えていく。
……しかし、上級大佐&宇宙海賊のハートミットが、この惑星セラでも、ハーミット団の名で大海賊をしているとは思わなかった。
しかも、【大海賊私掠船免許状】をオセベリア王国から受けている。
銀船のような魔導船が多いらしいハーミット団。
実は、宇宙船が擬態している姿かもしれない。
銀船と言えば、レイ・ジャック。
ハーミット団の銀船とは、船の形は違うかもしれないが、マジマーンは銀船に、たとえていた。
そのレイは【銀の不死鳥】のメンバーたちと一緒に黒猫海賊団の仲間だ。
元は海竜斬のレイ。
昔はアズラ海賊団の六番隊隊長。
レイたちは、運び屋としてセリス王女をローデリア王国の追っ手から逃がすために運んでいた。
ローデリア王国と絡むアズラ海賊団から、そのレイたちの追っ手として依頼を受けていたマジマーン。
そのマジマーンは聖櫃を持っていた。
その聖櫃を追ってマジマーンごと、俺たちを急襲した【七戒】の幹部だったベニーの暗殺チーム。
そして、殺し屋として様々な諸勢力から依頼を受けていたカリィたち。
オセベリア王国とサーマリア王国が古都市ムサカを巡って争う中……。
そういった無数の諸勢力が、サイデイルに忙しい俺たちと自然に絡み合っていたことになる。
不思議だが……。
これもまた、この世界に生きているからこそだ。
そういえば、マジマーンは、空船のことも語っていたっけ。
もしかしたらミホザの騎士団が残した聖櫃を元に空船を造ったのかもしれない?
モンスターたちの襲来を受けてすぐに落下して大災害を起こしたようだが……。
そうだとしたら……。
言葉を繰り返すことになるが、〝すべてのことに裏がある〟。
少し薄ら寒くなったところで、左手の運命線の傷と<シュレゴス・ロードの魔印>がある掌を見た――。
『なぜ、妾を見る』
『いや、なんとなくな……運命神アシュラーに傷をつけた神剣サラテンのことを少し考えた』
『……フン、妾に、ときめきトゥナイトな運命なのだな?』
『そうだ』
『な!? 否定しないとは……』
『冗談はさておき、どうして神様に傷を?』
『色々だ。大事な羅と貂を守るためでもあるが、もう過ぎたこと。妾は……』
『どうした?』
『いや、妾たちは、もう秘宝神具サラテン剣では、ぬぁぁいのだ!』
『シークレットウェポンなんだろう?』
『であるが、神具とは違うのだよ神具とは! 器がしっておるように、今は、もう神剣・三叉法具サラテンとなったのだ!』
『そうだな、強くなった』
『ウハハ。その通り! そして、<御剣導技>を学ぶのだ。塔タマか、塔コンか知らぬが、そんなモノを集める前に『神仙燕書』や『神淵残巻』を探すのだ!』
やはりハイテンションガールだ。
『……東に向かうから、その時だな。で、羅と貂は元気か?』
『それはよかったが、妾がいるからいいであろう!』
『たまには、イターシャも元気かな?』
『ぬぬ、妾と念話をしとぉは、ないのか?』
急に雰囲気が変わる。
『そんなことはない。だが、沙とはいつも念話をしているじゃないか。羅は、この間見たし、今度は貂を使ってみよう』
『――なぬぅぅ、それより、器よ。さっきの部屋と奇っ怪な転移魔法に、あの女はなんぞ……』
『未知の転移魔法と似たような感じで、宇宙戦艦の中。艦長ハーミットって異星人だ』
『……未知の転移を扱う戦舟に、人族に見えたが、他の種族か』
『俺たちと同じ人族系だと思うが、ヘルメが指摘したように、仮の姿の可能性もある。その宇宙戦艦のクルーになったから、いつか、また乗り込むかもしれない』
――そこでサラテンの沙と念話を終えた。
次はサイデイルのキッシュにも血文字で報告――。
キッシュはハーミットの存在を聞いて驚いていた。
更に『地下遺跡と宇宙戦艦の話で、クナが興奮してしまった』と、そんな血文字の内容から、
『古都市ムサカを巡る国の戦争と、無数の傭兵商会が送った塔雷岩場……そこに塔魂魔槍譜という、まさかの秘伝書があるとはな?』
『あぁ、魔軍夜行ノ槍業が絡むとは想像だにしていなかった』
『秘伝書は無事に読めたのか?』
『おう。不思議な感覚で短い間だが、何十年分の経験を一度に味わったような濃密な体験ができた。そして、魔人武術の一端を学べてスキルを獲得できたんだ』
『秘伝書の紙片とシュウヤだからこそ、可能な学び方か……』
『はは、大げさだな。大本はアキレス師匠のお陰だよ。そして、八怪卿の塔魂魔槍セイオクスのお陰でもあるか」
『ふふ、ラ・ケラーダの精神だな?』
『おうよ』
『魔人武王には弟子がいると前に聞いた。八怪卿は、その魔人武王と弟子たちの討伐を望んでいるようだが、今後はその討伐も目指すのか?』
『んー、のちのちかな。今回の塔魂魔槍譜を見つけたのは、偶然。八怪卿の師匠たちが壊せと五月蠅い八大墳墓は西だし、東のほうにも、それらしい秘伝書があるのかもしれないが……』
『八大墳墓を訪問せずに、いきなり、師匠の一人の願いを叶えるあたり……シュウヤは、やはり特別なルシヴァルの宗主様だな?』
『特別は嬉しい。しかし、カザネの言葉の〝盲目なる血祭りから始まる混沌なる槍使い〟のほうが、しっくりとくる』
と、俺の血文字を見たであろうキッシュはすぐに血文字を送り返してこなかった。
間があく。
『……シュウヤらしい言葉だ。が、それはあくまでも一面に過ぎない』
『そうか?』
『うむ。わたしが、そんなカザネのくだらない戯れ言より、本当の言葉を贈ろう……』
『本当の言葉か……』
『そうだ。シュウヤは、わたしのことを英雄のエルフ。重騎士の英雄で、<筆頭従者長>の女王と讃えてくれているが……わたしは、未だにあの頃と変わらない、ただの冒険者のつもりだ。そして、サイデイルを造り守ろうと行動してくれているシュウヤこそが、真の友、いや英雄である。と強く言える。同時に、わたしの大事な騎士様がシュウヤ。愛と探求を知り、その愛を普遍なく与えてくれるのがシュウヤ。優しくて……世界一、愛おしい槍使い……。それがわたしの友のシュウヤなのだ……』
『……キッシュさんよ、血文字だが……いや、血文字だからこそ、照れるぞ……』
『照れろ照れろ、真実だ。万世不朽で、不羈の槍使いが、わたしの愛しいシュウヤ。これは永遠に変わらない』
嬉しすぎて涙が零れそうだ……。
血文字を送り返せなくなる。
んだが、ユイさんが……。
じろっと、キッシュの血文字告白を見ていた。
<ベイカラの瞳>ではないから、そこまで怒っていないと分かるが……。
更に、リズさんとクレインさんも、何かコソコソ耳打ちしている。
俺は半笑い。
血文字にプライバシーはないからな……。
気を取りなおして、血文字をキッシュに送る。
『しかし、塔魂と塔雷。過去、ムサカの地で、何かの曰くがあったから似た地名となったのかもしれない』
『シュウヤがロマンと語っていた話か。豹文という名もある古い地がムサカだ。塔雷岩場は高台なのだろう? だから、そこで過去に何かしらのことが起きたことは確実だろう』
キッシュの血文字に頷きながら、リズさんとクレインさんを見て、
『たぶんな。で、その塔雷岩場に集まっていた傭兵たちと戦ったんだが……戦わずに、仲良くなった者たちもいる』
『ユイから聞いた。セナアプアの【魔塔アッセルバインド】に所属する流剣リズと銀死金死クレインだな。しかし、驚きだ……』
『確かに、エヴァの師匠のことは驚きだった。そして、その件は、まだエヴァには伏せてある』
「エヴァも使えるのか、その血文字という連絡手段を」
「そうだよ」
俺がクレインさんにそう告げると、目の前にキッシュの血文字がまた浮かぶ。
『……了解した。師匠との再会となれば……エヴァの喜ぶ顔が目に浮かぶ。その場でわたしも見たかった……それじゃ、こっちも用ができた。またあとで』
『おう』
明日も更新します。
HJノベルス様から今月の1月25日に最新刊の「槍使いと、黒猫。10」が発売します。
活動報告に情報を載せたので、興味のあるかたは観てください。




